本号は2020年9月から2021年8月まで水産経済新聞社の紙面ならびに水産振興コラムにて合計11回にわたり連載された記事「豊洲市場 水産物流通の心臓部」でインタビューを受けた水産物流通関係者ならびに学識経験者のなかから4名に参加いただき、2021年8月23日に豊洲市場内の講堂で開催した座談会の記録内容である。
1. はじめに
婁副学長:早いもので移転から3年がたとうとしている。豊洲市場を取り巻く事業環境はこの間に大きく変貌を遂げた。
市場の自由度を高める改正卸売市場法やHACCP義務化をうたった改正食品衛生法、70年ぶり改正となった改正漁業法の施行、違法水産物の排除を目指す水産流通適正化法の成立など、市場や市場流通環境に関わる法律は大きく変化した。
一方、足元では新型コロナウイルスの影響が長期化する中、豊洲市場は流通の要として、食料品を安定供給する役割をよく果たしてきている。市場関係者のたゆまぬ努力はもちろん、卸売市場そのものの役割に対する社会的な期待の表れだろう。
国内の生産者はいまだ中小・零細業者中心で、生鮮水産物の需給調整に優れた機能をもつ卸売市場流通の地位は揺らぐことは過去一度もなかった。今後も水産物流通のトップランナーとしてかかる期待は大きいと私は考える。
そういった背景を踏まえ、実際に豊洲市場の内部でご活躍されている皆さまに、改めて自身の考える豊洲の強みについて順番に聞いていきたい。
2. 豊洲市場の強み
2-1. 先人がつくった物流
婁副学長:卸代表の伊藤(晴)社長はどう思うか。
伊藤(晴)社長:築地市場時代から先人がつくり上げ、今も継続している市場の仕組みというものの強みを現在も感じている。特に全国のどの産地からでも、毎日荷物が届くというのはすごいこと。普通なら冷蔵機能をもったトラック便の手配だけでも大変なのに、豊洲ならいとも簡単。物流コストはほかの市場と比べても格段に安い。
今後、時代に合わせてこうした機能を進化させることを考えなければならない。一つがデジタル化だ。漁業者、産地仲買人、(産地と豊洲をつなぐ)運送業者、場内物流業者、卸、仲卸、買出人と、商品一つに何枚もの手書き伝票が書かれている。これらがデジタル化できれば全員の作業が減り、情報が「見える化」される。
蓄積してビッグデータ(膨大なデータを迅速に収集・分析してビジネス上で有用な知見を得る手法)として活用し、さらに強い豊洲市場にしていかなければならない。
婁副学長:非常に大事な指摘だ。流通は「物流」「商流」「情報流」の3つからなるといわれるが、豊洲の場合は「物流」に関しては非常に効率がよいネットワークがある。
ただ、「情報流」は、各地の生産動向ばかりが注目され、「物流」に付随する伝票情報のデジタル化まで至っていない。効率化の余地は大いにあると考えている。
一方、連載の中で伊藤(晴)社長は場内物流の非効率も指摘していた。具体的な解決のアイデアはおもちか。
伊藤(晴)社長:場内のデジタル化は大変遅れているが、1社でやれることは本当にわずか。多くの人と共通認識をもって進めていかなければならないが、話題に上るだけでなかなか前進しない。
現在は、中央魚類グループとして積極的に具体的なデジタル化というものをお見せしようという気で動いている。実際に見てもらって「自分のところでも使えそうだ」と思ってもらえる流れをつくりたい。
2-2. 温度管理は魚も人も
婁副学長:仲卸代表の伊藤(晃)社長からはどうか。
伊藤(晃)社長:閉鎖型で温度管理が行き届いており、仲卸には本当に最高の施設(ハード)。鮮魚や冷凍物を扱う仲卸は魚の鮮度劣化を防げる。中で働く人々も、外が炎天下や極寒の中でも快適に働けて、体力面においてもメリットがある。
卸各社が最高の仕入れをしていただく中で僕らの「目利き」(商品の品質を見極めて実需者の求めるものに合わせて最適なものを引き当てる力)を発揮する仕組みが築地時代と同様に維持されていることは、やはり豊洲の強みだ。コールドチェーン(低温物流)が場内で途切れず消費者に届いている、という実感は築地に比べて強く感じる。
移転から3年、新型コロナの影響がなければ相当よい仕事ができたと思うと残念だ。早期の終息を願いつつ、日々の商売に取り組んでいる。
婁副学長:低温管理型施設となったことで、商品管理以外に、体力的にも助けられたという話だったが労働時間はどうか。豊洲に移ってから、築地より営業時間が平均約30分短縮されたともうかがっているが。
伊藤(晃)社長:築地に比べて短くなったというより前倒しされたという感覚。仕事終わりは早くなったので、一概には何ともいえないが…。
ただ、温度管理を含めて劣悪な環境でなくなった点は雇用環境によい影響を与えていると思う。働き手の確保は仲卸全体のテーマなので、仲卸の仕事や先人から受け継いだ「目利き」をどんどんアピールして、若い人材の獲得に努めていきたい。
伊藤(晴)社長:セリ場に昔より1時間早い午前3時には出社しなければならなくなり、かといって無理な残業させられず、早い時間に来させて早く帰さなきゃいけないということで大変やりづらくなった。この点は、せめて築地市場時代の時間くらいにならないかと考えているのが正直なところだ。
ただ、パートや契約社員の採用はしやすくなった。築地時代には老朽化施設や魚臭さなどに抵抗を感じてか、敬遠されることもあった。今はそういったことがない。
2-3. センター機能も改善
婁副学長:売買参加者代表のオオゼキ・座田部長は豊洲市場の強みをどのようにとらえているか。
座田部長:ほぼ常温管理だった築地に比べて、豊洲市場はすごく改善した。オオゼキでは最終の店舗発送が午前10時発という遅いタイミングなので、前日に入荷した商品が下手すれば翌日の午前10時まで常温のまま保管されている時があった。築地と比べて、品物のもちはだいぶ変わった。
また、産地とのネットワークに優れているため「物流」や「商流」が早く助かっている。オオゼキでは豊洲をセンターとして使っているようなものなので、わざわざ(大金かけて)自社センターをもつ必要がない。その部分では非常によい場所だ。
婁副学長:移転時に大きな機能強化部分の一つとされた量販店・スーパー対応やセンター機能をまさしく実感をされているということだと思う。
3. 豊洲市場の弱み
3-1. 新たな仕組みできず
婁副学長:話題を転じて、今度は豊洲の弱みについてはどうか。豊洲市場協会などで行ったアンケート調査を集計すると、交通アクセスや駐車場問題があるにはあるが、それ以外の部分における評価点は意外と高かったという印象だったが。
伊藤(晴)社長:かなりたくさんある。多くは市場移転の延期(2016年11月開場が2018年10月開場に延期)による影響だと感じている。
今、新しくなった施設で行っている仕事のやり方は、築地時代と全く同じ。荷物の運搬はフォークリフトとターレットトラック(ターレー)。新市場に移るのだから新しい仕組みにしなければならなかったのに、延期でそれどころではなくなり、まず移転が先として先送りした結果、打ち合わせをする時間がなくなり残念な結果となった。
また、時代の流れに伴って市場に求められる機能が複雑になってきた。水産物の一次加工や量販店・スーパーなどの店舗別仕分けなどだが、現時点でそれなりの規模でできるような施設になっていない。いまだに手を付けられていないし、設計思想にもないので、市場外で進めざるを得ない。内部にスペースがあれば安上がりなのだが、市場外に機能をもてばコスト増の要因になる。
とはいえ、延期は過去の話。今後は前向きに関係者で話し合い、プラスに変えていけるかが大事だ。ただ、一から話し合ってやり直そうとしてもなかなか進まない実情がある。
婁副学長:豊洲市場への移転問題は俎(そ)上に上がってから移転まで長い年月がかかった。本来は、経済活動なので経済原理で動けばまだよかったのだが、(政争の具になるなど)社会原理が働いて大変な問題に直面し、市場関係者の皆さまが対応に忙殺されてしまった。その点は確かに残念だった。仲卸の伊藤(晃)社長は豊洲市場の弱みをどう考えるか。
3-2. アクセス改善早急に
伊藤(晃)社長:立場的に言いたいことはこちらもたくさんあるが、まず買出人からの声が多いのは交通アクセスの問題だろう。
築地に比べて自動車で来ると駐車料金が高く、電車で来ると時間がかかるし運賃が高い。そういった面を含めて来場してくれる買出人は大分減っている。都には少しでもアクセスをよくしていただけないかという話は何度もしているが、なかなか現実味を帯びた話にならない。何年も前から豊洲移転は決まっていたのに誠意が不足しているのではという個人的な思いがかなりある。より多くの買出人に来場していただくため、近い将来にアクセスが改善されることを望んでいる。
また、仲卸売場内で十分な歩道が確保されていない、ターレーの走行スピードが速すぎるなどの意見もある。これは僕ら仲卸自身の問題なので、改善に向けた話し合いを内部で進めていきたい。
豊洲市場が広くなり、閉鎖型になったことでわれわれ仲卸の目が行き届かない中で、改正市場法による規制緩和も重なって、市場施設内を違法に使って商売している事例がよく見受けられる。
われわれ仲卸は、都の許可を得て店を構え、施設使用料やゴミ処理代、光熱費も払って商売している。しかし、何の許可も得ないまま空き地を使って商売している事業者がおり、問題視している。開設者の都を含めて市場関係者でよく話し合って、違法な使用事例を入念にチェックしていかなければならない。
豊洲市場を発展させる部分は一緒に努力していこうと思うが、ちゃんとしたルールを築いてもらうことがまず必要だ。要望やクレームを集約する場が3年たってもないのは問題。お互いに意見交換して、各関係者の共通ルールの構築や認識の共有を図った方がもっとよくなるのにと思っている。
婁副学長:連載では、無法状態に近かった築地になぞらえて「築地ルール」の言葉を使っていたが、その中にも伊藤(晃)社長が指摘された問題があったし、実施したアンケートで似たような指摘が多数あった。よい習慣は引き継がなければならないし、悪い習慣は改善していかないと、せっかく移転したのに…といわれかねない。
3-3. EC台頭に強い危惧
婁副学長:連載では、オオゼキ・座田部長は品揃えの悪化を危惧されていた。
座田部長:国内の漁獲枠が相当減少していることもあって、豊洲に集まってくる荷物は築地の時に比べるとだいぶ少なくなったイメージがある。
それを除いても、以前に比べて品物が揃わなくなってきているのは、電子商取引(EC)などが盛んになったことで、産地から飲食店などが直接買う部分が相当に増えてきたからではないか。
卸・仲卸が豊洲市場に送った方がよく売れるということを産地にアピールしないと、今後はECに取られてしまうのではという危惧がある。
当社の店は近隣の飲食店の皆さまが日常的な仕入れに使う比率も高いが、話を聞くと産地仲買人とじかに商売されていることが相当程度ある。市場関係者は、豊洲市場というブランドをもっと強くアピールしてほしい。
婁副学長:産地の仲買人が飲食店や消費者に直接売るボリュームが増えているというのが荷物が集まりにくくなった原因・理由ではないかというのは、われわれも把握をして調査している。ただ、実際にどの程度なのかはなかなか把握できていない。
座田部長:さまざまな産地や中間業者から「取引しないか」と持ち掛けられることがすごく多い。
オオゼキは豊洲市場をセンターとして使っているから、基本的には卸、仲卸から買っているが、普段は豊洲を使わない量販店・スーパーにしてみれば魅力的な提案に映るのかなと思っている。
婁副学長:非常に大事な指摘だ。ECは今後を考えれば無視はできない。ではどうすればよいのかということは議論を深めていく必要がある。
4. 今後取り組むこと
4-1. 市場コストを下げる
婁副学長:豊洲市場をはじめとする卸売市場がよって立つ基盤は、やはり国内の鮮魚にある。にもかかわらず、国内沿岸、沖合漁業の生産量は落ちる一方。資源管理が行き届いて漁獲量が増えれば取り扱う量が増えてくるのだろうが、いつになるか分からない。待つばかりでなくどう攻めていくかが重要なテーマになる。
これまで豊洲市場の強みと弱みということで皆さまから意見をいただいたが、まとめとして豊洲の市場関係者全体で取り組むべきことで皆さまのお考えを聞きたい。
伊藤(晴)社長:繰り返しになるが、市場のデジタル化が最優先だ。これにより市場コストが下がれば、市場、荷主、販売先にとってプラスになるだろう。われわれが今後取り組むべき、「一丁目一番地」であると考えている。
それに加えて、国連の持続可能な開発目標(SDGs)をめぐる今後の世の中の変化をみていると、豊洲市場のゴミ処理の見直しは必須と思う。
現在、ゴミ処理費用だけで豊洲市場全体で年間5億7000万円ほどかかっている。二酸化炭素(CO2)の排出にお金がかかる時代になる中で、どんどん膨らんでいくだろう。ゴミを集荷場に集めたものをトラックで配送して焼却場で処理するといった仕組みの根本から変えていかなければいけない。
羽田空港のゴミ集荷施設では、生ゴミをその場で水に分解する装置が使われている。中央魚類でも早速購入して子会社に導入したところだ。しっかりとしたゴミの分別をする必要はあるが、別の場所に運んで燃焼させるのではなくその場で処理することで、安価なコストで済むことが確認できた。今後CO2排出税などのコストが増えることを考えると豊洲でも同様の取り組みが必要だ。
4-2. 客増やせるかの勝負
伊藤(晃)社長:市場全体で取り組まねばならないことは、マルテル美濃桂の内部でよく話し合われていることと通じると思う。
来客をメインに、仕入れた魚を見せてアピールしていく商売なので、来客が命。信頼を得たお客さまをどれだけ増やせるのかが勝負になる。オオゼキの座田部長が気にされていたECだが、豊洲の仲卸がしっかりと目利きした魚を消費者に届けるというECであるなら自分は「アリ」だと思う。水産仲卸でつくる東京魚市場卸協同組合(東卸)では「いなせり」という事業でECに取り組んでいる。
お客さまへのスムーズな配達においては東卸で共同配送を展開していて、来場されるお客さまが減った分、配達をもっと細かくできるように配備している。精度も上がってきており、23区以外の近隣地域への配達や、大阪・福岡・札幌など主要都市への航空便などが充実してきたので、その分の需要は増えている。3都市以外の主要都市に送れる手筈(はず)が整えば、より一層よくなっていくのかなと思っている。
新型コロナで国内向け販売は厳しいが、海外輸出に関しては輸出セミナーなどを開いて、豊洲市場のブランドを前面に押し出した販売をしている。SDGs関連の取り組みも現在進行形で勉強している最中で、豊洲市場として何か社会貢献をしていければと考えている。また、水産物の流通適正化の動きには、卸と連携して違法漁獲の撲滅に徹底的に協力していこうと思う。
場内の空きスペースの運用については、水産仲卸売場のある6街区はルールを決めたうえで取り組めている。市場全体でも同様に取り組むべきだし、ルールがしっかり機能している豊洲というアピールの仕方をしていこうと考えている。それを実現するには、ここにいる皆さまのご協力が不可欠だ。
4-3. 天然魚売れる環境に
婁副学長:「築地ルール」を排除し新たな「豊洲ルール」をつくることが大事だと受け止めた。座田部長はどうお考えか。
座田部長:私どもオオゼキをはじめ、東京魚市場買参協同組合に属している売買参加者は、一般消費者にいかに魚を食べてもらうか、魅力を付加して魚をどれだけ普及させるかということで、さまざま考えをめぐらせている会社が多い。
そんな中、市場全体で取り組んでほしいこととしては、天然魚がなかなか売れなくなってきた背景にあるアニサキス問題がある。刺身で食べる天然魚にまつわる情報発信や、鮮度がよいうちに内臓処理をするための一次加工の設備が今後は重要になる。
アニサキスを出すとすぐに店舗が営業停止になってしまうので、いかに安心して天然魚を販売できるかということを今後、市場で考えていただければと思う。
内臓処理を早めにやればアニサキスリスクが相当下がる。アニサキスが出ている海域の情報も大事。市場側の情報発信が積極的なら、みな安心して買えるのではないか。今のままでは思いきって天然魚を売ることができない。さまざまな部分で改善策が講じられれば、もっと天然魚をうまく売り出すことができるのではないだろうか。
婁副学長:連載の中で共通して指摘されている豊洲市場の強みは低温管理ができ、衛生管理・品質管理のレベルが格段に上がったことだった。しかし、そうした中でも安全管理や衛生管理の整備をもう少し市場機能として強化してほしいという要望と聞こえた。開設者の都もしっかり検査し情報公開しているだろうが、今の指摘はそれだけでなく市場業者からもっと情報を発信してほしいというメッセージだったと思う。
5. 最後に
5-1. まずはQRコード化
婁副学長:さて、ここまでひと通り話をいただいた。最後に私の方から伊藤(晴)社長にお聞きしたい。デジタル化には物流に関してやらなければならないことが非常にあるという話だった。ビッグデータやデジタルトランスフォーメーション(DX)などが大きな政策的テーマとなっている中で、10~20年後の豊洲市場ではデジタル化されたことによって、どのような姿になっているかを思い描いておられるのか。
伊藤(晴)社長:具体的にイメージしているのは、産地の段階から市場で扱う全商品にQRコードが添付して流通している姿だ。QRコードを貼り付けるのは必要だが、例えば境港で獲れたアジが産地市場、産地仲卸、豊洲市場、買出人へと流れていく間、今まで必要だった伝票の転記作業が全く要らなくなる。すべての場所で商品の検品はQRコードをスキャンするだけ。そうした形を目指していかなければ、コストが膨らむばかりで今後やっていけない。
QRコード化することで使用データをまたビッグデータとして活用していくことができる。もちろん電子(IC)タグがより望ましいが、まずは今やれることをすべきだ。
5-2. イノベーション必須
婁副学長:築地から移転したことでハード面は非常によくなったといえる。きょうの議論を通じて、豊洲市場のハードをどう利用するのか、管理の仕方・ルールなども含めてやはり課題があり、これから業界挙げて変えていかなければならないと感じた。
私はもう一つ、これから豊洲市場をよりよく活性化させていくための一つのキーワードとして「イノベーション」があると思っている。日本語でいえば技術革新だが、単なる技術革新だけでなく経営革新もあると思う。この両方が必要となってくる。
技術革新に関しては、伊藤(晴)社長がお話しされたようなデジタル化やビッグデータの活用によって効率よい流通の仕組みにつくり変えていくことなどがあるだろう。
経営革新に関しては、ECへの対応や海外輸出強化、SDGsの取り組みなど、新しいビジネスを豊洲市場の中で模索していくことが今後の活性化に向けた有力な方向性であると感じたところだ。これを締めくくりの言葉として本座談会を終えたい。
座談会に登場した中央魚類(株)伊藤晴彦氏(第1回)、(株)マルテル美濃桂伊藤晃彦氏(第3回)、(株)オオゼキ座田英明氏(第4回)、東京海洋大学副学長婁小波氏(第11回)の各インタビュー記事を掲載しました。
豊洲市場 水産物流通の心臓部
第1回 水産卸編(鮮魚・マグロ)
卸売市場のうち消費地市場に分類される東京・豊洲市場は、日本全国津々浦々、そして海を越えて世界中の産地とつながり、さまざまな輸送手段を講じて市場に魚を集めている。主にその集荷機能を担うのが水産卸だ。漁港に面した産地市場ではないので魚は外部から運んでくるのだが、特に鮮魚やマグロの扱いにかけては場外の大手企業もかなわない。総合卸の5社(ほか塩干専業卸が2社ある)のうち、第1回の水産卸編(鮮魚・マグロ)での登場は、伊藤晴彦中央魚類(株)社長(53)
豊洲市場 水産物流通の心臓部
第3回 水産仲卸編
東京・豊洲市場を核とした水産物流通で、全国の産地からの集荷、別の卸売市場や量販店・スーパーなどの各種物流センターへの転送、首都圏エリアへの配送を支えるのが多数のトラック便を運用する輸送業者だ。一見、同じ仕事のようにみえても業容は実に多種多様。彼らがさまざまに絡み合い、豊洲の重厚な物流網を形づくっている。その中心が水産卸売場棟4階の転配送センターとその周辺を活用している物流業者6社だ。第6回輸送業者編の登場は、その6社のうちの1社で、豊洲からの発送業務を主に担う(株)東発の松本正和5代目社長(60)。
豊洲市場 水産物流通の心臓部
第4回 売買参加者編
水産卸から優先的に魚を買えるのは、場内に店を構える水産仲卸だけではない。買参権をもつ約260の売買参加者も同じだ。セリや相対取引で魚を仕入れ、トラックバースなどから車で場外に搬出する。かつては場外の問屋や売店、近隣市場の卸や仲卸、加工メーカーが優勢だったが、近年は量販店・スーパーや鮮魚専門店が存在感を増している。第4回の売買参加者編での登場は、鮮魚の品揃えに定評がある東京圏の食品スーパー、(株)オオゼキの座田英明鮮魚部門統括部長(50)。
豊洲市場 水産物流通の心臓部
第11回 終わりに
東京・豊洲市場の活性化には仲卸業者や日々出入りする買出人・一般消費者のニーズを正確に把握し利用者の満足度を高める取り組みにつなげる必要があるとの認識で、豊洲市場協会などは2019~20年度に利用実態調査を行った。本連載の最終回では、同調査の実施から取りまとめまでを行った検討委員会座長を務めた東京海洋大学副学長の婁小波教授(58)がその結果を念頭に置き、豊洲市場関係者に提言した。
他の連載回の記事も「水産振興オンライン」(https://lib.suisan-shinkou.or.jp)上で閲覧が可能です。下記巻末資料内のリンクからもたどれます。
巻末資料
水産振興コラム 豊洲市場 水産物流通の心臓部 記事掲載一覧
(2020年9月から2021年8月まで)
- 連載回 タイトル 登場者
- 第1回 水産卸編(鮮魚・マグロ) 中央魚類(株) 伊藤晴彦氏 ※
- 第2回 水産卸編(塩干・加工) 丸千千代田水産(株) 畑末新太郎氏
- 第3回 水産仲卸編 (株)マルテル美濃桂 伊藤晃彦氏 ※
- 第4回 売買参加者編 (株)オオゼキ 座田英明氏 ※
- 第5回 魚商編 (有)魚辰 大武浩氏
- 第6回 輸送業者編 (株)東発 松本正和氏
- 第7回 関連事業者編 東京魚類容器(株) 原周作氏
- 第8回 青果編 (株)西太 岡本光生氏
- 第9回 開設者編 東京都中央卸売市場 松田健次氏
- 第10回 番外編(築地魚河岸) (株)樋栄 楠本栄治氏
- 第11回 終わりに 東京海洋大学副学長 婁小波氏 ※
婁 小波ろう しょうは
1962年9月中国浙江省生まれ。1986年3月東京水産大学卒業。1992年3月京都大学大学院博士後期課程修了、農学博士。1992年4月に近畿大学農学部助手、1997年4月に鹿児島大学水産学部助教授、1999年10月に東京水産大学助教授、2004年3月東京海洋大学学術研究院海洋政策文化学部門教授、2021年4月同副学長、現在に至る。
伊藤 晴彦いとう はるひこ
1967年3月東京都生まれ。1990年4月株式会社ニチレイ入社。2000年4月中央魚類株式会社入社。2009年4月同社取締役情報システム部担当兼開発部部長。2013年5月株式会社水産流通 代表取締役社長。2013年6月株式会社ホウスイ 取締役専務執行役員。2015年6月中央魚類株式会社常務取締役、2017年6月同社専務取締役、2019年6月同社代表取締役社長。現在に至る。
伊藤 晃彦いとう てるひこ
1969年8月生まれ。1994年10月東京都中央卸売市場築地市場水産物部仲卸業者(有)美濃桂商店入社。2018年10月(株)maruteru美濃桂の代表取締役、現在に至る。2017年2月から東京魚市場卸協同組合(東卸組合)常務理事。豊洲市場特種物業会総務部長。
座田 英明さいだ ひであき
1970年8月千葉県生まれ。1989年4月(株)オオゼキ(当時は(株)大関総合食品)入社。1996年4月に不動前店鮮魚部チーフ、2000年4月に鮮魚部エリア長、2013年4月に鮮魚部門統括部長、2021年4月にビジネスイノベーション事業本部部長、現在に至る。2020年5月から東京魚市場買参協同組合理事。