これまでうみひとネットのコラムでは、浜で輝く人たちをたくさん紹介してきました。
今回は、ちょっと視点を変えて、多様な切り口から水産業と社会を結ぶ取り組みを行う人たちを、紹介したいと思います。水産業に直接従事しない生活者と、水産業との接点は、意外なところにあったりします。それは、私たちの「日常」や「興味」が入り口になることも。
「サイエンス」でつなぐ —— 博物倶楽部のサイエンスワークショップ
まず紹介したいのは、首都圏近郊の有志で構成されるサイエンスボランティアサークル「博物倶楽部」です。博物館やイベントでのサイエンスワークショップを通じて、「気づく・知る・考える」ことの楽しさを伝える活動を展開しています。
各プログラムは、メンバーが自身の興味や専門知識を深めて作り込んだ力作ばかり。大人向けの本格的な内容もあり、リピーターが続出するほどの人気を博しています。
中でも水生生物に関するプログラムは充実しており、特に水産業との接点として興味深いのが「チリメンモンスターを探せ!」です。これはチリメンジャコ(シラス干し)に混入した生き物を観察するものですが、単なる観察に留まりません。「シラスの生息環境」や「漁獲方法」「食文化」といった産業の視点も併せて提供しています。生き物を入り口に、背景にある水産業にまで興味を広げる参加者は多く、サイエンスを通じて産業に触れる貴重な機会となっています。
「旅」でつなぐ —— 海と食文化フォーラムの海旅プロジェクト
水産業との意外な接点を持つ活動として、もう一つ挙げられるのが、一般社団法人 海と食文化フォーラムによる「海旅プロジェクト」です。日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として、海と共に暮らす街の知られざる魅力を「旅」を通じて発見し、海について考える人を増やすことを目指しています。
現在、海では海水温の上昇や魚種の変化といった課題が深刻化していますが、これらを自分事として捉え、行動に移せる人はまだ多くありません。本プロジェクトは、誰もが楽しめる「旅」を入り口にすることで、幅広い層が海に関心を持つきっかけとなることが期待されています。
2025年度の始動に伴い実施されたモニターツアーでは、富山県射水市新湊地区のシロエビ漁や、兵庫県明石市のノリ養殖の体験プログラムも組み込まれました。海を生業の場とする水産業との直接的な交流も生まれています。
「食」でつなぐ —— JF全漁連のシーフード料理コンクール
水産業との接点の王道といえば、やはり「食」ではないでしょうか。 業界内でも「消費拡大」や「魚食普及」をキーワードに長年活動が続けられてきましたが、その先駆的な取り組みといえるのが、今年(2025年)で26回目を迎えた「シーフード料理コンクール」です。
本コンクールは、国産水産物の魅力を再発見し、魚をより身近に感じてもらうことを目的に、JF全漁連が2000年度から開催しています。毎年、料理愛好家からプロを志す学生まで幅広い層が応募し、創意工夫を凝らしたさかな料理で腕を競います。
去る12月13日に行われた実技審査では、地元の漁獲量や地域独自の食文化を審査員へ熱心に説く参加者の姿が印象的でした。また、食材と向き合う中で海の環境変化に気づき、「料理を通じて持続可能な水産業に貢献したい」と志を語る場面もありました。まさに、一皿の料理を介して人と水産業が深くつながる瞬間を象徴する大会となりました。
「情報発信」でつなぐ —— JFいわき市の公式note
最近では、SNSを活用して自ら情報発信する生産者が増えています。生産者が直接発信の場を持つことは、水産業と消費者の距離を縮める大切な一歩です。
その好事例として、いわき市漁業協同組合(以下、JFいわき市)の「note」をご紹介します。JFいわき市ではこれまで、原発事故に伴う風評対策として、水産物の安全性や美味しさのPRに注力してきました。新たに公開された公式noteでは、数値的なデータだけでなく、漁業の「現場」や「人」が見える発信に力を入れています。
特に連載企画の『浜の人々』では、漁業者や漁協職員一人ひとりにフォーカス。いわきの海と共に生きる人々の姿を、それぞれの想いと共に丁寧に伝えています。担当者は「より多くの消費者に『常磐もの』の安全性と美味しさを知ってもらい、ファンを広げていきたい」と、その意気込みを語っています。
裾野が広い産業だからこそ
私が初めて水産業に強く興味を持ったのは、高校2年生の頃。海が科学で説明できることを知ったときでした。家業として、仕事の一つとして認識していただけの「水産」を、学びや研究の対象として見ることができると知ったときは、一気に世界が広がりました。
そして、社会人になって仕事として関わるようになると、水産業にはさらにたくさんの世界からの入り口があることを知りました。
最近では、“誰しも無関係じゃない” と思っています。だからこそ、誰しもかかわり代がある寛容な業界であってほしいと願います。
(連載 第16回 へ続く)
