今回は「豊洲市場における仲卸業者へのアンケート調査報告書」の中から、「販売金額に占める注文予約の割合」「店頭渡しと配送の割合」に注目する。豊洲市場移転の前後で、仕入れ・販売の実態はどう変化したのか。日々の安定取引につながるとされる事前注文予約取引の増減と、それにより確保した商品を顧客に対して実際に渡す際の手段の変化をみていく。
予約分受け渡しは配送増
年間の販売金額に占める事前の注文予約の割合(グラフ1)は、10%未満から60%台までは移転前後の増減がまちまちだった。ただ、70%台~90%以上とした業者数は、いずれも移転後で多かった。平均割合にすると、移転前が56%、移転後は59%と、3ポイントの微増となっている。

仲卸業務を行ううえで、安定取引につながる注文予約取引が平均6割を占める状況で、移転を経てその傾向が一層強まってきていることが分かる。
また、注文予約の割合が「増加した」業者は、「減少した」「変わらない」と回答した業者に比べて、店売り終了時刻が31分以上「早くなった」と回答することが多い傾向にあった。前注文の割合が増加したことが、前回も紹介した店売り終了時刻を早める一因となっている可能性が高い。
来場せずに電話などによる前注文で済ませるケースが増加したことは、買い回り中に予定にない商品を買う「ついで買い」が生じる余地を減らすことにつながる。年商額が低下をした一つの背景にあるとも考えられる。

一方、注文予約分の商品を顧客に渡す際、店頭渡しの販売金額に占める割合を20%未満とした業者の割合は、移転前の32%から移転後は44%へと12ポイント増えた(グラフ2)。豊洲に来てからは事前注文予約分の商品の顧客受け渡しで、配送の割合が増加したことがうかがえる。
監修者からひと言
目指す姿と戦略問われる
中原尚知・東京海洋大教授
世界中から集まってきた水産物が個々の小売店や飲食店などに分荷されていく豊洲市場として、一般には買出人が仲卸店舗を訪れ魚介類を前に品定めや交渉をしている絵が浮かぶ。しかし、移転前から販売金額の5割以上が事前注文分となっている仲卸業者が半数以上であり、移転後にはその傾向がやや強くなっていた。さらに、その事前注文分については、店頭渡しが減少していた。仲卸業者の観点から、事前注文と配送で成り立つ、豊洲市場を訪れない買出人の姿を垣間見ることができたといえる。
従来から事前注文の割合は一定程度あるも、卸売市場を訪れての買い回りと組み合わせる買出人が多かったと考えられるが、豊洲移転も影響して、事前注文・配送の比重が増したのではないか。いずれにせよ、移転に伴い配送サービスへのニーズは高まったといってよいだろう。顧客店舗への配送方法、あるいは場内での配送方法の充実や最適化を図る必要があると考えられる。
豊洲市場として、仲卸業者や市場の物流サービス企業を中心とした配送機能の強化と来場者数増加への取り組み、強みとなっている生鮮魚介類の取り扱いへの注力と現状は市場外流通の多い水産物の取り扱い強化、といった各種方策のバランスを図ることが課題となっている。それは豊洲市場の将来的なあり方像の明示と実現に向けた戦略が改めて問われていることを示す。豊洲市場が有する資源をフル活用した姿に期待したい。
(第7回へつづく)