水産振興ONLINE
635
2022年7月

ウナギの寝床創り

柵瀬 信夫(鹿島建設株式会社 環境本部)

10. 石倉カゴ魚道

海から河口、さらに河川、湖沼、水路などへの生活域拡大を求めるウナギを待ち受けている課題の一つが落差工・堰・ダムとアユやマス類などの飛越が基本の魚道による遡上障害です。ウナギや回遊性のエビやカニなどの這行遡上する魚介に対応する魚道開発は少ない状況です。筆者が技術開発した這行性魚介に対応する魚道は、石倉カゴを円筒形にしたもので、ウナギなどが登りたい壁面にたてかけ固定する簡易で低価格のものです。必ず上方から水がカゴ内に落ちる様にし、石積空間が濡れた状態をつくります。ウナギなどの魚介は、石積空間を這い上がり、体が外部に露出しないため鳥等の食害防止になり、遡上が出来ます。また、詰められた石は、太陽光や風で暖められ、その石積空間を流下する水は、外周の水温より1~2°C高く、それがウナギや魚介への誘因作用を作っている様です(図-14、15)。


図-14 石倉魚道の概要と遡上ウナギ
図-15 石倉魚道の呼び水効果

我国では急勾配の河川が多いため、台風など降雨による増水が起きやすく、河川構造物はコンクリート等の強靭なものが必要になっています。固定形状の飛越対象の魚道はコンクリートの常設型ですが、増水による破損や土砂の堆積や流れの変化による水不足など、管理が行き届かなくなって機能が消失したものが問題になっています。石倉カゴ魚道は、遡上期だけ設置することを基本にしているため、増水が予想される時は、円筒状にカゴを結束しているバンドの部分を外し、石を出すことで分解が出来、撤去できます。増水が終われば再びカゴを結束し、石を詰めて魚道が復元できます。簡易的に設置する以外に、コンクリート壁面にステンレスベルトで固定するものや、石倉カゴを積み重ね重量による固定で周年設置するものもあり、各魚道もウナギが這い登ることや、ハゼ類・エビ・カニの遡上が確認されています(図-16)。

図-16 石倉魚道の実施例