連載・アンケートにみる「豊洲市場の現在地」で紹介してきた、一般社団法人豊洲市場協会(伊藤裕康会長)と一般財団法人東京水産振興会(渥美雅也会長)による3つの共同調査アンケート。市場関係者からの反応の「下」では、1500以上の場内事業者が所属する場内最大の業界団体・豊洲市場協会のトップを長年務め、今回のアンケートの発案者でもある伊藤会長を取り上げる。開場から丸4年が経った今の豊洲市場についての思いとともに語った。
改正法施行は大きな変化
開場後の豊洲市場で、買出人の皆さまが実際にどんな気持ち、どんな状況でいらっしゃるのか、一方で場内で事業を営まれている仲卸の皆さまが何を感じていらっしゃるかについてを知るためのアンケートをしたいと私から提案したところ、東京水産振興会の渥美会長ほかの皆さまにしっかりと受け止めていただいた。
婁小波東京海洋大学副学長をはじめとする3人の先生方には企画・実施・取りまとめまで骨を折っていただき、心から感謝の気持ちでいっぱいだ。また、婁副学長が「取り掛かる前は大変な仕事と思っていた。しかし、意外に協力してくれスムーズに調査を終えられた」と振り返っておられたのを聞き、アンケートにご協力いただいた皆さまのお心遣いにもしみじみと感じ入っている。
原点改めて聞きたい
さまざまな角度から取りまとめ、それをご紹介いただいた今回の連載に目を通すと、豊洲市場の現在の状態的にはわれわれが想像していた通りの内容が大半だと改めて感じた。
一方で、今回の連載を通じて婁副学長ほかの先生方の感想やご意見を読ませていただいたことで、先生方と再度面会して、報告書の集計の前段階でどんな傾向や指摘があったのかの原点を聞いてみたいと思ったところだ。調査の原点に触れれば、真実の言葉や声がつかめるのではないかと思った。
現時点(インタビュー時は9月21日)では、私自身の体調や事務局の体制変更の問題などがあって、協会としての検討作業はいったん休止している。ただ、せっかく大掛かりに取り組んでいただいたので調査の結果を市場の改善に生かしていくための具体的な動きにつなげていきたい。
買出人の皆さまが来場しやすく、仕入れがしやすい市場でなければならない。どのような問題があるのか。駐車場なのか、物流動線なのか、業者の対応が不足しているのか。アンケートを通じた声を真摯に受け止め、市場に取り入れていきたい。
2018年10月の開場から4年を迎える今日まで、改正卸売市場法の施行(20年6月)という大きな変化があった。私自身は、市場に対する新時代の幕開けともいえる大きな変化だという認識。国による認可制が認定制に変わった。すなわち、市場を自発的に運営したいという開設者の意向を農林水産省が認めるという形になった。
今までは国が市場を置く場所を決め、市場の運営の仕方まで事細かに指定し、さまざまな規制がなされてきた。それがガラッと変わって、市場を運営する人間が自発的・自立的に、自分たちで立ち上げた市場を運営するという形になった。豊洲市場をはじめとする現状の市場業界では、そうした考えの浸透が不徹底であると感じている。
豊洲市場として何を目指し、どういう市場を目指していくのかについて、自分たちが自覚し、自分たちの思いを定めていくことが重要になっている。その過程において今回のアンケート結果を十二分に生かし、それぞれの取り組みを前へと進めたい。
(19年10月撮影)
(第13回へつづく)