水産振興ONLINE
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2020年9月

座談会 定置漁業研究

司会 東京水産振興会理事 長谷 成人 氏
日本定置漁業協会専務理事 玉置 泰司 氏
青森県定置漁業協会会長 堀内 精二 氏
静岡県定置漁業協会会長 日吉 直人 氏
ホクモウ株式会社 松平 良介 氏
水産業・漁村活性化推進機構 奈田 兼一 氏
全国漁業共済組合連合会常務理事 岩下 巧 氏
水産庁 中村 真弥 氏

要旨

定置漁業は沿岸漁業の漁獲量の4割を占める中核的漁業であり、チームで操業するため漁村に住んでみたいという若者の受け皿としても適している。
国は漁獲量ベースで6割の資源に定めているTACを8割に広げる方針だ。クロマグロについては国際合意を厳守するため、定置漁業者も、網に入ったものを逃がしてまで漁獲量管理に取り組んでいるが、魚種選別・放流技術の向上が望まれる。資源管理は皆で取り組むことが大事であり、クロマグロのように厳格な漁獲量管理が無理なら、漁獲努力量管理での工夫が必要だ。
台風などの激甚化で、漁網損壊のリスクが高まっている。水温上昇等の影響で漁獲物の変化も著しい。2023年からは定置漁業権の切替が全国で始まる。網の強靭化、網抜き・網入れ作業の効率化、施設共済への加入率向上、漁場計画の早期検討開始など課題は多い。
浜の存続に不可欠な定置漁業経営を改善するため、もうかる漁業等の事業で得られた成果の横展開も重要だ。
座談会では、定置漁業の現状について意見交換を行い、このような課題を共有するとともに、本年度内に各課題についての対応方向などについて報告書を作成し、発信していくことが合意された。

開会の挨拶

事務局:本日は、定置漁業研究座談会ということで、昨年振興会の理事になられた前水産庁長官の長谷さんから提案がありまして、皆さんにお集まりいただきました。当初は4月18日に予定しておりましたが、コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言がだされた関係で延期せざるを得ない状況でした。今回はなんとかタイミングよく開催することができました。皆様には感謝申し上げます。

それでは、まず当会会長の渥美から一言ごあいさつを申し上げます。

渥美:皆さま、こんにちは。今、お話にもありましたように当初4月の初めにこのような座談会を行って、それをスタートとして進めていこうと思ったのですが、コロナの影響もあって一時はオンラインでやるという話もでましたが、改めてなんとか開催することができました。本日はこのように皆さまにお集まりいただけたので、是非、活発なディスカッションをしていただければと思います。

まず、なぜ定置漁業を取り上げるのかというところからお話をします。長谷さんが昨年の秋から私どもの理事としてお手伝いいただいていた中で、最初に会ったときからこれから定置の研究をどうしてもやりたいという提案を受けました。それは国際的な資源管理が強化されている中で、魚種毎の数量管理において、魚種の選択制がない定置というのはかなり難しいです。一方、日本の沿岸漁業の魚獲量の40%は定置で揚がっているということで、どうしても定置をこれから盛り立てていかなければいけないということを強く言われました。一緒に何か動きましょうということで、まず座談会から始めて、その中でいろいろと課題を見つけて、最終的に何かの形でまとめたらいいということになりました。後は長谷さんにお任せしますけれども、そのような形で最終的に何かまとめて、幅広く情報発信をできたらと思っています。今日はよろしくお願いいたします。

事務局:それでは、司会進行を長谷さんにお任せしていますので、この後、進行のほうをよろしくお願いいたします。

長谷 成人はせ しげと

1957年生まれ。1981年北海道大学水産学部卒業後水産庁入庁。資源管理推進室長、漁業保険管理官、沿岸沖合課長、漁業調整課長、資源管理部審議官、増殖推進部長、次長等を経て2017年水産庁長官。2019年退職。この間ロシア、中国、韓国等との交渉で政府代表。INPFC、NPAFC(カナダ)、宮崎県庁等出向。現在、(一財)東京水産振興会理事。

玉置 泰司たまき やすじ

1958年生まれ。1983年東京水産大学修士課程修了後水産庁入庁。企画課課長補佐を経て1995年水産庁中央水産研究所経営経済部に異動。水産経済部動向分析研究室長、経営経済研究センター需給・経営グループ長等を経て経営経済研究センター長として2019年退職。現在水産資源研究所水産資源研究センター再雇用研究員及び(一社)日本定置漁業協会専務理事。

堀内 精二ほりうち せいじ

1963年生まれ。五所川原農林高校農業土木科卒業後、株式会社堀榮組に入社。1996年(株)ホリエイ取締役に就任。2005年(株)ホリエイ代表取締役に就任。2014年(株)あおもり海山代表取締役に就任。2017年青森県定置協会会長に就任、同年日本サーモンファーム(株)専務取締役に就任。2018年日本フィッシャリーサポート(株)取締役に就任。

日吉 直人ひよし なおひと

1957年生まれ。1980年明星大学卒業/一般企業入社。1995年伊東市漁協富戸支所定置部入組。2007年伊東市漁協理事就任。2010年いとう漁協代表理事専務就任。2012年静岡県定置漁業協会会長・(一社)日本定置漁業協会常任理事・静岡海区漁業調整委員就任(現職)。2015年〜2018年農林水産省政策評価第三者委員会委員。2019年(一社)大日本水産会水産功績者表彰受賞

松平 良介まつひら りょうすけ

1978年生まれ。東京水産大学大学院 海洋生産学専攻 修了。2006年にホクモウ(株)入社。漁撈開発部に所属し,全国各地の定置網漁場の調査や研究開発を担当。現在ホクモウ(株)営業部所属。

奈田 兼一なだ けんいち

1952年生まれ。1976年東京水産大学卒業後、静岡県信用漁業協同組合連合会入会。1988年全国漁業協同組合連合会・信用事業推進部出向後、経営監査部長を経て、2005年全国漁協オンラインセンター常務取締役、2006年全国漁業協同組合連合会・総合管理部復帰後、2009年特定非営利活動法人水産業・漁村活性化推進機構出向。現在、同機構専任指導員・日本定置漁業協会監事。

岩下 巧いわした たくみ

1963年生まれ。1985年に全国漁業協同組合学校卒業。同年4月に全国漁業共済組合連合会に入会。入会後は経営対策推進部長、総合企画部長、企画推進部長を経て、現在全国漁業共済組合連合会常務理事。

中村 真弥なかむら まさや

1979生まれ。2002年東京水産大学卒業後水産庁入庁。沿岸沖合課沿岸調整班免許調整係長、同課漁業調整官、九州漁業調整事務所漁業監督課長、下関市農林水産振興部参事兼水産課長を経て、2016年4月から現在、管理調整課課長補佐(沿岸調整班担当)。