水産振興ONLINE
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2020年9月

座談会 定置漁業研究

司会 東京水産振興会理事 長谷 成人 氏
日本定置漁業協会専務理事 玉置 泰司 氏
青森県定置漁業協会会長 堀内 精二 氏
静岡県定置漁業協会会長 日吉 直人 氏
ホクモウ株式会社 松平 良介 氏
水産業・漁村活性化推進機構 奈田 兼一 氏
全国漁業共済組合連合会常務理事 岩下 巧 氏
水産庁 中村 真弥 氏

定置漁業研究の趣旨説明

長谷:よろしくお願いいたします。コロナの中、出席いただいて本当にありがとうございます。ステイホームしながら考えたのですが、ここ10年もたっていない間に東日本大震災があって、原発事故があって、そのうち頭の上をミサイルが飛んで、台風はどんどん大型化するし、今このときも九州で大雨の被害が続いているという状況です。それに加えて、コロナのパンデミックということで、本当に大変な時代です。いろいろなことが激変してきている大変な時代だからこそ、これからの水産業を真剣に考えていかなければいけないし、将来に向けた種まきを早くしていかなければいけないということを強く思った次第です。

長谷 成人(東京水産振興会理事)

この後、皆さまには自己紹介をしていただこうと思っていますが、私の自己紹介はこの定置漁業との関わりや思いについてお手元にあります水産振興コラム(巻末資料1 )にすでに書いています。参加者の皆さまには事前に目を通していただけたかと思いますので、ここでは省かせていただきます。ポイントだけ申し上げれば、渥美会長からもお話がありましたが、定置漁業はわが国沿岸漁業生産の4割を担っています。そして、いろいろな機能があるのですが、浜への若者の受け皿として重要な役割を果たしていることから、これからも日本の沿岸、浜が存続していくためにはなくてはならない重要な漁業であると認識しています。

一方で、これもお手元にお配りしていますが、振興会が昨年度事業でまとめた定置網漁業における漁獲量の推移という資料がなかなか面白いです(巻末資料4 )。一番極端な話として申し上げれば、秋サケの大不漁のように対象魚種の動向がものすごく変化してきています。また、大型化する台風等のリスクが増大しています。それから定置漁業というものは魚種選択性が低い中で、国は漁獲量管理に軸足を移しました。これは外国との関係などいろいろあって軸足を移そうということにしましたけれども、そのような国の資源管理方策と魚種選択制の低い定置漁業をどう折り合いを付けていくのかということが大きな課題だと思っています。

コラムでは私なりの問題意識を書きましたけれども、今日のこの座談会で定置漁業と様々な角度から関わりを持っている方に集まっていただきましたので、問題点のさらなる抽出、そして、それを共有した上で、まずはこの座談会の内容を振興会の出版物である『水産振興』として、この秋には取りまとめたいと思っています。そのようなことをしているうちに、本年の12月と聞いていますが、改正漁業法が施行されます。各課題について可能かつ適当であれば、本年度中に報告書、レポートに考え方をまとめたいと思います。2023年9月からは5年に1度の定置漁業権の切り替えが全国で順次行われます。23年の9月になっていきなり切り替わるわけではなくて、その前にいろいろな準備の過程があります。1年以上の過程が都道府県レベルであると思います。その作業が本格化する前に我々の考えをまとめ、それを踏まえて、来年度の事業で日本定置漁業協会さんとも連携させてもらって、情報発信として、シンポジウムを開くなどいろいろことをできたらという思いでいます。

まずは各出席者から自己紹介とともに諸課題についての考え方をお聞きできればと思います。簡潔にお話をしていただいた後、質問や意見交換の時間を持ちたいと思います。一通り全員の発言が終わった後、総括的な意見交換の上で課題の共有、今後の進め方の相談をしていきたいと思っています。それでは、指名させていただきますので順番にご発言をお願いします。まずは、青森県の堀内さん、よろしくお願いいたします。