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水産振興コラム
2026年10月
漁業運営ベーシック講座・青森編

第5回 ビジネスマンの基礎知識 調べ、動き、確認し修正

窪川 敏治
(有) 金城水産 代表取締役 / 水産庁・水産政策審議会 委員 / 石川県定置漁業協会 代表監事
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前回、計画の立て方について話したが、今回は計画の中での行動の手順と、管理方法について詳しく解説していく。どちらも5つの要素で構成されているので、指を折りながら解釈してほしい。

ビジネス用語ではPDCAサイクルとか、OODAループとかいうが、横文字は慣れない人が多いので、今回は、漁業運営のキホン(6)「知る・考える・決める・動く・確認する」のサイクルを回す、とした。

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計画を実行するにあたり、第一に、現状をよく調べること。現地を訪ねて、人と話したり、データを集めたりする。他地域を参考にしたり、私がここでしゃべっているように知識をもった人にアドバイスを求めるのも有効だ。第二に、集めた知見から未来を考える。この段階で答えは1つに絞る必要はない。いろいろな角度から意見を出し合えばいい。第三に、これまでの議論から計画を決め、皆が同じ方向を向くようにする。漁業はこの過程で、複数の理事会での承認を繰り返したり、やたらと時間がかかる気がする。当該の漁協や漁連が、もし、予定調和のご都合主義になっていたなら、都道府県の水産課が主導権を取ってバシッと決めてもらいたい。とにかく、ここに時間をかけすぎないことが大切だ。第四に、命が吹き込まれた計画に従い、動く。鬼十則の言葉を借りれば、忍耐強く、工夫して、努力する。第五に確認するが、これが最後ではない。第一の「知る」と同義で、やっていることが正しいかチェックし、軌道修正が必要なら第二、第三に戻る。この戻る手順は面倒くさい、だから大切である。それ以前に「確認する」から逃げる人や組織もいる。もしかして悪い結果が出てしまうことが怖いのは分かる。ただいちばん重要なのはサイクルを回すことだ。そこで躊躇(ちゅうちょ)していたらサイクルは回らない。やってうまくいかないことより、やらないことの方がずっと悪である。うまくいっていなければ修正すればよいだけのことだ。前へ前へという積極的な心掛けをもちたい。

裏側もみて生き残る

次に、漁業運営のキホン(7)管理の5要素「人・金・物・時間・場所」について解説する。これは私が東京で塾の先生になった時、その新入社員研修で習ったもので、今でもビジネスの基本として忘れないようにしている。仕事で物事を考える時、この5つを押さえておけば、抜け落ちがなくなる。ただそれだけのことなのだが、頭の中を整理する時に意外と役に立つ。

さらに要素によっては表裏がある。例えば「人」について考える時、表の課題を新規就業者の確保とすると、裏の課題は従業員の退職防止になる。「金」については、表が収入を増やすであれば、裏は支出を減らすになる。表の課題は何かと意識が向くもので、就業者フェアや研修制度、漁獲共済や積立ぷらす、といった手厚い支援策が漁業には存在する。都道府県や漁協、漁連などからの働き掛けも頻繁にある。付加価値やブランド化も収入を増やす取り組みなので表側だ。

一方、裏の課題は経営体それぞれの自助努力に委ねられる。例えば、給料や労働時間といった労働条件の見直し、心身の健康といった従業員満足度の向上、接待交際費の抑制や業務再構築による人件費の削減などがある。こういった裏の課題に対しては管理・指導する側からのアプローチはないのが当たり前だし、求めるのもおかしい。

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かつて漁業に勢いがあった頃は表側だけを相手していれば十分だったかもしれないが、いよいよ漁業も裏側までしっかりみていかないと生き残れない時代に突入した。

スマート漁業支援事業にエントリーして補助金で船に最新機器を導入する一方、事務室では年配の事務員が電卓をたたいて手書きで帳簿を付けている。何度やっても計算が合わない。こういった矛盾をなくしていかないと経営改善は進まない。

(連載 第6回 へ続く)

プロフィール

窪川 敏治(くぼかわ としはる)

窪川 敏治

1980年生まれ、漁業とは無縁な東京育ち。東京海洋大学資源管理学科卒。学生時代含め中学受験の塾講師を12年務め、2011年に石川県に移住転職。大型定置網漁業の(有)金城水産 代表取締役、水産庁・水産政策審議会 委員、石川県定置漁業協会 代表監事、石川県漁協加賀支所 総代、(株)船舶職員養成協会北陸信越 教員。水産庁・「漁業の働き方改革」実現に向けた調査事業検討委員会 委員(2018)、同・資源管理手法検討部会サワラ日本海・東シナ海系群 参考人(2023)。岩手大学(資源経済)および京都大学(資源解析)の研究協力も行う。
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