東京・豊洲市場仲卸の特種物業会ウニ取引委員長の伊藤晃彦さん((株)maruteru 美濃桂)、豊洲卸の中央魚類(株) 生鮮部生鮮四課の木村有希課長の対談の後半は、商材のウニに迫った。
対談した仲卸の伊藤さん(左)と卸の木村さん(右)
天然より高評価の養殖
ミョウバンめぐる勘違い
——— ウニで高い価値があるのは、エゾバフンウニ(赤ウニ)とキタムラサキウニ(白ウニ)ぐらいですか。
木村さん 西日本のアカウニも高価ですよ。ただ、(磯焼け防止の駆逐対象である)ムラサキウニやガンガゼは評価が低いですね。
伊藤さん 横暴だし、何でも食べてしまうといいますね。しかも、食用にする中身(生殖腺)がほとんどない。
木村さん トゲが長くて行動範囲が広いので、アカウニが動く間に、周りのものを全部食べてしまう。もちろん今は価値が高いとされる北海道のウニも半世紀以上前はコンブの害虫から始まってはいますけれど。
高評価されるウニは数限られている。写真は市場内で「白ウニ」と呼ばれるキタムラサキウニ
——— エゾバフンウニとキタムラサキウニは、どんな違いがあるのですか。
伊藤さん エゾバフンウニは濃厚で甘みが強く、キタムラサキウニは香りが高く、エゾバフンウニよりすっきりしている感じかな。
木村さん どちらが高いというのはなくて、お客さんの好み、みたいなところはあると思います。
——— ウニ加工によく食品添加物のミョウバンが使われていますよね。あれはどうして使うんですか。使い過ぎると苦みが出るとか書かれているのを見ますが。
伊藤さん 崩れやすくて溶けやすいウニをコーティングすることで形を整えやすくなるし、輸送の間に溶けるリスクを減らせる。
木村さん 品質保持の効果もありますしね。
伊藤さん 実際、ミョウバン自体は無味無臭で、言われている苦みはミョウバンの味ではないんですよ。
木村さん 皆勘違いしていますよね。ミョウバンに長く漬け過ぎるとウニ自体がもつ甘みを抜いてしまうんですよ。えぐみだけが残るので、そんな誤解が広がったんでしょうね。
——— 塩水加工というのもあります。
伊藤さん 無添加を求めるお客さんに応えるための処理ですね。密封容器入りで、一度開けると劣化は早いですよ。
木村さん ミョウバン不使用なので当然日持ちしません。
伊藤さん 現場では用途に合わせて工夫しながら使い分けていると思います。寿司には使えないが、付け合わせや先付けなどには塩水加工を利用したりだとかですね。
味安定で見た目均一
——— 最近の養殖物はどの程度の評価なのでしょうか。
木村さん 養殖物の値段は天然物より高いくらいですね。
伊藤さん 味が安定しているのがいちばん強いかな。見た目の色も天然と違って均一だし。
木村さん 餌をしっかりあげているので変な色が出てくることが少ない。今は入荷の10%くらいだが、今後増えてはいくと思う。
伊藤さん お客さまからも入荷時期の問い合わせはよく寄せられる。北海道が禁漁となる9~10月の端境期の穴を埋めてくれるだけでなく、技術の進歩で確かな評価を確立しています。
——— ウニはまだまだ盛り上がりそうですね。
伊藤さん 量販店・スーパーは単価の問題で並ばなくなっているけれど、需要は強いですしね。国内は飲食筋ですけど、海外は一般も食べているのではという勢いで買われている感触があります。
木村さん 国内需要向けの下値より、海外需要向けの下値は高く、二重価格を感じることがあります。しばらく廃れることはまずないでしょうね。
ここ最近の養殖物の進化について語った
(第5回へつづく)
プロフィール
八田 大輔(はった だいすけ)
1976年静岡生まれ、名古屋大学文学部日本史学科卒業。上京して富士通系列のシステム会社でシステムエンジニアとして3年勤務した。退社後は日本ジャーナリスト専門学校スポーツマスコミ科に学び、卒業間近の2006年1月に(株)水産経済新聞社の編集記者に転じた。16年4月から報道部部長代理、23年10月から編集局長。中心的な取材分野は、政治・行政、卸売市場を中心とした流通全般、中食産業全般、JF共済など。専門商材はウナギ、干物類。そのほかの担当エリアとして福島県、千葉・勝浦、静岡県東部/西部。
