2019年9月の「水産振興ONLINE」開設以来,『水産振興』は印刷冊子およびウェブ版で皆様にご愛読いただいてまいりましたが,第635号の刊行を以て印刷冊子は終了し,第636号以降はウェブ版のみの公開とさせていただきます.つきましては,今後,新刊情報を電子メールでお知らせしてまいりますので,「メール配信登録」よりご登録いただき,引き続き「水産振興ONLINE」で『水産振興』をご覧ください.
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「100年後も天草の地で安⼼して⽣産活動を続け、地域のおいしい特産品で全国・世界に笑顔の輪が広がりますように」。そんな思いで地域に事業を起こし続けるうみひとネット会員がいる。熊本県・天草市の株式会社クリエーション WEB PLANNING代表、深川沙央里さんだ。漁家に生まれ、自身も車エビ養殖場を経営する。今では養殖にとどまらず、EC、卸、加工等多角的に事業展開し、CWPは地元の生産者に寄り添う地域商社になった。
つづきを読む北海道のオホーツク海に面した網走には年間140万人(2023年度)の観光客が訪れるという。ただ、宿泊客はその約4分の1。有名な網走監獄だけを訪れ、知床などの観光地への通過地点となってしまうからだ。そんな網走をもっとアピールしようと、18年に発足したコネクトリップ(Connectrip)は体験交流ツアーを企画・提供している。そのツアーにも漁業者らとの連携が生きている。
つづきを読む夏目金之助が生まれた1867(慶応3)年といえば王政復古の年です。翌年に鳥羽伏見の戦いが勃発し、明治政府が発足。そして亡くなったのが1916(大正5)年ですから、漱石は近代日本とともに誕生し、明治期をフルに生きた文豪といえるでしょう。八雲が来日したころの日本はというと、前年に東京—神戸間の鉄道が開通し、大日本帝国憲法発布。
つづきを読むここの野菜塩ラーメンは絶品です——。網走川の最上流に位置する津別町のレストラン「つべつ西洋軒」で、JAつべつ農協とJF網走漁協のメンバーが向かい合わせで人気のラーメンをすする。テーブルではたわいのない世間話に花が咲き、笑い声が絶えない。端からみれば、仲のいい同僚に思えるほど穏やかな空間を醸し出している。漁業関係者が河川上流の状況に危機感を感じたのは、2001年の台風の襲来だった。大雨による洪水で網走川上流の農地が崩落、下流の網走湖が土砂で真っ赤に染まった。
つづきを読む連載タイトルにある「100年後の漁業・漁村」を私たちはどのように見つめるのだろうか。あまりに先過ぎて想像自体をあきらめてしまいそうにもなる。まずいったん過去に遡って、約20年刻みでその時間幅の感覚を確認してみたい。100年前ではないが、約80年前からの終戦(1945年)以降であれば、戦後の日本漁業を長らく担ってきた昭和1桁世代やその下の団塊世代の漁業関係者の話や文献等でなんとなく空気感がわかる。
つづきを読む旧日韓漁業協定の終了通告がなされた1998年1月23日の直後の25日、寒い日曜日、戦後の漁業制度改革に直接携わった先輩たちからお話を伺う機会を得ました。場所は大手町の全漁連の一室。戦後の漁業制度改革からTAC法までの通達類をまとめた「漁業制度例規集」(大成出版)を編集した水産庁職員が、日々の業務や本の編集過程で様々な疑問、問題意識を持つ中で、当時、水産経営技術研究所所長であった水産庁の先輩、赤井雄次さんのお計らいによるものでした。
つづきを読むここ数年、全国の漁業現場から「魚が獲れない、海が壊れてきている」という悲痛な声が上がってきています。また、気候変動や海洋環境の悪化といった問題が、海の生態系に影響を及ぼし、水産業が持続可能なものではなくなりつつあります。そのような海が抱える大きな課題を解決するために、我々が設立したのが「フィッシャーマンジャパン・ブルーファンド」。このファンドはビジネスの力で豊かな海を取り戻し、持続可能な水産業を実現することを目的にした海洋環境保全特化型のインパクトファンドです。本記事では、ブルーファンドの意義とその仕組みを解説します。
つづきを読む次は、卸売市場経由率および卸売市場数・卸売業者数の推移をそれぞれまとめたデータです。まず左側の卸売市場経由率ですが、水産物、青果、食肉、花きの部門別の推移を1つのグラフにまとめています。青果のみ国産が別データになっています。それぞれを見てみますと、例えば青果では令和1年で54%ぐらいに減ってしまっていますが、国産の青果だけを見ればまだ8割近くあります。水産物では昭和55年頃のピーク時には一番高い時は86%ありましたが、令和1年では46.5%まで下がっています。
つづきを読むラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は1897(明治30)年8月に初めて焼津を訪れてから1904(明治37)年9月に亡くなるまでの8年間で、計6回の夏を過ごしています。岸からすぐ深くなり波も荒い海水浴に向かない海岸でしたが、水泳が得意だった八雲はこの海をとても気に入りました。
つづきを読む第6回では、漁師を増やすというテーマで、漁師を増やすためにフィッシャーマン・ジャパンが取り組んできた内容を説明しました。我々の食卓に魚が登場するまでには、漁師だけでなく、多くのプレーヤーたちの存在が必要不可欠です。そこでFJが次に取り組むのは、水産加工会社を初めとした、漁師が魚を獲った後の水産業を守る人達の育成です。現状の課題や、どのようなアプローチで取り組んでいるか解説していきます。
つづきを読む2023年10月に始まったこの連載も今回が最終回となりました。この連載の目的は、わが国周辺での地球温暖化の影響が顕在化し、わが国社会の少子・高齢化と人口減少が進む一方、水産業のスマート化が進められるなかで、流通・消費を含めて水産資源の持続可能で安定的な利用をいかに図るかについて、多面的に考えてみることでした。
つづきを読む次からは日本の水産物消費動向について見ていきます。このシートですが上下2つのグラフを載せています。上の方のグラフは食用魚介類の国内消費仕向量と国民1人当たりの年間消費量についての1989年から2021年までの推移です。下の方のグラフは1999年から2019年まで5年刻みで年齢階層別にみた1人1日当たりの魚介類摂取量の推移です。上のグラフで緑色の折れ線は国民1人当たりの食用魚介類の年間消費量ですが、1989年は1人当たり37.4㎏ありました。ピンク色の折れ線は同じ基準での肉類消費量ですが1989年は26㎏です。この2つを足すと63.4㎏になります。
つづきを読む水産庁では、以前から、平成30年の漁業法改正をはじめとして「水産政策の改革」に取り組んできた。「新たな資源管理の推進に向けたロードマップ」に基づく新たな資源管理システムの構築は、その中心的な取組である。このロードマップは令和6年に改訂されたため「旧ロードマップ」となってしまったが、この旧ロードマップに沿って、資源評価対象魚種の拡大やTAC対象魚種の拡大が行われてきている。
つづきを読む東京水産振興会の理事をしている長谷です.2019年の夏まで水産庁におりました.水産庁在職時のことですが,水研の中村智幸さんに内水面関係の調査事業の予算化について相談されたときに,残念ながら水産庁ではなかなか難しいと思い,旧知の東京水産振興会渥美会長にお願いして振興会での一連の内水面関係の事業が始まったという経緯があります.そういう意味で私は内水面と振興会の仲人役だったと自負していますので,今日はご縁を感じますし,このような形で参加できて嬉しく思っております.
つづきを読むノルウェーの漁業はしばしば漁業管理の模範的な例として挙げられる.資源は守られ,漁業は多くの利益をあげ,漁業者は大きな漁船の上で幸せに漁業をしていると考えられがちだ.こういった話を漁業関係者ならば一度は聞いたことがあるのではないだろうか.その成功は目覚ましいものがあるが,当然ながらノルウェー漁業も完璧ではなく,課題も抱えている.
つづきを読む高度回遊性魚種である太平洋クロマグロについて,我が国では,中西部太平洋まぐろ類委員会(以下「WCPFC」)の決定に基づき,2015(平成27)年から太平洋クロマグロの30キログラム未満の小型魚(以下「小型魚」)の総漁獲量を4,007トンに制限する措置等を実施している.水産振興第589号及び第590号では,「太平洋クロマグロの小型魚漁獲半減に向けた取組について」と題し,①2014(平成26)年のWCPFCにおける半減措置決定までの国際的・国内的な対応や,②半減措置決定以降の国内対応が取りまとめられている.
つづきを読む豊洲市場の歴史的な移転事業の最後を飾る施設として,6街区の場外に待望の賑わい施設「豊洲 千客万来」が2月1日に開業した.開場から丸5年遅れ,客入りを懸念する声もあったものの,オープン1か月以上を経ても平日を含め大勢の人が押し寄せている.場外市場に期待された活気や賑わいづくりの役割をここまでは十二分に果たしている.
本連載の番外編に登場するのは,事業者の万葉倶楽部(株) で新規開発事業を担当する高橋眞己副社長 (62).
ラスパルマスとは,アフリカ沿岸に位置し,7つの島から成るカナリア諸島のひとつであるグランカナリア島の県都だ.年間を通して温暖な気候が特徴で,島の中に砂漠地帯がある程カラっとしている.のんびり過ごせるビーチがあったり,味わい深い建物を眺めながら石畳を散策できたり,美味しいスペイン料理が味わえたりと,魅力あふれるリゾート地として人気だ.サハラ砂漠で有名なモロッコの近くなのだがスペイン領であることから,ヨーロッパ各地からの観光客が多い.アジア圏から遠く離れるため,アジア人の姿がかなり少ないのも特徴の1つである.
つづきを読む海遊館を辞め,フリーで活動をしていたころ先輩からのお声がけで,夏休み期間に地方都市のデパートの催事場などで行う移動水族館の現場管理を数シーズン任されたことがある.それが毎回心身ともに疲れはててしまうのだ.毎回,開催中にいくつかの水槽が,魚病によって魚が全滅という悲惨な状態になってしまうこともあるのだ.そんな悲惨なことにならないように毎日毎日水槽の管理に気を使いすぎ,移動水族館の最終日が近づくころには心身共にくたくたになる.
つづきを読む北日本の日本海沿岸で獲れるハタハタは,スズキ目ハタハタ科の魚で,通常は水深250メートル前後の深海底に棲息し,冬型の低気圧が強まり,時化によって海水が攪拌され沿岸水温が低下すると,水深2~3メートルの藻場に産卵のためにやってくる.漢字では「鰰」「鱩」「神魚」「雷魚」「神成魚」「波太多雷魚」「佐竹魚」などと表現される.ハタハタの塩漬けや干物は正月用の食べ物となり,「鰰」の文字には,ハタハタがなければ正月が迎えられないといった気持ちが込められているのだろう.
つづきを読む東京・豊洲市場は世界一の水産市場として注目度が段違いなだけに,場内やその周辺は,業界関係者らにピンポイントで訴えかけるイベント開催地として魅力ある場所といえる.とはいえ,都が開設する公設市場で公的スペースである場内と,民間事業者の管理する場外とでは,できることが異なる.最終回となる「豊洲市場活用マニュアル」では,イベントを開きたい行政・団体向けに留意する点を取りまとめた.
つづきを読む下間帆乃(ほの),1999年秋田県生まれ.秋田県立男鹿海洋高等学校海洋科を卒業,豊洲市場にある冷蔵冷凍保管事業を主とする株式会社ホウスイに入社して6年になる.
つづきを読む洋上風力発電については,2018年12月に成立した再エネ海域利用法に基づき検討が本格化し,21年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画における2030年までに10GWの案件形成をという目標に対し,これまでに秋田県,新潟県,千葉県,長崎県において約3.5GWの案件がまとまってきました.
つづきを読むコラムも最後の連載となりました.この最終回まで全15回,行政,研究者,漁業者,企業など多方面から寄稿していただいたおかげで,いまや不可避となった温暖化対策について,海辺ではどのようにブルーカーボンを展開していけるか,展開していく上での問題点は何か,包括的に考えることができました.本コラム全体の内容をまとめると,行政では,各省庁が脱炭素社会の構築にむけて,ブルーカーボン吸収源の制度化と海藻バイオマス活用の推進を目指していました.それを受けて,地方自治体が浜と一緒になって運用試験を開始していました.浜でも,漁業者が独自に取り組んできた藻場再生や磯焼け対策に加えて,気候変動対策という大きな目標をやりがいに変えて,よりいっそう活動を発展させようとする気概を感じることができました.このような動きに企業が賛同し,自社の社会への責任だけでなく,地球環境と人間社会の持続可能性を向上させるべく,熱意をもってSDGsの達成や気候変動対策に取り組む姿を垣間見ることができました.
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