2. ウナギは国際流通品
2020年、我国に供給されたウナギは、国内で生産された養殖ウナギ(活ウナギ+加工品)16,887t、天然漁獲ウナギ65t、主に中国(台湾を含む)からの輸入養殖ウナギ(活ウナギ+加工品)34,343tで、輸入されたウナギが67%を占めています。この輸入ウナギは、我国(ウナギ関連業界、消費者)が求める需要と供給+価格に対応する安定対策供給品になっています。2000年、我国のウナギ総供給量は158,094tと過去最大となり、その内の133,211tが中国からの輸入ウナギで総供給量の84%を占めていました。この状況によって、低価格の輸入加工品がスーパーマーケット等で普及し、日本人が大好きな蒲焼が家庭で温めれば食べられる便利な一般食材になり、ウナギの消費を促進しました。しかし、このあと中国での養殖生産の種苗として使用していた低価格のヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla)のシラスウナギは、2009年ヨーロッパウナギ資源保護のために貿易規制が実行され、ヨーロッパからの種苗入手が困難になりました。これ以降、中国での養殖生産の種苗は、中国沿岸に来遊するニホンウナギ(Anguilla japonica)のシラスウナギを採捕し種苗にすることで養殖生産が維持され、現在我国が輸入する養殖ウナギになっています。そして、近年我国のシラスウナギ採捕量減少によって、2014年以降は種苗価格の上昇、加えて餌料費・人件費などの養殖生産に係わる費用の増大がウナギの商品価格をひきあげました。この動向で輸入養殖ウナギも価格上昇が起きて、低価格で普及していた輸入蒲焼加工品も以前の2倍以上の価格上昇が起きていますが、この輸入蒲焼加工品は、国産蒲焼加工品価格の半分程度で販売されてもいます。しかし、この数年輸出国の中国ではウナギの人気が高まり国内消費が著しく増加し、近い将来中国からの低価格のウナギの入荷がなくなる可能性があります。この商品価格の上昇によって一般食材であったウナギは高級嗜好食材になり、さらには絶滅危惧種に指定されたことで食べてよいのかという課題も重なり、これらの影響で2000年の158,094tの供給量(=消費量)は2020年には51,295tと70%近く減少しています。減少する国内のシラスウナギへの対策として、2015年 水産庁はシラスウナギ種苗の国内養殖生産での池入れ数量の上限を 21.7tに定め、乱獲・密漁・闇流通等の防止策を含めて新しい方針を示しました。ただ2010年以降、国内採捕量と養殖生産者の減少によって池入の21.7tを超す状況はありません。そして、遡上するシラスウナギの保護のために地域によっては採捕期の始まりを遅らせる事も行われています1。
- 1:水産庁、ウナギをめぐる状況と対策について、11月, pp.1-24, 2021年