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水産振興コラム
20263
豊洲市場DEお魚対談
八田 大輔
(株)水産経済新聞社
第7回 特種物編(上) 輸出需要との価格競争

東京・豊洲市場で特種物業会の代表的セリ物品のカキ、ウニ、活魚を除く全品目で卸との協議を受け持っているのが特種物取引委員会だ。近年は5月の大型連休明けから季節限定で行うハモを除けば諸事情でセリを休止しているものの、時々のニーズをにらみつつ再開も視野に入れ話し合っている。「上」では取引委員会委員長を務める仲卸の石川武さん((株) 丸隆石川社長)と、卸で大都魚類 (株) 特種部上物課課長の小林正樹さん、中央魚類 (株) 生鮮部生鮮第二課課長の中村誠さんの3人で取引の今を話した。

協議通じセリ魚種決定
輸出需要との価格競争

——— セリは現状休止している状態なんですね。

石川さん 築地時代にも競っていたアマダイ、シラカワ(シロアマダイ)、マナガツオ、アオリイカは2年前までセリをしていました。キンメダイやアカムツ(ノドグロ)などもある中でこの4魚種だったのは、全体に照らして相場観が分かる象徴的な魚種だったというのが大きいです。ただ、豊洲に来て皆が市場に来る時間がズレていき、なかなか集まれず統一がとれないということでいったん休止となりました。

画像2 セリ再開を強く望んだ特種物取引委員長の石川さん

小林さん 新型コロナウイルス禍中も続けてきてはいたんですけどね。

画像3 春節の魚の動きについて語った大都魚類の小林さん

石川さん (飛まつ防止の)アクリル板を立て行っていました。しかし、輸出需要が強くなりセリ前に早出しが必要な事前注文の輸出相場を、セリの相場が下回ることが増えて「これはどうなんだ」という見直しを求める声が強くなりました。

中村さん それでも入荷が少ない時にはセリの値段が出ていたし、売れ口や相場の把握にはセリが便利なんですけどね。

画像4 セリの便利さなどを話した中央魚類の中村さん

小林さん 流通も多様化して交流サイト(SNS)などで情報があふれている中で、豊洲に全量持ち込んでセリをするというのは時代に合わなくなりつつあるかもしれません。ただ、ハモのようにセリに向いた魚もあると思うので、仲卸さんと協議をしたうえで魚種を決めていきたいですね。

石川さん 近年のセリは「利かせ」(産地にあらかじめ伝える価格の目安)が弱くなって集荷できない、注文ならあらかじめ決まった値段で買えて集めやすいと卸から聞いてはいます。けど、仲卸としてはセリの再開はぜひともお願いしたいというのが本音ですかね。

画像1 特種物取引委員会が対象とする品目で、現状で唯一のセリがあるハモ。5月の大型連休明けに開始する

春節にあふれた魚

——— 近年、魚を集めるのが難しくなっているといわれていますが実感としてどうですか。

中村さん 大シケならともかく、事前の注文ならば赤字はないですね。

小林さん 当然、他市場との価格競争があります。輸出は福岡が活発で(西の魚は)それより高い価格でないと豊洲に呼べないのが実情です。

石川さん 豊洲経由の運賃と産地にバイヤーが入って直接買って送る運賃とてんびんにかけてとなると、どうしても向こうに比べて不利になります。

小林さん アカムツなどは本当に極端で、輸出が鈍ると豊洲に来ます。今年も春節は豊洲でアカムツが増えました。「ああ海外向けには行ってないんだな」と実感しましたね。普段でも、向こうより高い値段を出せば呼べはするんですけどね。

石川さん マナガツオの場合、中華料理で1キロ以下の小サイズを好んで使っているんです。日本は1.5~2キロを使っていますが、近い値段で1キロ以下を集荷してもらおうにも手に入りません。

小林さん 輸出需要が強い今は、値が張るけれど注文なら必要分は押さえられます。お客さまのニーズに添えるのが注文のよさだとは思いますね。

第8回へつづく

プロフィール

八田 大輔(はった だいすけ)

1976年静岡生まれ、名古屋大学文学部日本史学科卒業。上京して富士通系列のシステム会社でシステムエンジニアとして3年勤務した。退社後は日本ジャーナリスト専門学校スポーツマスコミ科に学び、卒業間近の2006年1月に(株)水産経済新聞社の編集記者に転じた。16年4月から報道部部長代理、23年10月から編集局長。中心的な取材分野は、政治・行政、卸売市場を中心とした流通全般、中食産業全般、JF共済など。専門商材はウナギ、干物類。そのほかの担当エリアとして福島県、千葉・勝浦、静岡県東部/西部。