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沿岸漁業における漁家世帯の
就業動向に関する実証的研究
—平成20年度事業報告—

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事業報告書

沿岸漁業における漁家世帯の
就業動向に関する実証的研究
—平成20年度事業報告—

要旨

近年の日本の沿岸漁業を巡る主要な問題点の一つとして、漁業者の高齢化と漁業後継者不足が必ずと言ってよいほど取り上げられます。しかしながら、そうした問題の解決に向けた従来の実態把握や方策検討の多くは新規漁業就業者の確保に重点が置かれ、必ずしも総合的な視野から把握・検討されてきたとは言い難い状況にあります。

こうした背景から、沿岸漁業の就業動向に対する国民の認識の多くも、高齢化と後継者難が進み将来展望が見えない状況に陥っている、といった悲観的かつ単調で平板なイメージが占めているようです。

しかしながら、実際の沿岸漁業では、全国の沿岸部に多様な漁業種がくまなく存在し、若年者から高齢者に至る様々な年齢階層および多くの女性が地域の漁業実態等に応じて様々な形態で就業しているという状況があり、沿岸漁業の就業動向に対する正確な理解のためには、可能な限りの実証的・具体的な実態把握と分析が求められます。

そこで当会では、全国各地の沿岸漁業における就業動向について、特に漁家世帯に焦点を当て、高齢者就業、新規就業者確保、夫婦操業、女性就業者等を含めた各地の多様な就業実態を把握し記録するとともに、そうした状況をもたらしている因果関係を世帯特性、漁業生産力、地域の漁業者集団等との関連により明らかにするため、2008年度と2009年度の2か年にわたり標記の調査研究事業を実施いたしました。

本調査研究は下表のとおり、全国各地において現地調査を行うとともに、自営漁業就業者に関する漁業センサス分析を行い、今後の見通しや政策課題の提示を含め、調査研究成果を各年度の報告書に取りまとめ刊行、公表しております。

各年度報告書概要
年度 概要(事例調査対象地区の所在道県)
2008年度
  • 調査研究の意図と視点
  • 事例調査報告10件(北海道・茨城・兵庫・岡山・福岡・長崎・大分・鹿児島)
  • 漁業センサス分析
2009年度
  • 漁家世帯の就業動向の今日的特徴点(2か年のまとめを兼ねて)
  • 事例調査報告10件(北海道・岩手・茨城・千葉・岡山・山口・高知・長崎・佐賀)
  • 漁業センサス分析

目次

  • 第I部 調査研究の意図と視点
  • 第II部 事例調査報告
    • 1. 昆布の里、北海道南茅部地区における高齢漁業者世帯の存立構造
    • 2. 松前さくら漁協地区における漁業就業の特質
    • 3. 沿岸漁業上層経営体の構成と引退過程—茨城県大津漁協の事例から—
    • 4. 茨城県那珂湊漁協地区における採鮑組合員の就業実態
    • 5. 瀬戸内海離島における後継者確保事情—兵庫県坊勢島の実情—
    • 6. カキ養殖産地における陸上作業の労働力編成の変化と高齢漁業者の存在
      —岡山県邑久町を事例として—
    • 7. 長崎県勝本町漁協地区における漁家世帯の就業動向
    • 8. 福岡県姫島地区における漁業後継者の就業実態と課題
    • 9. 大分県における漁家世帯の夫婦操業と就業構造の変化について
      —大分県臼杵市・武蔵町のタチウオ漁家を事例として—
    • 10. 劣悪な漁村生活環境と家族形成の崩壊
      —鹿児島県南さつま市秋目地域の事例から—
  • 第III部 漁業センサス分析
    • 1. 自営漁業就業者の再生産に関する人口学的検討
      —自営漁業就業者と個人経営体世帯員に関する漁業センサスの分析—

委員等

  • 座長加瀬 和俊 (東京大学社会科学研究所 教授)
  • 委員大谷 誠 ((独)水産総合研究センター中央水産研究所 研究員)
  • 島 秀典 (鹿児島大学水産学部 教授)
  • 関 いずみ (海とくらし研究所 代表)
  • 二平 章 (茨城県水産試験場浅海増殖部 部長)
  • 濱田 武士 (東京海洋大学海洋政策文化学科 准教授)
  • 廣吉 勝治 (北海道大学大学院水産科学研究院 教授)
  • 三木 奈都子 ((独)水産大学校水産流通経営学科 准教授)
  • 宮崎 隆志 (北海道大学大学院教育学研究院 教授)
  • 山内 昌和 (国立社会保障・人口問題研究所人口構造研究部 主任研究官)
  • 調査員副島 久実 ((独)水産大学校水産流通経営学科 助教)
※ 所属・役職は2008年度末現在。敬称略・順不同。

刊行

2009年

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ステータス

冊子:在庫あり

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