2019年9月の「水産振興ONLINE」開設以来、『水産振興』は印刷冊子およびウェブ版で皆様にご愛読いただいてまいりましたが、第635号の刊行を以て印刷冊子は終了し、第636号以降はウェブ版のみの公開とさせていただきます。つきましては、今後、新刊情報を電子メールでお知らせしてまいりますので、「メール配信登録」よりご登録いただき、引き続き「水産振興ONLINE」で『水産振興』をご覧ください。
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フィッシャーマン・ジャパンは宮城県石巻市を拠点として若手漁師を中心に活動する団体で、次世代へと続く未来の水産業の形を提案すべく、人材育成や水産物の流通改善、海の環境保全などさまざまなプロジェクトを手掛けています。(一財)東京水産振興会では以前にウェブサイト『漁村の活動応援サイト』で活動の一部を紹介しましたが、2023年始動の「ブルーファンド」など、さらなる活動紹介のため同年11月にリーダーの方々との対談を実施し、その内容を皮切りとして新たな連載を開始します。
つづきを読むラスパルマスとは、アフリカ沿岸に位置し、7つの島から成るカナリア諸島のひとつであるグランカナリア島の県都だ。年間を通して温暖な気候が特徴で、島の中に砂漠地帯がある程カラっとしている。のんびり過ごせるビーチがあったり、味わい深い建物を眺めながら石畳を散策できたり、美味しいスペイン料理が味わえたりと、魅力あふれるリゾート地として人気だ。サハラ砂漠で有名なモロッコの近くなのだがスペイン領であることから、ヨーロッパ各地からの観光客が多い。アジア圏から遠く離れるため、アジア人の姿がかなり少ないのも特徴の1つである。そんなリゾート地が一体なぜ今回のコラムのタイトルなのかというと、なんと、日本の遠洋マグロはえ縄漁船の主要な寄港地なのだ。2023年5月に出港した三重県尾鷲市の第87長久丸が、ラスパルマス港に入港するタイミングである同年9月に撮影のため渡欧した。
つづきを読む現代の物流網は複雑精緻である。ウクライナで紛争が起こればアフリカの人々が飢え、半導体不足が自動車生産ラインの停止に直結する。もっと身近なところでは、かき氷やおでんの売り上げはその日の天候に大きく左右されるので、仕入れには予報と需要を見極めなければならない。
つづきを読む海遊館を辞め、フリーで活動をしていたころ先輩からのお声がけで、夏休み期間に地方都市のデパートの催事場などで行う移動水族館の現場管理を数シーズン任されたことがある。それが毎回心身ともに疲れはててしまうのだ。毎回、開催中にいくつかの水槽が、魚病によって魚が全滅という悲惨な状態になってしまうこともあるのだ。そんな悲惨なことにならないように毎日毎日水槽の管理に気を使いすぎ、移動水族館の最終日が近づくころには心身共にくたくたになる。
つづきを読むわが国のホタテガイの生産量は漁業・養殖業をあわせて50万トン前後で変動しており、最近はマイワシ、さば類に次いで国内第3位の位置にあります。従来から米国や香港などへ輸出されてきましたが、2012年以降中国への輸出が急速に拡大し、2022年の輸出額は910億円でわが国の水産物輸出のトップであり、総額の23.5%を占めるまでに至っています。
つづきを読む昨年12月12日。定置網漁船・神代丸(かみよまる=19トン)はいつもより遅い6時30分に細島港(日向市)をあとにした。早朝ということで、視察する同乗者に配慮したためだ。JF宮崎漁連の是澤喜幸会長が経営する定置網に到着したのはおよそ10分後の6時40分。「波があるかも」との予報も杞き憂に終わり、淡々と水揚げが始まった。
つづきを読む宮崎県の北東にある日向市平岩地区では、毎年11月から翌年2月にかけ、ウニ(ムラサキウニ)駆除が行われる。活動するのは平岩採介藻グループ。「かつての豊かな海を取り戻したい」との思いで1996(平成8)年に有志で活動をスタートし、2010(同22)年に組織化した。現在は、刺網やイセエビ磯建網などを兼業する5人の漁業者と、日向市職員や漁協職員、そしてボランティアとして若者たちも参加している。
つづきを読むこのシリーズでは第1回と第2回の2回にわたって我が国の水産業の特徴とその課題、最近の温暖化との関連について紹介がありました。それをうけて、水産物を消費している側は我が国の水産業の独自性と最近の変化をどのように捉えているのか、水産物に対する消費者の見方はどのように変わってきているのかを考えてみたいと思います。
つづきを読むこのたびの能登半島地震における被災者の方々にお見舞い申し上げます。被災地の中でも大きな被害があったのが輪島市ですが、2023年10月6日、JFいしかわ輪島支所において全国第1号となる沿岸漁場管理制度について関係者からお話を伺う機会がありました。石川県の輪島地区では百数十人と言われる海女さんたちが、アワビやサザエの貝類、ワカメやイシモズクといった海藻類などを対象に漁をしています。
つづきを読む北日本の日本海沿岸で獲れるハタハタは、スズキ目ハタハタ科の魚で、通常は水深250メートル前後の深海底に棲息し、冬型の低気圧が強まり、時化によって海水が攪拌され沿岸水温が低下すると、水深2~3メートルの藻場に産卵のためにやってくる。漢字では「鰰」「鱩」「神魚」「雷魚」「神成魚」「波太多雷魚」「佐竹魚」などと表現される。ハタハタの塩漬けや干物は正月用の食べ物となり、「鰰」の文字には、ハタハタがなければ正月が迎えられないといった気持ちが込められているのだろう。
つづきを読む2023年の夏は、「地球沸騰化」などと表現されるぐらい記録的な暑さでした。海でも、水温が極端に高い状態が5日以上連続する海洋熱波が世界の海面の半分近くを覆い、日本近海でも北海道周辺~三陸沖や東シナ海北部~日本海の広い海域で海洋熱波が継続しました。
つづきを読む今年の春、マグロ船の撮影のため静岡に出向いた。行き先は、全国有数の冷凍マグロの水揚げ量を誇る静岡県清水港。富士山の近さと荘厳な佇まいに圧倒されながら、マグロの水揚げやマグロ船の入出港が見られるという何とも贅沢な港だ。近くで富士山が見守ってくれているせいか、風も爽やかに感じる。そんな中、水揚げの様子や船上で使う荷物を船に積み込む仕込みの様子を撮影させてもらった。初めて遠洋マグロ船の撮影をする私は、まず仕込む荷物の多さに驚く。漁に使う道具から船員さん達の飲み物まで、段ボールに詰められたさまざまな物が船員さん達の手によってどんどん船内に運ばれていく。シャンプー等の日用品や衣類も、それぞれスーツケースに入れて持ち込む。清水港を出港した後も海外の寄港地で食料等の補給はできるが、慣れ親しんだ日本の物を積み込めるのはここまでだ。
つづきを読む1982年というと、今からもう41年も前になる。僕は青森県の県営浅虫水族館のオープンに向けて、約1年間、和歌山県の太地町で民宿暮らしを続けていた。当時、日本で最北端の地でイルカのショーを披露させるために、太地でバンドウイルカを入手し、水族館の開館に向けて訓練をしていたのだ。
つづきを読む東京・豊洲市場は世界一の水産市場として注目度が段違いなだけに、場内やその周辺は、業界関係者らにピンポイントで訴えかけるイベント開催地として魅力ある場所といえる。とはいえ、都が開設する公設市場で公的スペースである場内と、民間事業者の管理する場外とでは、できることが異なる。最終回となる「豊洲市場活用マニュアル」では、イベントを開きたい行政・団体向けに留意する点を取りまとめた。
つづきを読む下間帆乃(ほの)、1999年秋田県生まれ。秋田県立男鹿海洋高等学校海洋科を卒業、豊洲市場にある冷蔵冷凍保管事業を主とする株式会社ホウスイに入社して6年になる。
つづきを読む東京電力福島第一原子力発電所の敷地内タンクに貯まり続けているALPS 処理水の海洋放出計画に対して、日本の漁業者は反対の姿勢を貫いている。本稿では、現在まで続く原子力災害=原発事故の影響で、苦しい立場に置かれ続けている福島県の漁業や水産物マーケットの動向などを踏まえ、海洋放出計画に対して漁業者が不信感を抱き、反対を表明する理由を明らかにするとともに、国として果たすべき責任について述べる。
つづきを読む漁業共済とは損害保険のことである。漁業にとって不漁は付き物といってよいが、2011 年度民主党政権が創設し、内閣交代後自民党が継承し、資源管理・漁業所得補償制度が水産政策の基調となった。それはユニークな収穫高保険(価格×数量)である漁獲共済①・特定養殖共済②ならびに、通常の物損保険である養殖共済③―3 共済―からなり、漁具共済・地域共済が加わる。
つづきを読む浜名湖の湖畔に一体の魚籃観音(うなぎ観音)が立っている。1937(昭和12)年9月に建立されたこの観音像には、建立の前年の11月に東海三県の養魚組合や魚商組合等が主催して鰻霊供養と放生会が執り行われたこと、養殖の経営のために犠牲になった多くのウナギの霊に対して冥福を祈るとともに、未来永劫の養殖業の発展を祈願するために、この観音像を建立したことが記されている。寄付者を見ると、青森、栃木、群馬、東京、三重、福井、滋賀、京都、山口と、全国の水産会社、運送会社、養魚組合、仲買組合、冷凍鰻移出組合、養魚株式会社等の関係者が名前を連ねている。
つづきを読む温室効果ガス排出量の削減が全世界的な目標となり、各国でさまざまな取り組みが進む中、海藻や海草など炭素を吸収・固定するブルーカーボン生態系への注目が高まっています。本号は、2023年2月17日に海洋水産技術協議会が主催したワークショップ「ブルーカーボンとカーボンクレジット-課題と展望」の概要を取りまとめたもので、ブルーカーボンに関する技術開発や、カーボンクレジット制度(温室効果ガスの排出権取引の仕組み)の現状や課題を学び、今後のわが国水産業への効果的な組み込みなどについて活発な議論を行いました。
つづきを読む新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行は、我が国の水産物供給において重要な役割を担う中央卸売市場に大きな影響をもたらした。効果的な対策のためには事実(ファクト)に基づいた判断が不可欠であるが、情報化の進展によって研究現場におけるファクトへのアプローチ方法が急速に変化しつつある。本稿では、伝統的な社会調査と新たなデータサイエンスの観点から2つの研究を紹介することで現在明らかになっているファクトと望まれる対策を示すとともに、今後の研究現場を展望する。
つづきを読む洋上風力発電については、2018年12月に成立した再エネ海域利用法に基づき検討が本格化し、21年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画における2030年までに10GWの案件形成をという目標に対し、これまでに秋田県、新潟県、千葉県、長崎県において約3.5GWの案件がまとまってきました。
つづきを読むコラムも最後の連載となりました。この最終回まで全15回、行政、研究者、漁業者、企業など多方面から寄稿していただいたおかげで、いまや不可避となった温暖化対策について、海辺ではどのようにブルーカーボンを展開していけるか、展開していく上での問題点は何か、包括的に考えることができました。本コラム全体の内容をまとめると、行政では、各省庁が脱炭素社会の構築にむけて、ブルーカーボン吸収源の制度化と海藻バイオマス活用の推進を目指していました。それを受けて、地方自治体が浜と一緒になって運用試験を開始していました。浜でも、漁業者が独自に取り組んできた藻場再生や磯焼け対策に加えて、気候変動対策という大きな目標をやりがいに変えて、よりいっそう活動を発展させようとする気概を感じることができました。このような動きに企業が賛同し、自社の社会への責任だけでなく、地球環境と人間社会の持続可能性を向上させるべく、熱意をもってSDGsの達成や気候変動対策に取り組む姿を垣間見ることができました。
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