ジャパン・インターナショナル・シーフードショーへの参加
うみ・ひと・くらしネットワークが立ち上がる少し前、うみひとくらしフォーラムとして活動していた2017年に、(一財)東京水産振興会との協働活動として、ジャパン・インターナショナル・シーフードショー※への出展が始まった。きっかけは、うみひとシンポジウムに参加していた漁村で起業する女性たちが、商品の販路を広げるためにも商談会に挑戦したいと声を上げたことだったと記憶している。
今回は、2023年及び2024年に出展したシーフードショーを中心に、出展の様子や成果について報告する。
※ ジャパン・インターナショナル・シーフードショーとは、水産商材や新技術が全国から集まり、情報交換や商談、研修会などを行う、(一社) 大日本水産会主催のイベント。2024年に第26回を開催した。
地域の商品や活動を伝えたい
うみひとネットの会員の中には、農山漁村で地元資源にこだわり、手間暇かけた優れた商品づくりによって起業している人たちがいる。彼ら彼女たちの商品は量産できないので流通の範囲も限られるが、商品誕生までの印象的なストーリーや地域の水産物の魅力を伝える力を持っている。うみひとネットでは、地域の中で生まれてきたこれらの商品はもちろん、それぞれの地域で地元の漁業・水産業をPRし、水産物をもっと食べてもらうために行われている様々な活動について多くの人に知ってもらうためにも、希望者による共同出展という形でシーフードショーに参加してきた。
出展希望者の中には、すでに全国にファンを持つグループもあれば、そもそも商談会に参加することが初めて、というグループもある。そこで、出展前には参加者向けのスキルアップセミナーを開催している。セミナーでは、これまでシーフードショーをはじめいくつもの商談会に参加してきた経験を持つ会員さんなどに講師になってもらい、FCPシートの作り方や商品の展示方法などの研修を行っている。
みんなで応援
シーフードショーの3日間は、出展者以外の会員さんも応援スタッフとして参加して、うみひとブースのチラシの配布や出展者と共に商品説明などを行っている。中でも学生会員の参加は大きな力になっている。2023年と2024年は、大阪の摂南大学の学生たちが大活躍した。学生たちは事前に出展者の商品についてレクチャーを受け、当日はブースに立ち寄った人たちへ、商品の特徴やそれらがどのような想いで作られているかということまで熱心に説明していた。また、開催期間にはうみひとブースに足を運んでくれる会員さんもいた。
地域や漁業への想いを共有する出展者
2023年は、(株)漁村女性グループめばる(大分県:ごまだし)、(株)クリエーションWEBプランニング(熊本県:車エビ・エビパテ)、(有)坂下水産(鹿児島県:刺身用冷凍カンパチ)、海のみやこ(岩手県:民泊など旅行商品・瓶ドン)、(一社)neo-wave(兵庫県:バスソルト・廃漁網のバッグ)、の5つのグループが出展した。2024年は、(株)漁村女性グループめばる、(株)クリエーションWEBプランニング、(有)坂下水産、海のみやこ、(株)あこやひめ(愛媛県:おみそ鯛)、AWAKEN TOWN(山口県:エビドレッシング)の6グループと、チラシの配布ということで、(一社)neo waveが参加した。うみひとブースへは、毎年100社以上の企業が来訪し、それぞれのグループは複数の企業と具体的なやり取りをすることができている。


新たな活動の掘り起こし
出展者の中には、具体的な商品以外のものを紹介している人たちもいる。兵庫県明石市のneo-waveは、瀬戸内海での「豊かな海」のための様々な取り組みの紹介や廃漁網を使ったバッグなどを展示した。岩手県宮古市の海のみやこは、重茂で実施している民泊や漁業体験をPRした。シーフードショーの中では珍しい出展内容と言えるかもしれないが、近年は海の環境や海業への関心が高まっていることから、多くの来訪者を惹きつけ、熱心に話を聞いて行かれた方もいた。
2024年には期待のルーキーが登場した。シーフードショー初出展のAWAKEN TOWNは、下関にある水産大学校の現役大学生の起業家だ。大学でエビについて学び、エビに含まれるアスタキサンチンという健康や美容に良いとされる成分を手軽に取り入れられる商品を作りたいと考えて開発したのがDOREBI(胡麻ドレッシングエビ風味)で、うみひとブースの中でも大好評だった。


うみひとブース出展の意義
一つ一つのグループで出展するには少々ハードルが高いシーフードショーだが、うみひとブースとして共同出展することで、参加会員は商品作りや販売スキルのステップアップを図ってきた。また、シーフードショーのお手伝いへの参加やオンラインミーティングでの報告会を通して、他の会員にも水産加工品の製造や販売、海や地域を巡る様々な活動に対する情報提供を行ってきた。また、シーフードショーに参加することでうみひとネットの活動もPRすることができ、新たな会員の入会も実現している。
シーフードショーでの経験が、これからの商品づくりや地域活動をさらに展開するきっかけになることを、そして100年先の漁業や地域を見つめる仲間の輪を広げていくことを願いつつ、これからも何とか、うみひとブースを出展できるよう頑張っていきたい。