今回から「豊洲市場における買出人の仕入れ実態調査報告書」の中から主要なデータを紹介する。アンケートの有効回答806部のうち、回答者の業態で最多件数は寿司屋(43%)、次いで寿司屋以外の飲食店(22%)、チェーン展開のない鮮魚専門小売店(16%)の順番で続いた。また、チェーン展開のある鮮魚専門小売店9社、総合スーパー6社、食品スーパー20社から回答を得ている。仕入れ先と業態の関係、仕入れ時に重視している点に注目した。
鮮度・品質・安全を重視
水産物の仕入れ先の割合と業態の関係(表1)をみると、卸業者が集荷して仲卸業者が分荷・販売する、伝統的な卸売市場の基本的な仕組みの通り、全体の約7割が仲卸業者から仕入れていた。
豊洲市場(卸業者)から仕入れる割合の高いのは、「豊洲以外の卸売市場内業者」(73%)、「百貨店」(64%)、「チェーン展開のある鮮魚専門小売店」(58%)、「卸問屋(商社含む)」(51%)。豊洲市場(仲卸業者)から仕入れる割合が高いのは、「寿司屋」(79%)、「寿司屋以外の飲食店」(77%)、「旅館・ホテル」(75%)、「持ち帰り・宅配専門店」(75%)だった。卸業者からの仕入れも、「チェーン展開ある鮮魚専門小売店」など一部除き、ほとんどが帳簿上では仲卸業者を経由するよう指定していて、卸売市場の基本取引の流れが今も主流であることが分かる。
卸売市場以外の業者から仕入れる割合が高いのは「総合スーパー」(43%)、「卸問屋(商社含む)」(21%)、「食品製造業者」(21%)だった。これらの買出人は、産直取引のような別ルートを確立し、併用をしていることがうかがわれる結果となった。
一方、仕入れ時に重視する点を例示し「とても重視する」から「全く重視しない」の5段階で評価して点数付けをした。
4点台後半だったのが「水産物の鮮度」(4.87点)、「水産物の品質」(4.86点)、「水産物の安全性(HACCPなど)」(4.51点)。また、「水産物の品揃え」や「水産物の迅速な確保」、「水産物の価格の安さ」、「仕入れコストの節約」についても4点台前半と評価が高かった(グラフ2)。
逆に「加工・パッケージング」、「水産物のエコラベル」、「配送サービス」、「水産物のトレーサビリティ」などは、点数的に伸びを欠いた。
監修者からひと言
三つの強みアピールを
婁小波・東京海洋大副学長
本調査票の設計当初は、市場移転を契機に豊洲市場から仕入れを止めた買出人や、そもそも豊洲市場(築地市場)での仕入れを行わなかった水産物需要家の仕入れ構造も把握したかったが、残念ながら今回はそうした業者にアプローチできなかった。今後の課題の一つである。
ご回答いただいた皆さまは豊洲市場を仕入れ先としているので、この結果は極めて順当であるといえる。ただ、予想よりも率が低かったのは、仲卸帳合も含めた「豊洲市場の卸売業者からの直接仕入れ」(18%)と、大田市場などの「豊洲市場以外の都内卸売市場」(4%)であった。特に懸念されていた大田市場へのシフトはあまりみられなかった。規制緩和が進んだ割には、業態の垣根を超えたビジネスの展開は低調のようである。
また、水産物の「鮮度・品質・安全性」の高さが、豊洲市場のもつ「三つの強み」になっているので、その維持・強化と積極的なアピールが活性化策の一つとなりうる。
(第3回へつづく)