2019年9月の「水産振興ONLINE」開設以来、『水産振興』は印刷冊子およびウェブ版で皆様にご愛読いただいてまいりましたが、第635号の刊行を以て印刷冊子は終了し、第636号以降はウェブ版のみの公開とさせていただきます。
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2025年4月25日
水産振興
649号
ノルウェーサーモン養殖の経済学
阿部 景太
武蔵大学
本稿は、世界最大のサーモン養殖生産国であるノルウェーの養殖業について、その歴史的発展と経済的側面を分析するものである。近年、日本でもサーモン養殖が注目を集め、各地でブランドサーモン養殖などの新たな取り組みが始まっているが、その発展形態はノルウェーとは異なる道を歩んでいる。ノルウェーのサーモン養殖業は、フィヨルドという特殊な地理的環境を活かした海面養殖から始まり、約半世紀にわたる発展の中で数々の技術革新、産業政策、環境課題との調和を経験してきた。この豊富な経験から日本が学べる点は多い。
2025年4月22日
第一次産業の相手は自然か。漁業の相手は魚か。
第1回
ニーズとは (上) その卵、買いますか?
窪川 敏治
金城水産 / 石川県定置漁業協会
2024年8月、秋田県青年・女性漁業者交流大会(主催・秋田県、JFあきた)で、石川・加賀で定置網漁業を営む (有) 金城水産の窪川敏治社長が講演した。「第一次産業の相手は自然か。漁業の相手は魚か。」、哲学的な問い掛けから始まった講演は、自らの考えを実践して導き出した答えが指し示され、具体的で説得力に満ちていた。秋田の漁業について語り掛けてはいるが、中身は水産業界全体にも通じる。窪川氏の投げ掛けをどう受け止めるか。聞き読み飛ばすか。演者が加筆した講演の概要を7回に分けて連載する。
2025年4月22日
進む温暖化と水産業
第39回
洋上風力 漁業者の同意をめぐる法的手続きの解説
梶脇 利彦
農林水産政策研究所
2025年3月19日(水)、筆者は仕事を休み、ふるさとの田畑山林などに付いている明治・大正期・昭和期の古い抵当権(休眠抵当権)を「取り除く」ための地方法務局への登記申請の手続きをしながら、刻一刻と締切が迫っているこのコラムも気になりパソコンに向かっています。早くから取り掛からないからよ、との妻の視線を感じています(汗)。人とは、大なり小なり、そういうものではないかと。しかしながら、良いものにしていくためには早くから準備し、取り組む方が良いことはいうまでもありません。わかっちゃいるけど、執筆時の時流をみて一思いに書くのが私流だと(心の中でそっと)呟いています。
2025年4月16日
変わる水産資源2 — 生産と消費の好循環をめざして
第1回
連載の再開にあたって — ネライと背景
和田 時夫
全国水産技術協会
令和5年10月から7年3月まで、「変わる水産資源—私たちはどう向き合うか」をテーマに13回にわたり連載を続けてきました。この間、多くの方々から忌憚のないご意見をいただくとともに、疑問点やご関心を持たれた事項についてお尋ねをいただくことができました。改めて御礼申し上げます。また、ご執筆いただいた皆様や、連載の機会をいただくとともに、毎回の編集・発行をご担当いただいた (一財) 東京水産振興会の皆様に改めて感謝申し上げます。
2025年4月8日
進む温暖化と水産業
第38回
洋上風力発電と水産 —水産海洋研究の立場から懸念されること—
大関 芳沖
水産研究・教育機構フェロー
広範囲で事業が進められている本州・北海道の日本海側を対象に、水産海洋学の立場から今回水産振興648号で懸念点を検討した。漁業振興策と事故回避:船舶衝突事故への安全対策については、国土交通省が技術基準の中で倒壊影響距離(基礎からのタワー高+風車半径)を示している。日本海難防止協会の「洋上風力発電事業に係る航行安全対策のガイドブック」作成や航行安全委員会の開催も進められている。
2025年4月8日
水産振興
648号
洋上風力発電と水産 —水産海洋研究の立場から懸念されること—
大関 芳沖
水産研究・教育機構フェロー
洋上風力発電と水産についてはこれまでにも多くの方々が発信されてきているが、主に行政官や漁業関係者からのものが多かったような気がする。そのため、水産海洋学を軸に研究生活を送ってきた立場からすると、余り語られていない視点の中に重要な問題が潜んでいるような気がしてならない。水産海洋学とは、「水産資源豊度とその利用可能性に関わる海洋生態系間の関係および海洋生態系に影響を及ぼす海洋プロセスの研究」と定義されており、我が国の水産海洋学会は「水産業の発展に寄与する」という目的を加えて活動している。
2025年3月28日
水産物流通のこれから~流通現場からのアプローチ~
第7回
漁獲量・流通・消費について
浦和 栄助
東京都水産物卸売業者協会
次のスライドは、先ほどエンゲル係数との関係で説明した総務省「家計調査」の「食料」の支出金額に関して、いわゆる生鮮三品、家計調査のカテゴリーでは生鮮食品4グループ(魚介類、肉類、野菜・海藻、果物)に絞り込み、それらの割合をグラフ化したものです。左側の円グラフが1990年で、右側の円グラフが2023年のデータです。
カツオ
文学
焼津
2025年3月25日
水産振興
647号
ALPS処理水の海洋放出が水産業に及ぼした経済的インパクト—貿易統計を用いて検討する—
濱田 武士
北海学園大学 教授
2023年8月24日、東京電力福島第一原子力発電所の構内からALPS処理水が海に希釈処理の上排水された。ALPS処理水は、原子炉建屋に流入する地下水が東日本大震災後に起こった事故により発生した燃料デブリに触れて放射能汚染水となったものをALPSにより放射性物質を除去したものである。トリチウムだけが除去できないが、十分に希釈すれば排水をしても生態系や人間の人体に対する影響はほぼないということから、政府が放水をするとした。
2025年3月25日
私たちが見つめるのは100年後の農山漁村
第12回
私たちは100年後にどのような水産物を食べているのだろうか
三木 奈都子
うみ・ひと・くらしネットワーク
戦後の日本の水産物消費は大きく変化した。漁獲や水産物の輸出入、国民の所得金額の変化によるものだけでなく、近年では家族構成や働き方の変化、すなわち共働きあるいは単身世帯が増えたことの影響が強い。このような変化はさらに進行しそうであり、今後、家庭内での時短調理や持ち帰り総菜等の工夫が行われることが予想される。
2025年3月18日
進む温暖化と水産業
第37回
秋さけ遊漁問題のこと、「進む温暖化と水産業」ワークショップのこと
長谷 成人
東京水産振興会/海洋水産技術協議会
2月15日に北見市の温根湯温泉で開かれた北海道漁業士会オホーツク太平洋会議に参加してきました。この会議は、北海道の東半分の漁業士が年に1度集まる会議です。水産庁勤務時代、同僚の加藤久雄さん(現遠まき組合長)に誘われてこの会議に参加するようになり、以後、様々なインスピレーションを与えてくれた私の定点観測地点の一つです。出発までに気になる記事がいくつかありました。一つは1月15日に札幌で開かれた北海道漁業士会研修大会の様子を伝える記事です。
2025年3月11日
水産物流通のこれから~流通現場からのアプローチ~
第6回
水産物のサプライチェーン(その4)、漁獲量・流通・消費について(その1)
浦和 栄助
東京都水産物卸売業者協会
続いて、「(4)全国中央卸売市場における豊洲市場」という話題に移ります。まずこのスライドは、豊洲市場の水産物取扱高(数量・金額)を世界の主要な水産物の卸売市場と比較したグラフです。これは東京都のデータから作成したもので、卸売業者協会が出している豊洲市場の案内パンフレットにも同様のグラフが掲載されています。世界の主要市場としてパリのランジス市場、スペインのメルカマドリッド、ロンドンのビリングスゲート魚市場などと比べていますが、やはり豊洲市場の取扱高の大きさが際立っています(図1)。