連載・アンケートにみる「豊洲市場の現在地」ではこれまで、一般社団法人豊洲市場協会(伊藤裕康会長)と一般財団法人東京水産振興会(渥美雅也会長)が共同調査した3つのアンケート(買出人・水産仲卸業者・一般来場者)の結果を順次、紹介してきた。初めてデータ化された“生の意見”を、市場関係者はどう受け止め、どう動き始めたのか。「上」「下」の2回に分割して紹介する。「上」では市場の開設者である東京都の大谷俊也場長が語った。
今秋にオフピークプラン
アンケートを高く評価した大谷場長
市場開場から来月で丸4年になる。商品の品質や食の安全・安心、鮮度保持などで評価する声がある一方、駐車場不足や市場アクセス、場内における荷物の散乱・はみ出し、ターレーなどの小型車両との接触事故といった、さまざまな課題を指摘する意見を業界関係者の皆さまから聞いてきた。われわれ開設者が見聞きしてきた内容がアンケートで補強され、可視化されたのは大きい。
場内で活動する事業者の皆さまだけでも1500以上ある中で、多様な意見が幅広く集まるだけでも貴重だ。特に仲卸業者へのアンケートの回収率は3割と、この種のアンケートでは高い部類だった。アンケートの取り方がうまかったのだと思う。仲卸の全体意見を確認することができたのはありがたかった。
結果を受けて最優先に対処しなければいけないと感じた課題は、買出人の来場増だ。駐車場が少ない、駐車料金が高いという声に真摯に向き合わねばならない。
買出人駐車場の管理運営は一般社団法人6街区物流施設管理協議会(6街区協議会)が行っているが、買出人の来場車両を増やす新たな取り組みとして今年10月中に朝9時からフリーの買出人用に4階の小口買出人駐車場を安価で開放する「オフピークプラン」を実施する予定と聞いている。
これは一例ではあるが、駐車場のやりくりを工夫して全体コストを下げる取り組みをして駐車料金に反映し、新たな買出人の方々が少しでも多く来ていただける環境づくりを前進させていくきっかけになればと期待している。
買い出しされる“お客さま”あっての豊洲市場だと思うので、利用者の求める声を市場の改善に反映するためにも今回得られた結果を役立てていきたい。
(写真は1階部分)
売場入場は安全前提
一方、2019年の一般来場者アンケートでは観光全般や初回来訪の買い物の評価が低めなのが読み取ることができた。都ではその後に少しずつ展示物の充実を図り、マグロのセリ時間外に来ても二次元コードを読み取ればスマートフォンでのセリ動画が見られる、といった仕掛けを増やしている。まだまだブラッシュアップは必要と認識しているが、一般来場者が豊洲市場を理解し、満足して帰っていただけるようにしたい。
一般来場者が仲卸売場に入場して買い物したいというニーズは、業務用施設で万人を受け入れられる“しつらえ”になっていないので、すぐの実現はご容赦いただきたい。
ただ、水産仲卸で組織する東京魚市場卸協同組合(東卸)が、区民限定かつ人数制限もあるが、「水産仲卸売場体験会」イベントを開くなど、一般来場者も水産仲卸売場に入れる機会を設けている。その安全面確保の意味も兼ねてだが、東卸が独自に通路への荷物のはみ出し是正指導を行っているのはありがたい。一般来場者が売場に入っても安全に買い物できる体制が整えば、期間を限定して入場いただく機会を設けるのは都として検討の余地ありと考えている。
いずれにせよ、事故が一度でも起きると、それまで積み上げてきたものが台なしになりかねない。仲卸の皆さまが切望されている環境を実現するためには、場内ルールにのっとった商売を皆にしていただくことが早道だと考えている。
(第12回へつづく)