1. はじめに
洋上風力発電と水産についてはこれまでにも多くの方々が発信されてきているが、主に行政官や漁業関係者からのものが多かったような気がする。そのため、水産海洋学を軸に研究生活を送ってきた立場からすると、余り語られていない視点の中に重要な問題が潜んでいるような気がしてならない。水産海洋学とは、「水産資源豊度とその利用可能性に関わる海洋生態系間の関係および海洋生態系に影響を及ぼす海洋プロセスの研究」と定義されており、我が国の水産海洋学会は「水産業の発展に寄与する」という目的を加えて活動している。本稿では、事業の準備が広範囲で進められている本州・北海道の日本海側を中心に、水産海洋学から見た懸念点を取り上げたい。
著者プロフィール
大関 芳沖(Yoshioki Oozeki, PhD.)
1981年東京水産大学増殖学科卒業。1987年東京大学農学系研究科修了。農学博士。1989年農林水産省入省、東北区水産研究所研究員、米国アラスカ水産研究所客員研究員、中央水産研究所生物生態研究室長、東京海洋大学客員教授併任、中央水産研究所資源管理研究センター長、本部審議役などを経て、2024年より国立研究開発法人 水産研究・教育機構 参与。2017~2019年水産海洋学会会長。専門はマイワシ・サンマなど小型浮魚類の資源生態学・水産海洋学。国立研究開発法人 水産研究・教育機構フェロー。