水産振興ONLINE
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2024年5月

内水面漁業に関する法改正について
—内水面漁協の活性化に関する研究における話題提供(2021年3月)—

長谷 成人((一財) 東京水産振興会理事)

はじめに

東京水産振興会の理事をしている長谷です。2019年の夏まで水産庁におりました。水産庁在職時のことですが、水研の中村智幸さんに内水面関係の調査事業の予算化について相談されたときに、残念ながら水産庁ではなかなか難しいと思い、旧知の東京水産振興会渥美会長にお願いして振興会での一連の内水面関係の事業が始まったという経緯があります。そういう意味で私は内水面と振興会の仲人役だったと自負していますので、今日はご縁を感じますし、このような形で参加できて嬉しく思っております。

図1

私は釣りをしない不調法者ですが、プロフィール(図1)に書いたように、北海道大学水産学部を卒業して水産庁に入り、38年余り水産の仕事をずっとしました。水産庁の場合、どうしても海の仕事が圧倒的に多いのですが、係長時代や班長時代は海面の漁業権や漁業調整規則の担当で、すぐ隣の内水面の担当者を横目で見ながらというか、免許の切替や規則の認可などではよく相談もしながら仕事をしました。

その後、宮崎県の漁政課長に3年間出向する機会を得たのですが、当時の宮崎県の水産行政の一番の課題がシラスウナギの密漁対策だったこともあり、印象的には仕事の半分は内水面だった感じがします。この時は、シラスウナギの流通について規制している条例についての課長としての私の判断で訴えられることもありまして、被告側の席で知事の代理人として陳述したりするという得難い経験もさせてもらいました。でも、上流の椎葉というところの山の中での放流に参加させてもらって、山村の生活は下流域の世界と違ってなんて美しいんだろうと思ったことも思い出されます。

その後、水産庁の沿岸沖合課長、漁業調整課長時代は内水面漁業も担当する課長でしたし、増殖推進部長時代はちょうど内水面漁業振興法が議員立法で成立した時でした。これもやはりウナギになりますが、資源管理、資源回復のため、漁業法や水産資源保護法の適用範囲外である私有水面であっても養鰻業は大臣の許可制にするという規制を飛び乗りするように法案に入れ込んだという思い出もあります。思い返せば、ウナギは何かと縁があり、ワシントン条約での扱いをEUの環境部局と協議するためベルギーのブリュッセルに弾丸出張したこともありました。今日のテーマは「ウナギと私」ということではないので、これくらいにして図2になります。

図2
図1 プロフィール

今日は、お時間を頂き、私の公務員時代の最後の時期の仕事になった水産政策の改革に伴う内水面関係の法改正についてお話しさせて頂きたいと思います。水産政策の改革は、図2の左側に書いたように、水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化の両立により、漁業者の所得向上と年齢バランスのとれた漁業就業構造の確立を実現することを目的としています。

安倍政権下で先行した農業関係の改革に続くものとして、産業としての漁業の改革を進めていこうとするものでした。その点で、どうしても海面での漁業を想定しつつ検討が行われたわけですが、法律の改正というのは大変なエネルギーを使うものでして、予算のように毎年見直すようなわけにはいきません。そこで、法改正に与えられた時間的余裕はあまりなかったのですが、せっかくの機会を生かして内水面についても最小限の手当てを行ったというのが実情です。

著者プロフィール

長谷 成人(はせ しげと)

1957年生まれ。1981年北大水産卒後水産庁入庁。資源管理推進室長、漁業保険管理官、沿岸沖合課長、漁業調整課長、資源管理部審議官、増殖推進部長、次長等を経て2017年長官。2019年退職。この間ロシア、中国、韓国等との漁業交渉で政府代表。INPFC、NPAFC(カナダ)、宮崎県庁等出向。
現在 (一財)東京水産振興会理事、海洋水産技術協議会代表・議長
水産振興コラム「進む温暖化と水産業」を連載中。