青森の水産業が危ういということで呼ばれた。
私は東京生まれの東京育ちで、漁業を始める前は、東京海洋大学の在学中からサラリーマンとして塾の先生をしていた。30歳で福井との県境にある石川・加賀市に移住し、親方兼乗組員そして経理も事務も一人でこなす社長として、8人の乗組員を雇って大型定置網漁業を経営している。
まず、青森の漁業の数字をみてみる。
石川と青森を比較すると、石川の年間の水揚げは4万4,000トン、134億円。対して青森は6万8,000トン、355億円もある。石川も漁業をがんばっているが、青森はそれをはるかに上回る。問題なんてさほどないように思えるのだが、さらに調べてみると危うい状況が分かってきた。全体の水揚げは1993年の55万トン、750億円から下がり続け、漁獲量は8分の1に、金額は半分以下だ。
主要魚種については、ホタテはピークの4分の1、かつて大量に獲れたスルメイカやサバやサケは壊滅的な状況だ。
漁業会社の数もこの30年で6,500経営体から約3,000経営体に減り、就業者数も約1万4,000人から約7,000人と半減している。高齢化も著しく、30歳未満の若い漁師は5%しかいない。50~64歳が31%、それ以上のおじいさんが44%を占めている。
海水温も、日本海側、津軽海峡、陸奥湾、太平洋側の県内4海域すべてで、平年より2~5°C上昇しており、温暖化の影響を強く受けている。
青森の漁業の実態は、世間的な印象と違い、誰が見ても危機的な状況であることに間違いない。
実態評価は三者三様
次に、実際に関わっている人の受け止めを知るため、漁業者、漁協職員、水産行政、仲卸、漁網会社、一般市民など14人に電話でヒアリングを行った。
200以上の所見を得た中で、例えば人材については、「県内から若い人が転職して入ってくる」と言う人もいれば、「若い人がすぐ辞めてしまう」「市場や加工業の労働力不足は深刻を超えるレベル」と言う人もいた。「漁業者においては優秀な人とそうでない人のレベル差が大きい」という声もあった。魚価については、「特別に青森が安いことはない」と言う人もいれば、「量が少ない割には値段が上がらない」と言う人もいた。
業績については、「結構稼げている」「国の支援制度を活用して利益を出せるようになった」と言う人もいれば、「日本でいちばんやばいと思っている」「廃業が相次いでいる」と言う人もいた。「船によって仕事のレベル差が大きい」「地域によって課題が全然違う」という声もあった。品質管理については、「鮮度は大丈夫」「北海道より全然マシ」と言う人もいれば、「とにかく氷を使わない」「浜にもよるが魚の扱いが悪い」と言う人もいた。「品質管理の考え方に漁業者や市場によって大きなバラつきがある」という声もあった。
流通については、「大漁物の系統が強い」「冷凍や加工の受け皿があって安心」と言う人もいれば、「地元の仲買が弱い」と言う人もいた。県の施策については、「新しい取り組みはしっかりやっている」と言う人もいれば、「漁連の指導力に疑問」「県や漁連は案を出すだけで丸投げ」と言う人もいた。「必要な取り組みがさまざまありすぎて県も漁連も手が出せない。むしろ手を出さないのが正解とでも思っているのでは」という声もあった。
とにかく答えがいろいろ。よいように言う人もいれば、悪いように言う人もいる。これには私もすごく困った。課題解決の手法一つ取っても、当てはまるところとそうでないところが必ず出てくる。漁連や県もどこからどう手をつけるべきか、置かれている状況がいろいろありすぎて逆に手をこまねいているのだろう。地域や漁法、また一つひとつの経営体にもよって、現状の課題もそのレベルも混在している。それが今の青森の漁業の姿だ。
(連載 第2回 へ続く)
