水産卸から優先的に魚を買えるのは、場内に店を構える水産仲卸だけではない。買参権をもつ約260の売買参加者も同じだ。セリや相対取引で魚を仕入れ、トラックバースなどから車で場外に搬出する。かつては場外の問屋や売店、近隣市場の卸や仲卸、加工メーカーが優勢だったが、近年は量販店・スーパーや鮮魚専門店が存在感を増している。第4回の売買参加者編での登場は、鮮魚の品揃えに定評がある東京圏の食品スーパー、(株)オオゼキの座田英明鮮魚部門統括部長(50)。
売る力高めて集荷を維持
オオゼキ各店のチーフが鮮魚を仕入れに豊洲に通勤するのは、事前注文の1便が午前6時30分に市場をたったあと、場内の混雑が落ち着きをみせ始めた午前7時になる。水産卸売場の各所を回って午前10時出発の2便に乗せる鮮魚を見繕う。大手なら郊外の配送センターに送られた鮮魚を荷捌き(ピッキング)している時間だろうが、僕らのセンターはここ豊洲なので、仕入れに時間を使える。大勢のその道のプロと情報交換して直近の入荷見通しを知ることができるし、時に思わぬ掘り出し物を見つけることもできる。
水産仲卸売場棟1階北に40台近い駐車スペースを午前9〜10時の間に確保している。配送は外部業者に任せて、都内の38店舗、神奈川県内の2店舗、千葉県内の1店舗へここから直接届けている。水産だけで月間7億円ほどの仕入れをここ豊洲で行っている。
買参権はあるが、本当の意味で卸から直接買うのは冷凍魚や干物などの2割ほど。鮮魚の管理やピッキングはほぼ水産仲卸の皆さんの世話になっている。多様な魚種を値頃な価格で品揃えできているのは(維持費のかかる)自前のセンターをもたないで、店まで短時間で運べる拠点としてここを活用しているからだ。
豊富な魚を選べるスーパーとして料理好きの方に認知していただいて、業界の傾向とは逆に年々一店舗当たりの鮮魚売場の面積を広げることができているのも、それが大きな理由と思っている。
鮮度感ともち一変
僕が入社した1989年、オオゼキの店舗数はまだ3店舗だった。それが都内中心に41店舗まで拡大できたのは、豊洲の前身の築地時代から、市場を仕入れにうまく利用してきたからだ。
初めて築地に足を踏み入れた時は「日本じゃないみたいだ」と時代錯誤感にあぜんとしたけど、今と同じやり方でセンター的に市場を使い、当時の〝茶屋〟(買荷保管所)から魚を配送。鮮魚売場を充実させ事業拡大を図る分には問題なかった。
豊洲市場に移転してからは、夏場の悩みだった鮮度管理の問題が解消した。屋内の20度C前後で管理されているので、店に並べた時に鮮度感や魚のもちが全然違う。雨ざらし、直射日光、小動物被害、氷が溶けるといった事態とは無縁で、衛生面は段違いといえる。
主体的な集荷望む
今後も鮮魚部門がオオゼキの強みであり続けるためには、豊洲市場を拠点とした配送を継続していくことが欠かせない。だからこそ豊洲市場には全国各地、そして世界各国から魚を集荷できるような強い力を常にもち続けていてほしい。そのために僕らが売る力をもっていないといけない。この世にある魚がすべて集まるくらいの状況になるように、売り上げを高める努力を継続していく。
水産卸の担当が最近、売れ行きがよくないからと産地から魚を無理に集めなくなっているのが気掛かり。また、魚が勝手に送られてくるのに安住して、集める努力を怠っているようにみえる時もある。足りない魚をもっと集めるよう主体的に動いてくれたなら豊洲はもっと変わるはずだ。(つづく)