広告業界で国内最大手である (株) 電通がかつて行動規範としていた「鬼十則」がある。その2番目と7番目が漁業運営においても重要だ。
まず2番目「仕事とは、先手先手と働き掛けて行くことで、受け身でやるものではない」。
ところで、私が学生だった20年以上前は、二日酔いを防ぐ手立ては存在せず、飲み会のたびに翌日は頭痛と気持ち悪さに苦しんだ。しかし、今は手軽に飲めるウコンがある。この会場にいる漁師さんも飲み会の前にウコンを飲む人が多いのではないか。事前に対策をすることで楽しいお酒となり、翌日にも残らない。
仕事においても、問題への対処の仕方として、問題を予測して予防する方法と、問題が生じてから傷を手当てする方法の2種類がある。漁業は、いくら自然相手とはいえ、問題が生じてから慌てふためくことが多すぎると思う。いったん問題が起きると、それを回復させるまでの時間と費用に加え、問題を回避できていた場合に得られるはずだった稼ぎも失うことになる。傷を手当てする方法はロスが大きい。
そこで、漁業運営のキホン(4)「予防型で仕事を組み立てる」ことが必要になる。起きていない問題を予測してそれに投資するのは、見えないものを見るようで勇気がいるかもしれないが、真にうまくいくやり方は予防型である。時間的にも費用的にも、小さい投資が積み上がったところで、問題が起きてからの大きな出費に比べれば微々たるものだ。この取り組み方が漁業は苦手で遅れている。
昨対より予算対比
上の表は、ある漁協の運営委員会で出された残高試算表だ。もう何十年もこの表を使っているのだろう。右の分析欄には昨年対比しかない。すると職員はこう報告する。「昨年、30年に一度あるかという突発的な来遊がありましたが、今年はそれがなかったので数字が下がってしまいました」。30年に一度が2年続くとでも思っていたような口ぶりだ。確率にして900分の1。こんなの仕事ではない。特異的な昨年の数字と比べることに何の意味があるのか。仕事が完全に受け身になってしまっている。
この場合、分析欄に昨年対比だけでなく予算対比も設ければよい。期初に、現状と見通しを考慮した生きた数字で予算立てを行い、それと結果を比べることで努力量を評価する。生きた数字を追うことになるので、戦略も立てやすく意欲も湧く。これが正しい仕事の取り組み方だ。
予算を立てよ、というとしゃくし定規にプラス成長しか認めないアホな上司や組織もいる。先ほどの30年に一度の場合のように、直近ではプラスにならないことが目に見えていてもだ。漁業の場合、温暖化や人口減少など自分たちだけでは手に負えない要素も絡んでくる。厳しい1年になると予測されるなら、マイナス成長も予算として計上すべきで、悪いなりにどう持ちこたえるかを現実的に考えた方が、死んだ数字を追わされるよりずっと高い成果が得られる。
(連載 第4回 へ続く)
