水産振興ONLINE
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2024年5月

内水面漁業に関する法改正について
—内水面漁協の活性化に関する研究における話題提供(2021年3月)—

長谷 成人((一財)東京水産振興会理事)

新たな水協法や漁業法の内水面関係規定

その内容が図2の右側に列挙されています。一つ目が水協法、正式には水産業協同組合法の改正で、内水面組合の組合員資格に関するものです。漁協の正組合員資格を有する個人については、水協法で、漁業を営む日数でカウントすることが基本になっています。漁業を営むとは、資材の調達等の準備行為から魚の販売に至るまでの一連の行為であり、実際に漁をする日数だけをカウントするものではないとされています。

図3
図2 新たな水協法や漁業法の内水面関係規定(2020年12月1日施行)

この規定が、河川組合についてはあとからお話しするように法律成立後すぐに営む日数ではなく採捕や養殖をする日数とされた一方、湖沼組合では営む日数とされてきました。全国の湖沼組合を見渡した場合、例えばシジミ漁業など盛んに漁業を営む活動が行われているところももちろんありますが、全体的には営む実態が希薄化している組合が多い状況を踏まえ、今回湖沼組合も河川組合と同じ規定ぶりにしました。ただし、盛んに漁業を営んでいる実態がある漁協では②にあるように、その選択により正組合員を営むために採捕している者に限定することもできるとの規定を置きました。

そして、①ですが、湖沼、河川を問わず、正組合員資格を有する個人の資格を採捕や養殖をする日数だけでなく、増殖する日数も加える改正を行いました。第5種共同漁業権の増殖については、一昔前のいわば放流一辺倒の状態から、試験研究機関の皆さんの研究成果を踏まえながら、産卵場の造成や堰堤での汲み上げや汲みおろしまで多様化してきましたが、そのような活動に従事する方、釣りはしないが豊かな川づくり、内水面づくりには興味があるという人まで含めて正組合員として活躍してもらおうという発想です。

内水面関係者との議論、全国内水面漁連の要望も踏まえ、内水面の議員連盟の先生方にも賛同してもらって改正したものです。漁協の組合員の減少、高齢化が大きな問題である中で、この改正で万事解決ということには到底なりませんが、やる気のある組合員を少しでも確保していただく契機になればいいなと思っています。

同じ図2で二つ目が漁業法です。これは読んで頂ければわかると思いますが、従来の漁業法では、琵琶湖が海面扱いとなっている滋賀県を含め、海ありの40の都道府県については漁業法で海区漁業調整委員会と内水面漁場管理委員会の両方が必ず置かれる組織として規定されてきました。最近あまり話題にならないように思いますが、過去地方分権を進めようという議論の際は、このように国の法律で自治体に必ず設置するよう義務付ける「必置規制」は評判がよくなかったこと、確かに沖縄県のように内水面漁業の実態が極めて小さいような例もあることから、都道府県が望めば、海区漁業調整委員会をもって内水面関係の権限も合わせ持ってもらえることにできる規定を置きました。実際に、すでに沖縄県が漁業法施行令第18条で指定されています。