水産振興ONLINE
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2020年9月

座談会 定置漁業研究

司会 東京水産振興会理事 長谷 成人 氏
日本定置漁業協会専務理事 玉置 泰司 氏
青森県定置漁業協会会長 堀内 精二 氏
静岡県定置漁業協会会長 日吉 直人 氏
ホクモウ株式会社 松平 良介 氏
水産業・漁村活性化推進機構 奈田 兼一 氏
全国漁業共済組合連合会常務理事 岩下 巧 氏
水産庁 中村 真弥 氏

自己紹介と定置漁業の諸課題についてリレートーク (2)

長谷:ありがとうございます。次に静岡から日吉さんお願いします。

日吉:静岡県定置協会の日吉です。私は伊豆半島で定置網をやっています。非常に首都圏からアクセスがよくて恵まれているとは思いますが、課題も多い中で今回、長谷さんが主導していただいて、定置網に興味を持っていただいたことが非常にうれしいです。私は定置網漁についての愛が少し強いものですから、今までにないような取り組みをしていただいたこと、また、将来的に危惧している問題もあるということで、非常にうれしく感じて今日は出席させていただきました。

日吉 直人 氏(静岡県定置漁業協会会長)

少し漁模様を話しますと、今年はちょうどコロナが問題になりだした3月頃だったのですが、ブリが結構たくさん獲れまして、非常にいい身質の寒ブリでした。近年にないぐらいの漁獲をしたのですが、コロナで少し魚価が安かったです。また、スルメイカが少ないと言っていたのですが、1月ごろから500キロ、多いときは1トン、2トンなど獲れました。魚価はスルメイカで一番上は1,300円付きました。普段だったら、ご存じのとおり、100円前後で動いているものが、非常に高い値段で取引されたので、今年は前半で1年分ぐらいを獲る感じでやりました。

ただ心配な点があって、今はスルメイカも少ないのですが、元々、私のところはスルメイカの漁場で、ブリがもしなかったら、非常に困窮したのではないかと思います。先ほど、堀内さんのほうからもありましたが、私のところは元々マグロがそこまで入らないところなのですが、去年は特に多くて、静岡県全体でおよそ2万尾を放流したのです。堀内さんのところは非常に多いのですが、伊豆半島もマグロが付くところです。長谷さんもご存じかと思いますが、北黒という漁場は今でも漁船漁業の人は1月まで我慢しています。1月になって大間が終わったあと、マグロを獲りに行っています。

おととい、北黒漁場に金目漁で出た漁船の人と話をしたら、大きいマグロが跳ねて、山になっていたと言うのです。去年、静岡の船が北黒漁場でマグロを400トン以上巻いたと聞いていますが、非常に増えているというのが漁船漁業の方々が言っていることです。効果はあったと思います。先ほども言わせてもらいましたが、みんなで努力すれば、資源管理はある程度うまくいくのではないかと思います。長谷さんが主導されて、長官のときからそうだったと思うのですが、されてきたことは無茶ではなかったと思います。

もう1点、今年はブリを獲っています。これも長谷さんが関係していると思うのですが、積立ぷらすです。今日の資源管理というものが絡んでいる積立ぷらすについては、非常に現場では経営的には助かっています。あまりこういうところで積立のことやお金の話はしたくはないのですが、今は非常に貢献しています。日本中の定置で言えることだと思います。今日はよろしくお願いいたします。

長谷:日吉さんには相模湾、相模灘というか伊豆沖は急潮が結構大変な課題のところだと思うのですが、そこら辺についても少しお話いただけますか。

日吉:神奈川県の水試が三崎沖のブイを使って急潮警報というのを出しているのですが、静岡県も絡んでいると思います。石戸谷先生という神奈川県水試にいた先生の研究で四国沖から伊豆半島を抜けて、銚子沖に抜ける低気圧や台風が来ると、42時間後に急潮が来るという大体のことは分かってきているのですが、低気圧が接近しているときはどうしても波浪が高いので、網を抜く作業というのは非常に危険が伴います。かえってまた網を傷める可能性がありますので、なかなか対応ができていないのが現状です。

今日は小田原市役所の吉川さんもいらっしゃっていますけれども、神奈川県の湘南地域は海岸線が南に向いています。僕は伊豆半島の東岸なので、東側や北東側を向いています。ですから、直接うねりが入らないのでまだ対応できるのですが、相模灘の中でも湘南の定置は対応が非常に難しいのではないでしょうか。沖に台風や低気圧があると波長の長い力のある波が来ますので、なかなか急潮対策というのはできない現状があるのが事実です。

もう1点、先ほど言い忘れたのですが、クジラが今年私のところに2回入っています。1月は2匹親子が入って、先日はザトウクジラだったのですが、1年間に3匹も入っているわけです。これもなかなか今までにないことです。やはり、鯨類なども増えていてそういうこともあるかと思いました。網をやられずうまく逃がしましたので、網の中からクジラを逃がすやり方については、どこかで講習をやってもいいかというレベルまで達しました。

長谷:逃がすにはそれなりの時間がかかりますよね。

日吉:そうです。でも、利口ですから脅さなければ網に刺さってこないです。

岩下:駿河湾のサクラエビが不漁だと言われる中で、相模湾の定置にサクラエビが大量に入るということを聞いたことがあるのですが、そういうことはやはり多いのですか。

日吉:今年は多かったです。小田原市役所の吉川さんがいるから聞いたほうがいいかもしれないです。去年、小田原には鮮魚で出ていたようです。本来サクラエビは相模湾にはいないとされていたのですが、実は前からいくらかは獲れていました。しかし、去年の秋にびっくりしたのは、ライトを付けたら網の周りが赤くなっていました。相当の量がいたと思います。サクラエビは目合いからどんどん抜けていきますので、網で獲れる量というのは相当少ないと思いますが、実際、現場にはすごい量がいたと思います。

長谷:吉川さんは何か付け加えることはありますか。

吉川:由比がすごく獲れない年だったので、小田原が注目されて豊漁のように言われたのですが、そこまで大量に漁獲されているわけではないです。ただ、サクラエビに限らず、漁業者からは、温暖化の影響なのかシイラやサワラなど漁獲される魚種が変わってきているという声が聞かれます。