水産振興ONLINE
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2022年7月

ウナギの寝床創り

柵瀬 信夫(鹿島建設株式会社 環境本部)

要旨

「どうして・こうする・こうなった」という問題解決の流れがあります。こと、“足元のウナギが消える”という問題では、一連の解決までの流れが細かく、現在も問題は続いています。しかし、近年、研究ではなく現場での問題解決につながる「ウナギの寝床創り」石倉カゴの技術展開が進み、その現場での実行事例がでてきました。そこで本稿では、展開された技術と製品とその普及などの概要、「こうする・こうなった」の現時点の状況を紹介します。

石倉カゴを寝床にしていたウナギたち(2021年11月 静岡県清水・庵原川)

1. はじめに

ウナギは国民食材です。我国のウナギ料理代表は蒲焼です。全国の蒲焼専門店で食べることが出来、家庭で食べられる蒲焼の加工品は身近なスーパーマーケットでも販売されています。かつては、タレの醬油とウナギの脂が火で焦げ、蒲焼の匂いが風味となって街中に漂い、客の食欲を誘う宣伝媒体になっていましたが、今は街中の無臭が求められ蒲焼の風味は街から消えました。しかし、江戸時代中期に頭のいい人がウナギの漁獲が多い夏に、暑さに負けない栄養食材として、ウナギを食べる日を設けました。この習慣は今も続いて、設けた日の前後は報道もウナギの話題を提供し、その宣伝効果によって、蒲焼専門店・鮮魚店・スーパーマーケット・コンビニエンスストア等でのウナギの売り上げは通常の倍以上に、そして養殖ウナギ生産加工でも需要の多い夏が大事な出荷目標になっています。2020年、我国で蒲焼やその加工品で使用されたウナギの総量は51,295t、匹数で256,475,000匹です。その匹数は、我国の総人口125,708,382人に対し一人当たり2匹になります。これらのウナギは、全国の蒲焼専門店で提供され、どこのスーパーマーケットでも家庭で簡単に食べられる蒲焼の加工品が常時販売され、ウナギは我国を代表する国民食材です1(図-1)。

図-1 国民食材蒲焼
著者プロフィール

柵瀬 信夫さくらい のぶお

【略歴】
1949年(昭和24年)京都市生まれ 1980年日本大学大学院水産学専攻博士課程を修了し、1982年鹿島建設株式会社に入社 現在にいたる 農学博士。

  • 1:水産庁、ウナギをめぐる状況と対策について、11月, pp.1-24, 2021年