2019年9月の「水産振興ONLINE」開設以来、『水産振興』は印刷冊子およびウェブ版で皆様にご愛読いただいてまいりましたが、第635号の刊行を以て印刷冊子は終了し、第636号以降はウェブ版のみの公開とさせていただきます。つきましては、今後、新刊情報を電子メールでお知らせしてまいりますので、「メール配信登録」よりご登録いただき、引き続き「水産振興ONLINE」で『水産振興』をご覧ください。
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我が国の定置網には400年以上にわたる歴史があると言われています(日本定置漁業協会より)。全国津々浦々、様々な規模や形態の定置網が存在し、その漁獲量は435千トン(令和3年)に及びます。季節を感じさせる水揚げがあり、各地へ届けられ、我が国の「旬」を彩ります。どの定置網でも一定数の乗組員が必要で、操業スケジュールが基本的に決まっているからか、地元の人のみならず、地元外から就業することも多くあります。
つづきを読むクレーンでつり下げられたマコンブが、3メートル余りを残し大半が巨大なカマで海へ切り落とされていく。バサリ、バサリと容赦なく切り落とされる豪快な様子に、「もったいない」の言葉が頭をよぎるほどだ。切り落とす理由は、製品化した際に見栄えを悪くするヒドロゾアやコケムシ類などの生物が付着した部分を取り除くため。3メートル近く残すのは加工場の天井の高さにも関係している。
つづきを読む酷暑の名残を感じる9月初旬。小雨交じりの大型定置網の漁船の甲板を、ブリや手のひらサイズのベロサバ(小型サバ)が埋め尽くしていた。魚倉庫に入り切らないのはブリ、サバだけじゃない。人の背丈を超える大型のマンボウ数尾、吻ふんを含めれば3メートルは超えるだろうマカジキ、そして、150~200キロはあるクロマグロ(以下マグロ)の姿も見える。まさに大漁だ。
つづきを読む連載の手始めに、持続可能な利用を考える上でのわが国周辺の水産資源の特徴と、MSY(最大持続生産量)を基準とするわが国の資源評価・管理の基本的な考え方や実際の管理にあたっての課題をご紹介します。さらに、国内における生鮮魚介類の需要と供給のギャップについてお話しするとともに、最近の地球温暖化の進行や社会情勢の変化を踏まえて、変化に合わせた資源利用の必要性について考えます。
つづきを読む今年の春、マグロ船の撮影のため静岡に出向いた。行き先は、全国有数の冷凍マグロの水揚げ量を誇る静岡県清水港。富士山の近さと荘厳な佇まいに圧倒されながら、マグロの水揚げやマグロ船の入出港が見られるという何とも贅沢な港だ。近くで富士山が見守ってくれているせいか、風も爽やかに感じる。そんな中、水揚げの様子や船上で使う荷物を船に積み込む仕込みの様子を撮影させてもらった。初めて遠洋マグロ船の撮影をする私は、まず仕込む荷物の多さに驚く。漁に使う道具から船員さん達の飲み物まで、段ボールに詰められたさまざまな物が船員さん達の手によってどんどん船内に運ばれていく。シャンプー等の日用品や衣類も、それぞれスーツケースに入れて持ち込む。清水港を出港した後も海外の寄港地で食料等の補給はできるが、慣れ親しんだ日本の物を積み込めるのはここまでだ。
つづきを読む1982年というと、今からもう41年も前になる。僕は青森県の県営浅虫水族館のオープンに向けて、約1年間、和歌山県の太地町で民宿暮らしを続けていた。当時、日本で最北端の地でイルカのショーを披露させるために、太地でバンドウイルカを入手し、水族館の開館に向けて訓練をしていたのだ。
つづきを読むわが国の水産資源とその利用については、「変化に富んだ漁場環境と高い生産性」、「多種多様な水産資源の存在と特色ある漁業の展開」、これらに裏打ちされた全国各地における「豊かな魚食文化の発展」などをキーワードに語られてきました。これまでは間違いなくそのとおりであったと思います。しかし、最近のわが国の海や魚の状況、水産物の消費を巡る内外の状況は大きく変化しています。これからも豊かな海の恵みを享受していくためには、何処にどんな問題がありそうか、問題の解決に向けて私たちができることは何か、一度立ち止まって考えてみる必要があるように思います。
つづきを読む東京・豊洲市場は世界一の水産市場として注目度が段違いなだけに、場内やその周辺は、業界関係者らにピンポイントで訴えかけるイベント開催地として魅力ある場所といえる。とはいえ、都が開設する公設市場で公的スペースである場内と、民間事業者の管理する場外とでは、できることが異なる。最終回となる「豊洲市場活用マニュアル」では、イベントを開きたい行政・団体向けに留意する点を取りまとめた。
つづきを読む生鮮食料品の安定供給を担う中核拠点の東京・豊洲市場。屋台骨を支えているのは、完成10年に満たない真新しい施設群もさることながら、市場全体で1,600超の業者と、そこで働く約1万数千人の従業員だ。2023年実績で256日の開市日(水産物)を基本としつつ、必要な役割を果たすためにさまざまな職種の人々が働いて市場全体として休むことなく動き続けている。働き口としての豊洲市場を掘り下げる。
つづきを読む豊洲市場と本格的に付き合おうと検討しているなら、水産物が現場でどう扱われているのか直接確認しておきたい。「百聞は一見にしかず」で、百の説明より、一度の見学だろう。場内は業務エリアと一般エリアが分離し、一般エリアの通路から自由見学可能。ただ、それとは別にもう少し踏み込んだエリアに立ち入れる団体・業者向け視察も受け入れている。申し込みルートを整理した。
つづきを読む下間帆乃(ほの)、1999年秋田県生まれ。秋田県立男鹿海洋高等学校海洋科を卒業、豊洲市場にある冷蔵冷凍保管事業を主とする株式会社ホウスイに入社して6年になる。
つづきを読む東京電力福島第一原子力発電所の敷地内タンクに貯まり続けているALPS 処理水の海洋放出計画に対して、日本の漁業者は反対の姿勢を貫いている。本稿では、現在まで続く原子力災害=原発事故の影響で、苦しい立場に置かれ続けている福島県の漁業や水産物マーケットの動向などを踏まえ、海洋放出計画に対して漁業者が不信感を抱き、反対を表明する理由を明らかにするとともに、国として果たすべき責任について述べる。
つづきを読む漁業共済とは損害保険のことである。漁業にとって不漁は付き物といってよいが、2011 年度民主党政権が創設し、内閣交代後自民党が継承し、資源管理・漁業所得補償制度が水産政策の基調となった。それはユニークな収穫高保険(価格×数量)である漁獲共済①・特定養殖共済②ならびに、通常の物損保険である養殖共済③―3 共済―からなり、漁具共済・地域共済が加わる。
つづきを読む浜名湖の湖畔に一体の魚籃観音(うなぎ観音)が立っている。1937(昭和12)年9月に建立されたこの観音像には、建立の前年の11月に東海三県の養魚組合や魚商組合等が主催して鰻霊供養と放生会が執り行われたこと、養殖の経営のために犠牲になった多くのウナギの霊に対して冥福を祈るとともに、未来永劫の養殖業の発展を祈願するために、この観音像を建立したことが記されている。寄付者を見ると、青森、栃木、群馬、東京、三重、福井、滋賀、京都、山口と、全国の水産会社、運送会社、養魚組合、仲買組合、冷凍鰻移出組合、養魚株式会社等の関係者が名前を連ねている。
つづきを読む温室効果ガス排出量の削減が全世界的な目標となり、各国でさまざまな取り組みが進む中、海藻や海草など炭素を吸収・固定するブルーカーボン生態系への注目が高まっています。本号は、2023年2月17日に海洋水産技術協議会が主催したワークショップ「ブルーカーボンとカーボンクレジット-課題と展望」の概要を取りまとめたもので、ブルーカーボンに関する技術開発や、カーボンクレジット制度(温室効果ガスの排出権取引の仕組み)の現状や課題を学び、今後のわが国水産業への効果的な組み込みなどについて活発な議論を行いました。
つづきを読む泉澤裕介1983年生まれ、40歳。仲卸「カネ重」の5代目である。
後継者がいないため、閉店に至った仲卸は少なくない。そんななか、泉澤さんは、10年余りのサラリーマン生活を経て、父の跡を継いだ。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行は、我が国の水産物供給において重要な役割を担う中央卸売市場に大きな影響をもたらした。効果的な対策のためには事実(ファクト)に基づいた判断が不可欠であるが、情報化の進展によって研究現場におけるファクトへのアプローチ方法が急速に変化しつつある。本稿では、伝統的な社会調査と新たなデータサイエンスの観点から2つの研究を紹介することで現在明らかになっているファクトと望まれる対策を示すとともに、今後の研究現場を展望する。
つづきを読む洋上風力発電については、2018年12月に成立した再エネ海域利用法に基づき検討が本格化し、21年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画における2030年までに10GWの案件形成をという目標に対し、これまでに秋田県、新潟県、千葉県、長崎県において約3.5GWの案件がまとまってきました。
つづきを読む業界紙記者として築地市場移転問題を追ってきた成果などを元に、本体を失ったことで岐路に立つ築地場外市場の活性化の道を考察する。「商品コンセプト理論」を商店街分析に転用し、築地場外市場から来場者が享受可能なベネフィット(利便性・満足感)が「プロ向けの食材・道具が手に入る(楽しめる)」点にあると示す。築地市場の移転先の豊洲市場、築地跡地、周辺エリアの動向などの背景を整理したうえで、活性化には旧築地市場の機能を補完する施設「築地魚河岸」を中核として運営することを前提に、①プロの小口客を増やす ②食の外部化に対応する ③「食のまち」以外の魅力を深耕する—3つの方向性があると示唆。関係者間でベネフィットを認識共有し、それに基づいた活性化策に取り組むよう提案する。
つづきを読むコラムも最後の連載となりました。この最終回まで全15回、行政、研究者、漁業者、企業など多方面から寄稿していただいたおかげで、いまや不可避となった温暖化対策について、海辺ではどのようにブルーカーボンを展開していけるか、展開していく上での問題点は何か、包括的に考えることができました。本コラム全体の内容をまとめると、行政では、各省庁が脱炭素社会の構築にむけて、ブルーカーボン吸収源の制度化と海藻バイオマス活用の推進を目指していました。それを受けて、地方自治体が浜と一緒になって運用試験を開始していました。浜でも、漁業者が独自に取り組んできた藻場再生や磯焼け対策に加えて、気候変動対策という大きな目標をやりがいに変えて、よりいっそう活動を発展させようとする気概を感じることができました。このような動きに企業が賛同し、自社の社会への責任だけでなく、地球環境と人間社会の持続可能性を向上させるべく、熱意をもってSDGsの達成や気候変動対策に取り組む姿を垣間見ることができました。
つづきを読む今年も寒い冬がやって来た。秋に比べて一段と冷たくなった風が肌に刺さると、意識が一気に冬へと向かう。寒さでピンと張り詰めた空気から感じる匂いも何だか冬っぽい。道行く人もマフラーにコートにと厚着になっていく。忙しない師走の雰囲気を感じるたび「もう今年終わっちゃうの?!」と毎年心の中で呟くのは私だけではないだろう。木々は葉を落とし、空の色も淡くなる。いつも見る景色が慎ましい色彩になると、みんなの感性がなんとなく豊かになって普段は気付かないことに気付いたりする。そんな季節の移ろいが日本人の細やかさを育んでいるのかもしれない。
つづきを読む南の海の話が続いてしまったので本州最北端、青森の話を。1981年の冬のことである。水族館の飼育係になってまだ3年しか経っていない僕に、陸奥湾の湾奥部にある青森市の浅虫地区に新しい水族館を建てる計画があるので手伝わないか、というお誘いが舞い込んできた。当時浅虫には、東北大学の臨海実験所に付属した小さな水族館があった。“浅虫の水族館” と多くの県民に慕われていた施設だったのだが、臨海実験所の建て替えに伴い取り壊してしまうことになった。そこで青森県は新たに県営の水族館の建設を計画したのだ。以上の経緯については、連載第3回目でも書かせていただいたが、今回はその続編である。
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