本水産振興コラム『私たちが見つめるのは100年後の農山漁村』の第3回「うみひとネット×(株)あこやひめ×たにおか農園 おみそ鯛 青とうがらし Part1—うみひとネット初のコラボ商品の立役者たち—」では、この商品開発に関わってくれた3人の女性たちのご紹介をしました。
今回は、この3人とうみひとネットがなぜコラボ商品をつくることになったのか、そのストーリーをご紹介します。
ずっとコラボを考えてきた
今、異なる立場の人や主体などが協力して新たな価値を創造するという意味の「共創」という言葉がよく使われます。異なる立場の人や主体などが協力してお互いの目的を達成する「コラボレーション(コラボ)」とは厳密には意味が異なると言われていますが、うみひとネットは今でいう「共創」の意味でコラボの必要性を意識してきたように思います。
ポロリと出てきた案
そんなうみひとネットは、毎週、企画ミーティングを積み重ねています。そのミーティングではすぐにできそうなことや、やらなければならないことだけでなく、いつかできたらいいな、というような企画(夢?)も話し合うようにしています。その中でポロリと出てきたのが、「うみひともそろそろ賛助会員同士がコラボしあってできるような商品も作ってみたいよね」という案。「それ、いいね!やってみよう!」となるのが、うみひとネットのいいところ。早速、賛同してくれそうな会員さんを洗い出しました。
シンポジウムで語り合っていたことがつながった
その中で思い起こされたのが、うみひとネットが皆さんの前で明確にコラボの可能性について発信した2019年の「うみ・ひと・くらしシンポジウム in 松山 —色々なコラボの可能性を探る!—」でした。この時のシンポジウムに、今回のうみひとコラボ商品に深く関わってくれることになる(株)あこやひめの武部月美さんとたにおか農園の谷岡真衣さんもパネリストとして参加してくれていて、「(あこやひめさんに)よかったら(商品で)一度コラボできませんかという話をした」(谷岡)、「きっと一年後ぐらいには、この場をきっかけに新たな商品が確実に生まれると思います。来年のうみ・ひと・くらしでお披露目していただけたら嬉しい」(副島)というやりとりがあったのです。
そこで武部さんと谷岡さんに打診をしたところ、二つ返事で快諾していただき、2023年4月、まずは第一歩を踏み出すことになりました。
積み重ねたミーティング
それからは、朝早くから仕事をしている武部さん親子や谷岡さんたちも眠い目をこすりながら、日常の仕事や家事を終えた夜にオンライン会議に参加して、話し合いを積み重ねました。色んな商品のアイディアが出てきましたが、その中で、無理のない範囲でできる商品化をと考え、(株)あこやひめの主力商品である、おかず味噌のシリーズ「おみそ鯛(えひめ風・焼き梅・あわせ)」を活かし、そこに谷岡さんが生産する青とうがらしを組み合わせようということで『おみそ鯛 青とうがらし』に落ち着きました。
また、2023年度『新生活様式対応型水産物消費拡大支援事業』((公社)日本水産資源保護協会)にも応募しようと、年間の製造計画や2024年2月に開催されるシーフードショー大阪に出展することなども盛り込んだ計画提案書の作成や審査のためのプレゼンテーションもがんばりました。その結果、無事に採択されることが決まりました。
うみひとネット賛助会員たちとの試食会
2023年9月には試作品のおみそ鯛 青とうがらしも出来上がり、2023年11月に、うみひとネットが毎月開催しているオンライン・ミーティングの企画として、賛助会員の皆さんとの試食会を行いました。オンライン・ミーティング当日までに参加者のところへ試食品を送り、ミーティング当日に感想や意見を述べ合う企画です。この時には、うみひとネットのメンバーは宇和島入りし、あこやひめさんの店舗から現地参加しました。
この時の試作品の評価は上々で、さすが、おいしいものや食べることが大好きなうみひとネット賛助会員の皆さんたち。白ご飯に載せるだけでなく、スティック野菜や豆腐、かまぼこに載せてもおいしい、マヨネーズとあえてパンに塗ってもおいしいのではないか。『おみそ鯛 青とうがらし』の色々な活用方法が提案されました。
外国人バイヤーの目にとまる
こうやって実際にみんなで食べてみて、この商品に自信を持った、うみひとネット。2023年度の仕上げの取り組みとして、2024年2月に開催された、シーフードショー大阪に出展しました。この時にはたくさんの学生会員も参加し、みんなでブースを盛り上げました。
シーフードショー大阪では多くの方々に、この商品に関心を寄せていただきましたが、中でも印象的だったのが、韓国や中国からのバイヤーさんたちの目にとまったこと。鯛と味噌の旨みと甘味がはじめにきて後からじんわりくる青とうがらしの辛さが、彼らの好みにマッチしたようです。まだ輸出までできる体制は整っていませんが、韓国や中国では私たちの発想にはないような使われ方がされるかもしれません。『おみそ鯛 青とうがらし』の潜在的な展開可能性を感じました。
これからも色々なコラボの可能性を探っていきたい
今回、武部さん親子や谷岡さんはもちろんのこと、うみひとネットの賛助会員や学生会員など多くの人たちと一緒に『おみそ鯛 青とうがらし』を生み出し、たくさんの手ごたえを得ました。今後も色々な形でのコラボ商品を作っていきたいと考えています。
また、コラボには商品に限らず、色々な形と可能性があります。2019年のうみひとシンポで出てきていた言葉。「同じ思いや同じ課題を抱えた人たちが出会い、つながれば大きなエネルギーを生む。」(パネリスト中村和憲氏(食文化・料理研究家/作曲家))を思い出します。うみひとネットは、これからも色々な形のコラボを探りながら、チャレンジしていきたいと思っています。それは何よりも、100年後の農山漁村を見つめるために。
(連載 第8回 へ続く)