事業報告書
漁業経営(組織・管理方式)のあり方
—最終報告—
要旨
わが国の漁業は、いわゆる200海里時代に入り遠洋漁業が縮小の一途をたどる中で、沖合・沿岸漁業への依存度が高まっています。特に沿岸漁業(海面養殖業を含む)は全国各地に存在し、経営体数および従事者数においても大きなウェイトを占めていることから、その経営を維持・発展させる振興策は社会経済的に重要な課題と言えます。
遠洋漁業や沖合漁業では経営体のほとんどは企業(株式会社等)が担っていますが、沿岸漁業においては従来、家族単位の漁家漁業経営が大半でした。しかし近年では、漁場や資源の有効利用、労働力不足対策、経営の合理化等、地域の漁業実態や課題に応じて、共同的な漁業経営や企業的な漁業経営等、様々な組織形態・方式が見られるようになりました。
しかし、そうした漁業経営の形態や組織特性等に着目した詳細な調査はこれまでほとんどありませんでした。そこで当会では、全国の沿岸漁業等における様々なタイプの漁業経営組織・方式の実態およびそれらに関連し規定要因となり得る諸条件(漁場管理方式、漁協事業等)を把握し、今後の漁業振興に資する論点整理等を行うため、1999年度から2001年度までの3か年にわたり標記の調査研究事業を実施いたしました。
本調査研究は下表のとおり、全国の沿岸漁業(一部沖合漁業を含む)を対象として数多くの現地調査を実施し、それらの結果を踏まえた経営組織形態別の所見を含め、調査研究成果を「事例調査研究報告」(1999~2000年度調査結果)および「最終報告」(2001年度調査結果および3か年の総括)の2つの報告書に取りまとめ、刊行、公表しております。
主な調査対象漁業種 | 経営組織・方式に関する主なキーワード | |
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事例調査研究報告 | ホタテガイ漁業、ホタテガイ養殖、定置網、ワカメ養殖、貝桁網、ノリ養殖、採貝採藻、魚類養殖 | 共同企業体(任意組合)、漁協自営漁業、プール計算制、協業化、大規模経営(企業的経営) |
最終報告 | 採貝採藻、底曳網、イカナゴ漁業、ノリ養殖、定置網、まき網、魚類養殖 | 共同操業、漁業種転換、協業化、漁協自営漁業、共同経営(任意組合)、大規模経営(企業的経営) |
目次
- 第I部 事例調査報告
- 1. 貝採藻漁業における個人経営体と個人経営体間の協調行動の関係
—岩手県種市町小子内浜漁協の事例— - 2. 秋田県北部漁協地区における底曳網の共同操業について
—共同操業を巡る諸条件の変化と経営組織としての評価— - 3. 林崎漁業協同組合における漁業経営構造の改変施策
- 4. 有明海ノリ養殖業と協業化
- 5. 漁協による定置漁業経営の実態—千葉県波左間漁協及び房州ちくら漁協の事例—
- 6. 漁協自営定置網における経営判断—設備投資と乗組員養成を中心に—
- 7. まき網漁業共同経営の意義と課題—「小呂島旋網組合」を事例に—
- 8. 魚類養殖業における企業的経営の展開と課題—宮崎県A社の事例—
- 1. 貝採藻漁業における個人経営体と個人経営体間の協調行動の関係
- 第II部 3年間の調査研究の総括
- II-1. 漁業経営の実態と経営組織のあり方をめぐる諸論点
—3年間の共同研究を終えて— - II-2. 経営組織形態別の調査所見
- 1. 個人経営体の変容と地域の対応
—共同漁業権漁業である小規模採貝採藻漁業を中心に— - 2. 経営体間協定に基づく経営方式の内実と課題
—プール計算制経営組織を中心として— - 3. 協業経営の評価と展望
- 4. 漁協自営の現状と課題—漁協自営の実態調査結果をふまえて—
- 5. 共同経営組織の現代的意義と成立条件—任意組合を中心に—
- 6. 魚類養殖業における企業的経営の展開と課題
- II-1. 漁業経営の実態と経営組織のあり方をめぐる諸論点
委員等
- 座長 (東京大学社会科学研究所 教授)
- 委員 (鹿児島大学水産学部 助教授)
- 〃 (鹿児島大学水産学部 助教授)
- 〃 (鹿児島大学水産学部 教授)
- 〃 (東京水産大学資源管理学科 助教授)
- 〃 (東京農業大学国際食料情報学部 教授)
- 〃 (水産経営技術研究所 特別研究員)
- 〃 ((株)漁協経営センター 代表取締役)
- 〃 (東京水産大学資源管理学科 助教授)
- 〃 (京都精華大学環境社会学科 教授、林崎漁業協同組合 顧問)
※ 所属・役職は発行当時のもの。敬称略・順不同。
刊行
2002年
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ステータス
冊子:在庫なし