自己紹介と定置漁業の諸課題についてリレートーク (10)
長谷:では、今後の話をします。冒頭申し上げたように今日のこの話はテープ起こしをして、皆さんにも確認していただいた上で、今年の秋には発表していきたいと思っています。問題意識の共有、大きな異論などはなかったと私は思っていますので、この大事な漁業をこの大事な時期に今一度課題を検討していかないといけないということで、まずそれを秋ぐらいまでには、「水産振興」誌の形で世間に出していきたいと思っています。
そのようなことをしているうちに12月1日に新漁業法、改正漁業法が施行されるわけです。そこから全部変わるわけではないと思いますが、役所のほうで詰めの話をし、業界のほうとしてどの魚種をTACにしたらよいかなどいろいろな話が出てくると思います。そういう話があって整理がどこまでされるかというのもありますけれども、それから年が明けますから、私のイメージとして報告書の項目のたたき台をお配りしました(巻末資料3 )。このような問題についてそれぞれ考え方をまとめていただければと思います。
奈田:少しよろしいですか。漁獲量管理の関連の話ですが、定置の場合は幼稚魚は漁獲量として載ってこない場合が多いのですが、これを逃がす対策もいろいろやられているので、このことに触れておく必要があると思います。幼稚魚対策は定置にしかできないし、幼稚魚の資源保護は定置がやるべきだと思います。
長谷:もうかる漁業の中で網の目合の拡大効果と云うのは出てくる話ですね。
奈田:取組はいろいろやっています。
長谷:そういう幼稚魚の話はいろいろありますね。
奈田:漁獲管理の中の手法の一つというか資源保護の一つの手法です。
長谷:例えば、サバの話でも、マグロでも要するに稚魚、小型魚を保護すると資源が増大するというようなことです。サバの仲間のようなものはそういうのが多いわけです。だから、そういう中で定置ができる資源管理の協力の一つとしてあるでしょう。当然可能な範囲になりますが、網目を大きくするというのは他の効用もあるわけで、そういうのも進めていきましょうという話にすればいいわけです。
日吉:あと、それに付随するかもしれませんけれども、定置自体が小さい稚魚の、今の時期は水温も上がっているので、松平さんなどはご存じだと思うのですが、時期になるとものすごい量の稚魚が定置網についています。いろいろな種類の魚がいますが、そのことはあまり知られていないです。僕らは分かっているけれども、県や国や市がやってくれている魚礁などよりよっぽど巨大な魚礁になっています。そのことを先ほど外国の人が見るとトラップネットという名前でイメージが悪いと思いますが、セットネットならまだいいけれども、ごまかして何かやっているというようなイメージになってしまっていると思います。
僕らは漁業者だから実感していますが、本当に見せてあげたいぐらいのものすごい量の稚魚が定置自体に付いているのです。なぜかというと、3次元構造の魚礁ですから。上は浮いていて底までつながっているので、定置自体が3次元になっているわけです。ですから大きな魚礁のような、要は保育園状態、今の時期は特にそうです。いろいろな魚が定置網についています。松平さんはずっと日本中に水中カメラを入れていたからよくご存じだと思います。そういうことも私たち定置漁業者は発信していなかったので、それはすごく大事だと思います。
アオリイカが卵を産みに来て、今、網にたくさん付いています。
奈田:網屋さんからもそういう話を聞きます。定置網の設置は逆に資源を増やす効果があるという話は聞きます。
中村:そういう効用もあると思うのですが、やはり言われたように小さいのが入っているというところも今後問題視される可能性は当然ありますし、そのときに目合いを大きくしましょうというと、たぶん、魚が刺さる、今までこれでやってきたから変えたくない、コストがかかるなどという意見がたぶん出てくるので、われわれとして網を単に大きくしてくださいと言うだけで進むのかどうかというところです。資源、幼稚魚の影響というのは結構あるかもしれません。堀内さんなどは元々目合いが大きいので、そういうところはないかもしれませんけれども。
日吉:たぶん、地域によっても全然違うのです。静岡は小さいものはあまり取れないです。日本海のほうの若狭湾などのあたりは多く獲れると聞いたことがあります。
奈田:幼稚魚の魚種も地域によって違います。
長谷:ありがとうございます。これで締め切りというつもりはないので、もう少しよく考えてこれを柱に立てて発信したいというのがあればどしどし言っていただければと思います。少なくともこのようなことで年度内それぞれ作業をお願いし、必要な支援があれば振興会のほうに連絡をいただければ応援させていただきます。よろしいでしょうか。
渥美:少し一言だけいいですか。先ほど海外ではものすごくいじめられているというか、あまりいい漁法と思われていないと。私はこの中に定置はこのように素晴らしいというのが入ったらいいと思いました。先ほどの魚礁なども見えた形で。
長谷:魚礁やごみの話もありました。
玉置:定置漁業の多面的機能のような話ならばできるのでは?
長谷:多面的機能など何かタイトルを少し工夫してみたいと思います。玉置専務にお願いできますか。
玉置:はい。
岩下:私もいろいろな漁業の共済に携わっていまして、定置網漁業ほど資源管理を徹底している漁業はないと実は思っているのです。魚の選別は難しいとは言えどもです。追っかける漁業ではなく待つ漁業で、今は入網魚の放流ということも取り組んでいます。そういう面では定置網漁業というのはなくしては絶対いけない漁業だと思っています。定置網は漁協の自営定置も多く、特に三陸などの定置網というのはほとんど自営で漁協も大変困っています。でも、先ほども少し話がありましたけれども、漁協は死ぬか生きるかの状況にあります。だから、何とか定置漁業を存続させるために、今、会長のほうから話してもらったとおり、PRのようなものがあったら非常にいいかと思います。
長谷:岩手のイメージですね。
日吉:全国の漁業を見ている岩下さんが言うのは意味が重かったです。やはり、自然に優しいです。
岩下:そのとおりです。一番自然に優しいと思います。
日吉:中村さんもそれを認めてください。
中村:はい。地域で大事だというのはまさにそうだと思います。ただ、先ほどもご説明しましたように資源管理をやっていく、早く国が示せと言われたらそれまでですが、やはり、漁獲量管理をしていくときに今日もいろいろ話し合いがありましたけれども、やはり、魚種選択性との相性がというところはあります。先ほども出ましたけれども、やはり小さい魚の問題というのも地域によってはまだ抱えているところがあると思いますので、一緒くたにして、論じていくものなのかどうかというところもあるかとは思います。
長谷:アピールできるものはしていくという。
中村:そうです。アピールできる取り組みはしていけばよいと思います。
長谷:400年これでやってきたからいいだろうというのは散々聞きましたけれども。400年やってきたのはそうだけれども、変わっていくべきものは変わっていかなければいけないということだと思います。岩手こそサケが前年の2割しか帰ってこないというとんでもない状況になっているので、次の切り替えに向けて大変だと思っているところです。ありがとうございます。いいですか。それでは、今日のところはこれでお開きということにさせていただいて、適宜柔軟にご相談しながら、でもまとめてきちんと発信していくということにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。
本座談会は、2020年7月7日に当会が開催した座談会記録です。リレートークで話をされていた意見については、水産振興ONLINEでもコラムとして公表されていますので、ご参照ください。
(水産振興ONLINE https://lib.suisan-shinkou.or.jp/)