水産振興ONLINE
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2020年9月

座談会 定置漁業研究

司会 東京水産振興会理事 長谷 成人 氏
日本定置漁業協会専務理事 玉置 泰司 氏
青森県定置漁業協会会長 堀内 精二 氏
静岡県定置漁業協会会長 日吉 直人 氏
ホクモウ株式会社 松平 良介 氏
水産業・漁村活性化推進機構 奈田 兼一 氏
全国漁業共済組合連合会常務理事 岩下 巧 氏
水産庁 中村 真弥 氏

自己紹介と定置漁業の諸課題についてリレートーク (3)

長谷:次は日本定置漁業協会から玉置専務、お願いします。

玉置:日本定置漁業協会で専務理事を去年からやっています玉置と申します。私と定置漁業との関わりですが、水産庁の入省2年目、昭和59年に1カ月漁村研修というものをやったのですが、そのときにお世話になった漁協が自営定置網をやっていました。熊本県のある漁協で、漁協の自営定置やその他の3ヶ統の定置網で合計22回くらい網上げ作業や選別作業、網掃除なども手伝いまして、ここで定置網のさまざまな魅力を知ることができました。その後、中央水産研究所の研究職に移ったのですが、2014年から2016年には科研費で定置網をテーマにした研究予算、「定置網漁業を核とした6次産業化による地域活性化状況の解明」で予算を獲得することができ、各地の聞き取り調査に回ることができました。

玉置 泰司 氏(日本定置漁業協会専務理事)

このときには自営の漁協や個人、あるいは、法人を合わせて60カ所ぐらい聞き取りに回って、このような研究を基に2017年には地域漁業学会で定置網をテーマにしたシンポジウムを開催しました。先ほどの聞き取り調査のときには、日吉さんのところへもお伺いして、地域漁業学会のシンポジウムには奈田さんも報告者として来てもらいました。その後、2018年に一緒に研究していた仲間と『頑張っています定置漁村』という本を出版することができまして、このような縁もあったかと思いますが、現職に呼ばれて就いています。

長谷さんが水産振興オンラインで定置網について書かれていて、今日も配布資料になっていますが『定置漁業研究について』というのがあります。その中で、一つ気になる点を言いたいと思います。これの4ページ目の下のほうに、定置網について運転資金は燃油代が小さいことなどから比較的小さくて済むと言われている部分です。例えば、農林水産省で漁業経営調査をやっていまして、2015年の大型定置網の会社経営体の経営データを見ますと、約6,300万円の漁労原価の中で確か、燃油費は218万円とわずか3%なのです。ただ、労務費が3,277万円と52%を占めています。キャッチホーラーやキャプスタンなどのさまざまな漁労機械の出現によって乗組員数も大きく減ってきたのですが、2015年の統計では最盛期の従事者が14.2人ということで、沿岸漁業の中では一番乗組員が多い業種です。なお、この漁業経営調査での大型定置網とサケ定置網の統計というのは2015年が最後で、それ以降、調査対象の漁業種類から外されているという大変残念な状況になってしまいました。

一方で、2018年の漁業センサスによりますと、定置網全体の新規就業者は248人いました。この数は沿岸漁業全体の新規就業者数の約3割を占めています。このように新規着業はしやすい漁業種類という面はあるのですが、まだまだ就業者不足に悩んでいる地域も多くて、外国人の技能実習生の投入も進んでいますけれども、経営改善のためにも作業者を減らすことが可能な技術開発というのもまだまだ必要と考えています。

あと、長谷理事がここに挙げられた7つの問題意識です。私なりにまとめると、地域温暖化による来遊魚種の変化、2つ目が経営改善策の横展開、3つ目が漁具共済への加入促進、4つ目が定置網の強靭化、網抜き・網入れ作業の迅速化、5つ目が魚種選別技術の向上、6つ目が漁獲量管理の在り方、7つ目が混獲回避技術の向上、この7つだと思います。これについてはいずれも同意できる問題意識と私も考えています。