水産振興ONLINE
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2022年7月

ウナギの寝床創り

柵瀬 信夫(鹿島建設株式会社 環境本部)

4. 1,000倍にします

2020年、我が国の総漁獲生産額は1兆3,223億円でした。この内934億8,700万円が内水面養殖生産額で、この中の70% 661億1,500万円がウナギ養殖生産額です。国民食材として最も重要な養殖生産になっています。このウナギ養殖生産の元は、海で育って来遊する天然のシラスウナギを採捕し、種苗にすることで成り立っています2。国内の養殖方法の多くは、種苗として採捕地から集められた0.2gのシラスウナギを池に入れ、餌付けすることから始まります。屋内の大型水槽を用いて26~30°Cの水温で育成し、多くは1年以上かけて商品サイズの200g以上1,000倍に育てます。養殖の元である採捕地のシラスウナギの浜価格は、各年のシラスウナギ来遊量=採捕量によって40万~150万円/kgと変動しています(表-1)。1kg当たりの尾数は、12~1月の来遊初期は5,000尾で、3~4月の終期は6,000尾と個体の小型化があります。流通を経て養殖生産者への池入れ価格は浜価格の2倍程度で、近年の採捕量が少ない年には300万円/kg(1尾当たり600円)になった時もありました1。天然の親から生まれ、海で育って来遊するシラスウナギがなぜ、この様な価格になるのか不思議です。生産されたウナギの価格は、3,000円~4,000円/kgで、kg当たり5尾とすれば1尾当たり600~800円になります。ただ天然ウナギは特別で、通常5,000円/kg以上で、10,000円/kgを越すこともあり、市場に出る魚介のなかで最も高価格のものになっています。ウナギの強さを利用して、養殖も天然も輸入物も酸素入りビニール袋で遠方の目的地まで運ばれ、調理加工は活きた状態で処理される特徴があります。

表-1 藤沢市引地川川口漁場でのシラスウナギ年別総採捕量と月別買取浜価格
  • 1:水産庁、ウナギをめぐる状況と対策について、11月, pp.1-24, 2021年
  • 2:農林水産省、漁業生産統計調査、2020年