水産振興ONLINE
水産振興コラム
202511
豊洲市場DEお魚対談
八田 大輔
(株)水産経済新聞社
第2回 カキ編(下) バーが消費拡大に寄与

東京・豊洲市場の仲卸で特種物業会カキ取引委員長の𠮷橋善伸さん((株)𠮷善)、卸が築地魚市場(株) 鮮魚三課課長の川越洋亮さんと東都水産(株) 特種課副主任の岡田健伸さんの対談の後半は、消費と生産で議論した。

画像3 対談に参加した仲卸の𠮷橋さん(中央)と卸の川越さん(右)、岡田さん(左)

——— 最近のカキの消費動向はどう感じますか?

𠮷橋さん オイスターバーでの殻付きカキの生食は増えてはいるよな。

岡田さん シングルシード方式の(一年中成熟しない)三倍体カキ養殖などの普及で一年中切らさないようになりました。

𠮷橋さん カキフライやカキ鍋は年配の人が中心。ただ、和食で小サイズならカキの茶わん蒸しやカキ飯、大きいサイズはシンプルに焼いて食べるようになってきている。

川越さん レンジで殻付きの蒸し焼きにできる売り方は増えましたね。

岡田さん 先日オイスターバーに行ったが、若い世代だけでなく、世代的には上から下までだった。おしゃれ感覚ですかね。インスタ映えとか。

𠮷橋さん あれクリーミーでおいしいとかいうけれど、僕らからするとちょっと信じられない。

川越さん 卵持ちはむきカキだと評価が低いが、殻付きの生食で食べれば開けた時に身が縮まないし、卵のどろっとした食感がよいと受けているみたいですね。クリーミーで濃厚とうたっているようだけれど、なぜ卵持ちがこんなに売れるのか生産者は不思議がっている。

𠮷橋さん カキは「海のミルク」というのを勘違いしている感がある。

川越さん 栄養価が高いので「海のミルク」と呼んでいたのに、えぐみの残る卵と一緒に食べる独特の食感をクリーミーで濃厚、ってのはなあ。

岡田さん オイスターバーはその路線ですごく推している感じでした。

𠮷橋さん サケを扱っている人ほど敬遠していた生食のノルウェーサーモン好きな人がこれだけ増えたように、生ガキも同様の道をたどっていくのかもしれない。本当においしいカキを食べた経験がある人なら、感想も違うと思うんだけどね。

画像2 オイスターバーを通じて広がる消費でそれぞれ見解を語った

ホタテの代替で拡大

——— 温暖化でカキ養殖の適地って変わっていく可能性はあるんですか?

川越さん カキはもともと暑さに比較的強く、問題になっているへい死は複数要因が絡んでいる感じですからね。生産の半分以上は今も変わらず広島。

𠮷橋さん さらに西にある長崎・諫早湾でも生産していて、すごくよいカキを豊洲に出してくる。

川越さん 海水温が上がっている陸奥湾でカキ養殖が始まっているが、ホタテ養殖ができなくなったので代わりにカキ養殖を、っていうのが大きいんじゃないですかね。

𠮷橋さん 食イベントなんかでカキを扱うと、本当に人気はあると感じるよ。先日、あるイベントで鉄板で焼いたのを網で焼き直した「焼きガキ」を売ったんだけど一日2,400個出た。そのイベントに出たブースでいちばん売れたんじゃないかな。

川越さん 需要はありますよ。ただ、生産面が気掛かりなんですよね。

画像1 さまざまな用途でむきカキを利用する場面は増えてきている

生ガキ輸入増加確実

——— 海外のカキの輸入は増えてくるんですか?

𠮷橋さん 生ガキはこれからもどんどん海外からきますよ。オイスターバーで年中切らしちゃいけないから。ただ、今後も加熱はほぼほぼ100%国産じゃないかなと。

川越さん 東日本大震災などで大減産になった時に、一時的に韓国産が生鮮カキとして当時の築地市場に並んだことがありましたけど、あまりパッとせず続かなかった。今でも続けて入ってきてはいるようだけど、加工の業務用として小サイズが輸入されているくらいで、豊洲には並ばないですね。

第3回へつづく

プロフィール

八田 大輔(はった だいすけ)

1976年静岡生まれ、名古屋大学文学部日本史学科卒業。上京して富士通系列のシステム会社でシステムエンジニアとして3年勤務した。退社後は日本ジャーナリスト専門学校スポーツマスコミ科に学び、卒業間近の2006年1月に(株)水産経済新聞社の編集記者に転じた。16年4月から報道部部長代理、23年10月から編集局長。中心的な取材分野は、政治・行政、卸売市場を中心とした流通全般、中食産業全般、JF共済など。専門商材はウナギ、干物類。そのほかの担当エリアとして福島県、千葉・勝浦、静岡県東部/西部。