東京・豊洲市場の初セリで近年、一番マグロだけでなくウニもしばしば話題に上るようになった。国内の飲食筋はもちろん、海外からの日本のウニに対する期待は高まるばかりで、近年の取引額は年々膨らんでいる。今回の「豊洲市場DEお魚対談」では、特種物業会所属の仲卸で、ウニ取引委員会委員長を務める伊藤晃彦さん((株)maruteru 美濃桂)と、卸で中央魚類(株) 生鮮部の木村有希生鮮四課課長の、セリ場入りが “ほぼ同期” という2人が、豊洲市場を代表する商材に成長したウニで語り合った。「上」は主に場内取引について。
「片手間じゃできない商材」と話すウニ取引委員長の伊藤さん
技術共有で品質が高レベルで「均一化されてきた」と語った中央魚類生鮮四課長の木村さん
高額化で増える参加者
見極めるのは色と乾き
——— 弁当箱(木箱)や塩水ウニ、ビンウニなど形態はさまざまありますが、2人が働くセリ場では何を扱っていますか。
木村さん 生ウニセリ売場なので生ウニ中心です。アルコールなどで味を調えた粒ウニや練りウニまでいくと、卸の組織では加工品課とか、冷凍課などの扱いになってきますね。
伊藤さん 実際にセリをするのは100グラム以上のウニという規定になっているんですよ。塩水ウニやビンウニは100グラム未満なので、セリとは別に相対での販売になっていますね。
木村さん 重量では分かりませんけど、単純に個数でいえば6~7割がセリ対象かなと思います。
——— 午前5時からのセリの賑わいはどうですか。
伊藤さん 全部合わせて100人くらいはいるんじゃないか。
木村さん 近年、セリへの参加人数は増えています。店ごとのウニ専門で担当する人が増えたイメージがありますね。
伊藤さん ウニの人気はもちろん、片手間じゃできないくらい高価な商材になったのが大きい。経営的にも失敗できない。しっかり時間をかけて下付け(品定め)して買わないとね。何かあった場合の損失がでかいし、売り値も大きい。
マグロに次ぐ花形といえる存在になったウニ
資源の安定も寄与
——— 近年、相場はかなり上がっていると聞きます。
伊藤さん ここ数年で数倍になった。強い需要のほか、生産技術の共有が進んで品質の平均値が上がってきている。
木村さん 主産地の北海道での赤潮が何年か前に話題にはなったが、資源を大きく減らす商材が多い中で、資源的にかなり安定しているというのがあると思いますよ。根室などではカニ屋がそれだけで商売が立ち行かなくなってウニ屋にくら替えする、というのが目立って増えた時期もありました。
——— ウニの評価にはどこをみたらよいですか。また、いっぱしの担当者になるにはどれくらい必要ですか。
伊藤さん いちばん分かりやすいのは色と乾き。粒の形が崩れていないか、色合いを含めて均等に揃っているのか。分かりやすく言えばおいしそうと思える色目の方が値段が出ます。
木村さん 加工屋さんごとの差はありますが、昔ほど大きくなく、均一化されてきています。ウニの作り方というか、水洗いやミョウバンへの漬け方などが共有化され、新規の小規模荷主で割と最初からうまく作る人が増えてきています。
伊藤さん 担当者として一人前になるには本人の努力もあるけど、メイン産地の北海道だけみても、季節ごとの周期があるので最低1年は勉強しないと駄目でしょうね。
——— 輸出向けの買いは休市明けに盛んになると聞きます。
木村さん 休市明けは自然と、加工した2日分の商品が届くのでまとまる部分が多い事情がもともとあります。
伊藤さん 国内需要も休市明けは自然と増える。そこを目がけて集荷する流れもある。ただ、ほかの日も少ないわけではないですよ。獲れ高の都合もあるし。
(第4回へつづく)
プロフィール
八田 大輔(はった だいすけ)
1976年静岡生まれ、名古屋大学文学部日本史学科卒業。上京して富士通系列のシステム会社でシステムエンジニアとして3年勤務した。退社後は日本ジャーナリスト専門学校スポーツマスコミ科に学び、卒業間近の2006年1月に(株)水産経済新聞社の編集記者に転じた。16年4月から報道部部長代理、23年10月から編集局長。中心的な取材分野は、政治・行政、卸売市場を中心とした流通全般、中食産業全般、JF共済など。専門商材はウナギ、干物類。そのほかの担当エリアとして福島県、千葉・勝浦、静岡県東部/西部。
