「進む温暖化と水産業ワークショップ」 意見交換
佐藤:理研食品株式会社の佐藤です。法律でも明記された漁業に明白な支障がないことというのは、だれが調査していることになるのですか?
長谷:法律上は、経産大臣が募集区域を指定する際に、当該区域の状況を調査することとなっており、環境大臣による海洋環境に関する調査も経て、調査の結果指定しようとする区域等を縦覧したものに対し関係漁業者は意見を提出でき、そうして出された意見書を添えて経産大臣は農水大臣と協議しなければならないと規定されていますが、募集区域を決めるときに、政府内で協議して、漁業者さん、ここなら明白な支障はないですね、ということを確認していかなければいけません。その時に漁場として使っているところなら、漁業者は明白な支障があると言うに決まっていますよね。ですので、そういうところは区域から外していきます。どのぐらい使っていれば区域から外すのか、細かい話が出てくるかもしれませんが、基本的にはそういうことです。どこを使っているかわかっているので、今のうちからそれ以外で候補水域を絞っていったらいい。それを今回はこの募集区域でどうでしょう?と、小出しに言われても漁業者は困ってしまいます。
佐藤:だからこそ全体的な計画が必要だということですね。わかりました、ありがとうございます。
中山:日本のノリの生産量がここ4年ほど大きく減少しています。韓国、中国からの輸入が増えています。韓国は高水温への耐性が高く成長が早い育種の導入、中国は漁場が北方へ移動していると聞いています。先程中国の海南島の育種のはなしがありました。ノリについてどのようにお考えでしょうか。
佐藤:2025年に韓国を視察した際に、国の研究所として新たに建物を1棟建てまして、全部ノリの研究所として使われています。ひたすら育種の強化をしていて、高水温耐性といったものを集中的に研究されています。中国のノリのことは、私の専門外でして、わかりかねます。
和田:日本についてはどのようにお考えですか?
佐藤:日本においてもノリは、都道府県で育種を集中的にやられているので、どんどん活用していくことが大事だと考えています。栄養も各県がしっかりモニタリングされているので、少しでも良い漁場を探したり。ワカメもコンブも同じですが、果たしてあの養殖施設のやり方で本当にいいのか、もう少し考えなければいけません。いろいろな資材も70年前からずっと発展してきているので、もっと海藻養殖の業界もそういった新しい知見を入れて取り組むべきと感じています。
和田:はい、ありがとうございます。私からも佐藤先生にお伺いします。栄養塩のお話をされましたが、大規模な海藻養殖を沖合へ展開していった場合に、栄養塩の供給についてはどのようにお考えでしょうか。
佐藤:そのご質問はよく水産学会などでもいただくことが多いです。フラックスの問題なので単純に濃度が高ければよいというわけではありません。海流の問題もあり、どれぐらい養殖草体がちゃんとフラックスを受けるかを考慮した施設のデザインが必要です。先日の論文にも、沖合、沿岸から離れれば離れるほど、いろいろな栄養分が枯渇して、海藻養殖には不向きだと出ていましたが、仮に栄養を供給するとなっても、常に生物側のレスポンスをしっかり把握した上で取り組みたいと思います。コンブなどの栄養塩の吸収キャパシティや、その特性を把握した上でスケールアップしていくという考え方を常に持って技術開発していきます。
和田:ありがとうございます。フラックスが大事だということですね。洋上風力発電の施設をどこに作るかということとも関連して、もう少し日本の沖合域の中で、海洋条件としてどこでどういうことができるのか、海藻養殖に限らずもう少し調べて、海しるなどで可視化して、皆で上手な海の利用の仕方を考える、これからの海洋空間計画の在り方かと思います。
佐藤:本当におっしゃる通りです。大規模に海藻を養殖しようといっても、各論に入っていくと、もうすでにいろいろな養殖筏が入っています。となると、もっと沖合に出ていかざるを得ない。少しローカルな話になりますが、とある浜で、湾ではないので直接波が当たるところなので、ワカメ養殖もできないと言われていました。実際試してみたら、できるんです。ですので、あまりこう先入観にとらわれずに、沖合だと海藻養殖なんかできないという話もなくはないですけど、小スケールでもいいから試していく。空間的なデザインも含めて、いろいろな関係者の皆さんと集まって、試験を実施していくという取り組みが必要です。
和田:どうもありがとうございました。本日最初のご講演は水素燃料電池船ということで、これから日本の漁業や養殖業をシステマティックに展開していかないと、人口も減っていますから、難しいところがあります。そういった点に関して何かご意見ありませんでしょうか?
越智:(一社) 漁業情報サービスセンターの越智と申します。よろしくお願いします。水素燃料電池について、スタートのところで少し関わっていました。設計について、規制がある中で、いくつかの要素で絞り込んでいるとのことでした。安全性に関わる規制については仕方がないと思うのですが、今こういう規制があるけれども、これがなければもう少し自由度が上がるような、そういった話がもしあれば。また、その安全性にかかる規制の部分で、技術開発によって将来はクリアされる可能性があるのかどうか。もしクリアされるのであれば、もう少し自由度が広がる要素がありますか?さらに、先ほどの大関さんの質問にも関係しますが、今は養殖の小さな船で試験されていて、将来的にこの方式でもう少し大きな船で、このやり方で応用できる可能性があるか、聞かせてください。よろしくお願いします。
三好:ご質問ありがとうございます。最初の規制についてのご質問ですが、初めての場合は水素タンクの容量が300m3未満しか扱えないというのがあり、それがなくて水素の量をもう少し増やせれば、もっとうまく操業工程を回せるという話が漁業者から出ています。
越智:300m3というのは安全性に関わる規制ということですね?例えば、タンクの構造がもう少し改善されれば、規制が緩和されるような要素はあるのでしょうか?
三好:そうですね。技術的なところで、70メガパスカルを燃料電池に落として0.8~0.9メガパスカルにするのですが、その段階で直接減圧ができないので、2段減圧といって5メガパスカルに落としています。それを一気に減圧できれば、もう少しバンカリングという船の作業、船への搭載作業が楽になって人員が減らせて、制御もよりよくなると思います。船自体が電化することで、自動制御なども研究していまして、今の船のメリットとして応用していけると考えています。さらに大きな船については、大型化を今まで海洋水産システム協会さんで検討されてきました。それを運用できるかどうかについては、船価や漁港の喫水という問題もあります。ただ、大型化することによって、好天下での航海日数が増えたり、洋上でも回避しなければいけないルートをまっすぐ帰ってこられるようになったり、そういう大型化のメリットはある程度、満たしていると思います。
越智:技術的には可能性があると。ありがとうございました。
和田:ありがとうございました。そろそろ意見交換の時間を終了させていただきたいと思います。それでは最後になりますが、本日、ワークショップの締めくくりとして、海洋水産技術協議会の顧問であり、全国生産技術協会の監事である、川口恭一から閉会のご挨拶を申し上げます。
川口:お疲れ様でした。一言ご挨拶を申し上げます。
本日は本当に先生方、内容の充実した講演でありました。ありがとうございました。
会場あるいはオンラインでもお集まりいただき、ご協力いただきました皆様にも御礼を申し上げます。当協議会は2021年3月の水産技術協会の年頭会見で構想を皆様にご披露しまして、そこから5年が経過しました。その間に洋上風力発電施設の整備に関する調査やブルーカーボンについての講演などをいただき、意見交換をしながら幅を広げてまいりました。ご覧の通り、日本周辺の海水温は年々上がってきています。世界的に一番その上がり方のスピードが速く、特に太平洋側、北の海で魚の分布がどんどん北上、北の方へスライドしています。漁業生産にも影響しています。このような状況で、2001年頃から、日本人が食料とする水産物、右肩下がりで、ずっと下がってきています。まさにその2001年頃に変曲点が発生しています。いろいろな海水温の問題、あるいは人の問題、社会的な事情もあると思いますが、このまま黙ってみていると、黙って静かになっていくのかなと、寂しさを感じるようなことさえあります。我々が考えなければならないのは、このまま黙っていないで、皆で考えて、当事者間の問題として、自分たちも中に入って、一緒に海の問題を考えて取り組んでいくことです。我々も海洋水産の世界で、その一員として海の上で生きているわけで、さらにはその水産業が元気でいてくれないと、我々の存在自体も不要になってしまいます。ここで一致団結して、みんなで協力して、何をなすべきかということを含めて、皆さんと一緒に取り組んでいきたいと思います。その一つの手段として、協議会を運営してまいりますので、引き続き皆さんのご協力、ご支援をお願いいたします。我々も含めて地球の環境が少しでも緩和するように、それに貢献できるような取り組みと、今現場で大変苦労されている水産業の明日をどうするかということも含めて、技術的な取り組みも強化しなければなりません。本日は先生方のご講演を大変頼もしく思いながらお聞きしました。引き続き当協議会をよろしくお願いします。本日はどうもありがとうございました。