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水産振興コラム
20246
日本の浜を元気に! - フィッシャーマン・ジャパンの挑戦

第3回 対談(その3)—フィッシャーマン・ジャパンの誕生—

阿部 勝太
一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン代表理事

長谷川 琢也
一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン Co-Founder

津田 祐樹
株式会社フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング 代表取締役社長

聞き手 長谷 成人
(一財)東京水産振興会理事 / 海洋水産技術協議会代表・議長

フィッシャーマン・ジャパンは宮城県石巻市を拠点として若手漁師を中心に活動する団体で、次世代へと続く未来の水産業の形を提案すべく、人材育成や水産物の流通改善、海の環境保全などさまざまなプロジェクトを手掛けています。(一財)東京水産振興会では以前にウェブサイト『漁村の活動応援サイト』の活動紹介 Vol.61で活動の一部を紹介しましたが、2023年始動の「ブルーファンド」など、さらなる活動紹介のため同年11月にリーダーの方々との対談を実施し、その内容を皮切りとして新たな連載を開始しました。フィッシャーマン・ジャパンが理念に掲げる“新3K” =「かっこよくて」、「稼げて」、「革新的」な水産業が全国に拡がることを願い、ぜひ多くの方々にお読みいただければと思います。

フィッシャーマンジャパン・ブルーファンドについて

長谷:対談の最後に、フィッシャーマン・ジャパンが新たに取り組みを始めたブルーファンドについて、どんな目的で始めたのかなど、津田さんから紹介していただけますか。

津田:対談の最初にサケの話が出ましたが、近年ではサケだけではなく、いろいろな魚が獲れなくなってきているし、魚体も小型化しています。私も元々魚屋なのでそういう変化を肌で感じます。水揚げが減っているから仕入れ価格も上がっているのですが、一方で飲食店に卸す価格は常に一定です。飲食店では飲み放題3,000円、4,000円という価格帯がこの10年、20年変わらないので、お店に卸している魚屋は儲けが出ずらいなと、ずっと感じてきました。

フィッシャーマン・ジャパンを立ち上げて最初の10年は、とにかく地域の水産業をどうにかしたいと奮闘してきたんですけど、改めて10年たって見回した時に、今やらなきゃいけないことは漁業、水産業そのものだけではなく、海洋汚染や乱獲の防止など、土台となる海洋環境の保全ではないかと思うようになりました。

漁業や水産業って、海洋環境という大きなプラットフォームに乗っている1つのコンテンツで、これまでの10年間はそのコンテンツをどうにかしたいと活動してきたんですけど、今はその土台自体が危機的な状態にあるので何とかしたい。土台である海洋環境が良くなれば、自然とサケも戻ってくるかもしれないし、儲けにつながっていくかもしれない。

では、どのようにやるかという話ですが、そもそも海は公共物であり、海洋環境保全は国や行政の仕事だと思いますので、民間が進めていくためには、どこでそれらをマネタイズしていいのかよく分からない感じでした。仮にうちがとても儲かっていて余剰金がたくさんあり、慈善事業として海洋環境保全にお金を投下できればいいんですけど、そうではないので、何か新しい仕組み、国や行政の補助金を当てにしない形で資金を回せるような仕組みができないかと、ずっと考えていました。

サステナビリティーと言った時に、海洋環境の持続性だけでなく、その保全活動自体の持続性も大切で、そうすると単に寄付を集めるだけの方法では限界があります。ビジネスの仕組みで海洋環境を良くしていくにはどうしたら良いのか。

繰り返しになりますが、大前提としてビジネスであることが重要です。どんなにいい事業でも、それが一方的な寄付でやるとすれば続きません。お金の出し手の余裕がなくなると、もうそれで終わってしまう。やはりそれ自体で完結するビジネスであるというのは重要で、しかも短期間で成果が出るものではないので、長期に渡って投資が続くような仕組みが必要です。

それでここ数年、資金調達とかよい仕組みがないか調べてきたんですが、なかなか良い方策が見つからなくて。でも、考えてきたことは実現させたいと、見切り発車的でしたけど外部に発信してみたのです。

その結果、2023年にパートナー企業と投資ファンド「フィッシャーマンジャパン・ブルーファンド」を設立することができ、きちんとビジネスをしている企業を審査して、投資先企業2社の選定に至りました。投資先企業は、海洋プラスチックを回収してそれを原料に製品化している株式会社REMARE(リマーレ)さんと、食害魚などの未利用魚を使って食品加工をしている株式会社ベンナーズさんです。

まずリマーレさんの事業ですが、海洋プラスチックを回収して製品化をすればするほど物理的に海からプラスチックごみが減っていきます。回収したプラスチック素材はアップサイクル的に製品化され、通常商品よりも高く、アパレルブランドなどがあえて自社のブランディングの一環として店舗什器として採用しています。リマーレさんが言われていたのは、海にあった海洋ごみを陸上空間に貯蔵するという考え方です。目に見える形できちんと価値を出して、商品がどんどん使われれば使われるほど海のごみは無くなっていく。目に見えるということがとても重要で、多くの人に環境意識が芽生えて、ごみのポイ捨てをやめようぜ、という動きに繋がっていくことを目指されている。彼らは最終的に、海から原料であるごみが無くなり目的を達成したので会社は解散しました、というゴールを見据えています。本当に海からプラスチックごみが無くなったら、おそらく彼らは次の社会課題に取り組んでいくでしょう。

次にベンナーズさんですが、アイゴやイスズミなど各地で駆除の対象となっている磯魚を買い取って、商品開発をされています。これらの魚は磯焼けの原因生物とされていて、漁師さんがわざわざ船を出して、人件費や燃料費を費やして獲ってきます。そして苦労して獲っても魚として評価が低く値が付きづらく、漁師さんたちの持ち出しになっています。その魚に価値が付き、今より高値で売れるとなれば、漁師さんたちにもメリットがあります。ベンナーズさんはこれまで食害魚とされ、価値の低かった魚を美味しく食べられるように味付けなどを工夫して、販売されています。

長谷川:まさにソーシャルベンチャーだよね。

津田:こうした仕組みでビジネスが進むことで、海洋環境も良くなっていく。そういう世界をつくりたかったというのが一番ですね。現在もいろいろな問い合わせが来ています。けれども、寄付という仕組みではありません。

われわれはあくまでもビジネスとして地域を良くする、海洋環境を良くするということを目指しています。ですから、少し時間はかかりますけど、こういった取り組みを続けていけば、いつかサケも戻ってくるんじゃないかなとか、そんなことも思っています。

長谷:ブルーファンドの狙い、そこに込められた思いについてお話しいただきました。

それでは皆さん、ありがとうございました。

この対談記事を皮切りにフィッシャーマン・ジャパンの活動やブルーファンドで支援する各取り組みについてより詳しくご紹介していきたいと思っていますので、これからの連載記事もよろしくお願いします。

第4回に続く

プロフィール

阿部 勝太(あべ しょうた)

一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン代表理事
宮城県石巻市・十三浜のワカメ漁師で、東日本大震災を機に同じ浜の漁師仲間5世帯で漁業生産組合「浜人(はまんと)」を立ち上げる。その後旧態依然とした水産業の仕組みに疑問を持つ若手漁師や水産業者らに声をかけフィッシャーマン・ジャパンの設立し代表理事の就任。
水産業の仕組み改革、販路拡大、教育、海洋環境保全に取り組むなど、日本の水産業をリードし、国内外で高く評価されている。

長谷川 琢也(はせがわ たくや)

ヤフー株式会社 SR推進統括本部 SDGsメディア「Yahoo! JAPAN SDGs」編集長
一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン Co-Founder
1977年3月11日生まれ。自分の誕生日に東日本大震災が起こったことを機に石巻に移住。ヤフー石巻復興ベースを立ち上げたのち「復興デパートメント(現エールマーケット)」を立ち上げ、地域の農作物や海産物、伝統工芸品をネットで販売。漁業の革新を目指し、フィッシャーマン・ジャパンを共同設立し、漁業活性化に貢献。
2021年には脱炭素事業推進プロジェクトと「Yahoo! JAPAN SDGs」の編集長を務めるなど、地域の持続可能な発展に尽力している。

津田 祐樹(つだ ゆうき)

株式会社フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング 代表取締役社長
宮城県石巻市出身のグロービス経営大学院卒業生。石巻魚市場の仲買を経て、東日本大震災の被害を受けて2014年にフィッシャーマン・ジャパンに参画。2016年には販売部門を株式会社フィッシャーマン・ジャパン・マーケティングとして分社化し、代表に就任。国内外の販路拡大、飲食事業、コンサルティング、政策提言、海洋環境保全活動を推進し、日本の水産業の未来を切り開く。

長谷 成人(はせ しげと)

長谷 成人 (一財)東京水産振興会理事

1957年生まれ。1981年北大水産卒後水産庁入庁。資源管理推進室長、漁業保険管理官、沿岸沖合課長、漁業調整課長、資源管理部審議官、増殖推進部長、次長等を経て2017年長官。2019年退職。この間ロシア、中国、韓国等との漁業交渉で政府代表。INPFC、NPAFC(カナダ)、宮崎県庁等出向。
現在 (一財)東京水産振興会理事、海洋水産技術協議会代表・議長