水産振興ONLINE
653
2026年7月
進む温暖化と水産業ワークショップ
「水素燃料電池船、海藻養殖、洋上風力」
平石 一夫((一社) 海洋水産システム協会 会長)
三好 潤((国研) 水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・基盤部門 水産工学部 副部長)
佐藤 陽一(理研食品株式会社 取締役・原料事業 部長)
長谷 成人(海洋水産技術協議会議長/(一財) 東京水産振興会理事)
和田 時夫(海洋水産技術協議会/(一社) 全国水産技術協会会長)[司会]

海藻養殖産業をまもり、育てるために
〜育種、種苗生産、大規模養殖〜

佐藤 陽一  理研食品株式会社 取締役・原料事業 部長

和田:それでは「海藻養殖産業をまもり、育てるために~育種、種苗生産、大規模養殖~」のテーマで、理研食品株式会社取締役・原料事業部長の佐藤陽一様にお話をいただきます。

佐藤様は大学院を修了された後、農林水産省、東北大学を経て、理研食品株式会社にお入りになり、一貫して海藻類の増養殖や利用に関する研究開発や事業化に取り組まれました。この間、大学で指導にあたられるほか、理化学研究所でもご研究を続けられています。加えて、International Seaweed Association の日本代表理事をお務めになるなど、この分野の第一線でご活躍でございます。それではご講演をよろしくお願いいたします。

図4-1

佐藤:ご紹介ありがとうございます。理研食品株式会社の佐藤と申します。3月からF-REI(福島国際研究教育機構)のユニットリーダーも兼任しております。本日の資料にある講師紹介を見ましたら、皆さん何年生まれと書いていらっしゃったので、1977年生まれの若輩者ですが、今日はどうぞよろしくお願いします。

本日はこのような機会をいただきまして、改めましてありがとうございます。洋上風力や水素燃料電池船の取り組みに比べますと、かなり小規模な話になるかもしれませんが、海藻の実情や、今後に向けてどういった取り組みが必要なのかなどを紹介いたします。

図4-2

海藻資源の特徴は陸上作物との資源競合がないというところです。つまり、水も土壌も肥料もいらない。大きなバイオマスを持っていますので、いろいろな分野で活用されているのが海藻類です。

図4-3

海藻の多面的な価値と言いますと、食料のみならずバイオエコノミー、いろいろな分野への貢献が期待されています。ご承知の通り、人口増に対して世界の耕作地面積はこれ以上増えないと予想されているので、海の利活用をもっと進めていこうという発想になります。

海藻を食として使う従来の海藻食品に加えて、左下のハンバーガーは十年以上前、オランダの国際学会において提供されたものです。海藻由来の抽出タンパク質から作られた肉が使われています。右側の画像は、ドイツのスタートアップ企業がソラマメの抽出タンパクと海藻の成分を混ぜ合わせ、フードテック的にツナを作っていました。食べましたら、ツナでした。ブラインド試験をされたら分からないぐらい、素晴らしい出来でした。右上、こちらはイギリスのスタートアップ企業で、Notplaという会社が、エディブルプラスチック、エディブル包材を海藻抽出物で作っています。トマトケチャップの入っているこの包材、グミのような感じで、食べているとなくなります。食に限らず、いろいろな分野で海藻の利活用が進んでいます。

図4-4

そういった状況の中で、海藻の養殖生産量が世界的に増え続けています。無給餌であり、低次栄養養殖生産ということで、世界のトレンドです。海藻の養殖技術のほとんどは日本において確立されました。図の赤で示したのが日本の動向で、後ほど詳細を話します。世界的に見るとその生産量は著しく増えていて、現在では約3,500万tの海藻が養殖生産されています。やはり中国のインパクトは絶大です。世界的には紅藻類の方が若干多いです。これはカラギーナンや寒天といった食品改良剤の分野においても世界的に使用量が伸びているためです。

図4-5

先ほど申し上げた中国について、コンブの養殖生産を見てみると、このようにどんどん増えています。こういった数量の増大にはイノベーションが必須です。種苗生産だったり、高成長系統の育種開発であったり、あるいは規制緩和も含めてどんどん沖合へ養殖場所が拡大しているとか、そういった形でしっかり需要に応える大量生産の技術開発が研究も含めてなされています。

最新の写真を現地の方から送っていただきましたが、まるでノリ養殖のようにコンブ養殖が広がっています。もう1つ興味深いのが、コンブ養殖生産量の増大がちょうど中国におけるエゾバフンウニの生産量増加と見事にマッチしています。光合成生物を増やし、それらをしっかり動物性タンパク質に変換している。そのような取り組みが中国で行われています。

図4-6

その一方で、温暖化の海水温への影響は大きい状況です。気象庁のデータをまとめたところ、2012年の北海道や東北地方沿岸では、百年間の移動平均で有意な水温の上昇がなかったのです。ところが2023年に有意な差が認められ、2025年の最新のデータを見るとさらに上がっています。

図4-7

先ほど世界の動向をお示ししましたが、次は日本の状況です。日本の海藻養殖生産量をまとめました。ノリとワカメとコンブ、そしてモズクが主要な養殖種です。ノリはいろいろなイノベーションがあって、生産量が増えていきましたが、1990年代をピークに下がっていっています。その減少の傾向は他の種類でも一緒です。先ほどの環境変動の問題もありますし、後ほどご紹介する生産者が減っていることも原因の一つです。ネガティブミッションやブルーカーボンなど、いろいろな形での海藻の利活用が大変注目されていて、そのポテンシャルは大変高いと実感する一方で、このままだと食資源としてのニーズすら賄えないのではないか?という強い危機感があります。

図4-8

理研食品 (株) は宮城県に本社があり、三陸産のワカメを中心に事業をしておりますので、次のスライドで三陸産ワカメの生産状況を紹介します。図の緑の線は三陸産ワカメの競争入札数量で、赤が価格になります。1998年に約50,000tあった三陸産のワカメは、今は20,000tを下回っています。それに対して価格はどんどん上がっています。私がこの会社に入社した約20年前、三陸産ワカメは生で100円/kgでしたが、一昨年は400円にまで上がってしまいました。ところがこの経済状況において、原料が4倍に上がったので商品価格を4倍にできるかというと、それはできません。ワカメは必需品ではありませんので、それなら別にワカメでなくてもいいとなってしまって、最終的にマーケット自体も縮小してしまうのではないかと、大変危惧しています。

環境変動による生産量の低下もさることながら、漁業者の数が減っているというのも、直接的に影響を及ぼしていると考えています。右側のグラフは岩手県におけるワカメ養殖に従事している方の数です。1986年に4,000人いらっしゃったのが、近年ではもう1,000人を下回っています。人数が減っていますし、高齢化も進んでいけば、生産性が低くなっていきます。ところが、国内の食の動向を見てみますと、健康志向がどんどん高まっていますし、家庭用商品では国産原料へのニーズも大変高い状態ですから、需要は増えているし、マーケットとして堅実に伸びている状態です。しかし、こういった生産状況では国内の需要すら賄えないので、このままだと産業を維持できないのではないかとの懸念があります。

図4-9

生産者は減っているけれども量は欲しいとなれば、いかにして生産性を上げていくかという点が、私たち原料開発側が解決すべき、注力せねばならない課題です。

図4-10

その一つの取り組み例として養殖種苗の問題をご紹介します。三陸の岩手県と宮城県では、いずれも芽を出して成長させるプロセスを、海に大きく依存しています。昔からある程度企業的に種を作っていらっしゃる漁業者の方も、やはり最後は海に頼らざるを得ないので、種苗の供給が不安定な年も最近増えてきたなと感じています。特に夏から急に冬になるような、秋がどんどん短くなっている印象があります。海藻類養殖は秋の環境が大切です。種苗を生産し、実際の養殖漁場に設置するという大事なプロセスとなります。その時期の水温の急激な低下や、あるいは急に再び上がったりする、そういった変化は生産に大きく影響します。そこで、1980年代に技術的に開発されていたフリー配偶体の手法、つまり陸上の種のように配偶体をとっておき、これを室内で発芽させてから漁業者の方に出荷する、というやり方により企業的な規模での種苗生産に関して、育種開発も含めてこの10年間取り組んできました。

図4-11

結果的には水槽装置を使い環境要因を除外して遺伝的要因に着目した選抜による育種をおこないます。得られた系統を確実に種苗として生産するために、環境条件を最適化して100%芽が出るような条件を確立しています。こうして、産業実装規模での種苗供給ができるような環境を整備しました。現在、ワカメの原料として約550t分の種苗を北海道や三陸地方の漁業者の方に提供し、実際に養殖で使っていただいています。また、早生や中早生、晩生など、収穫最盛期が異なる種苗を開発しています。漁業者の数も減りつつありますので、今まで4月に全部刈り取らなければいけなかったものを、2月から4月の間である程度作業を分散できるような品種の開発も行っています。

図4-12

コンブ類の育種に関してとても驚いたことは、昨年アメリカのウッズホール研究所を訪問した際のことです。7年ほど前から、アメリカではバイオエタノール用やその他の様々なバイオマテリアル用の原料として、コンブ類の育種開発を行っています。左の写真にあるこの1個1個の小さなリアクターの中には種苗糸が入っています。毎年、オスとメスのそれぞれ異なる個体をかけ合わせて、合計300系統ほどの交配育種を行っています。生産した種苗はニューハンプシャー大学の実験漁場において300系統を毎年養殖して、特性解析していました。こういった育種の取り組みは、先ほどお話しした中国や韓国でもずっと取り組んでいるし、ましてやアメリカでもこれだけ大規模に行っています。日本国内においても (国研) 水産研究・開発機構などにおいて行っていらっしゃいますが、我々としてもこういった育種開発で、いかに生産性の高い種苗を作っていくのか、温暖化に対応していくのか、産業実装型の研究に注力しなければいけないと感じています。

図4-13

今年度から岩手県と北里大学との3者連携で、岩手県内のワカメやコンブの地域系統をしっかり守って、活用して、育種して産業実装につなげていこうというコンソーシアムを作って活動を開始しました。この発端になったのは、私の学生時代には宮城県の松島湾などに天然のコンプがまだたくさん生えていたのですが、今はありません。天然コンブの分布南限がどんどん北に移動しています。要するに育種開発には必要不可欠な育種母本が失われているということです。地域系統がどんどんなくなってしまう恐れがあります。今この段階から始めないとどんどん手遅れになっていくので、岩手県および北里大の皆さんとこのような取り組みをスタートしたというわけです。改めて強調したいのは、この育種開発をどう産業実装につなげていくかという取り組みが重要です。

図4-14

減っていると言い続けていても仕方がないので、どうしたら量を維持ないし、増やしていけるかということを、漁業者の方とも一緒に取り組んでいます。

図4-15

岩手県大船渡市の綾里漁協です。主要漁業はサケ定置で、歴史的にも海流の流れが大変良く、ワカメのとても良い漁場でした。ところが震災があり、生産者の方がどんどん減っていき、この養殖施設は1台100~150mで、それが約2,000台あったのにどんどんなくなって今500台分ぐらい空いています。その一方で、マルカツ水産という漁船漁業の会社が現地で操業されていますが、サンマもサケも大不漁な状況において、これまでの獲る漁業だけではなく、育てる漁業であるワカメ養殖にも挑戦したいと考えられていました。当社としては、良質の原料をもちろん確保したいので、種苗を供給したり、その後のボイル塩蔵の一次加工のラインをお貸ししたり、技術的な取り組みをサポートしたりといった協力が可能です。こうしたなかで、2021年に少しでも企業的な規模で養殖生産をしようという挑戦を開始しました。ちなみに岩手県にお聞きしたら、2024年のサケの漁獲量は71tとのこと。魚種転換が進んでいる中での取り組みということです。

図4-16

当社では生育特性が異なるいろいろな系統を持っていますので、初年度は綾里の海でどんな系統が合うか合わないかの養殖試験をしました。結論としては、早生系は早生らしく、晩生系は晩生らしく育ちました。種苗を使い分けることで生産性の底上げに貢献できることがわかりました。

養殖手法は、シングル式の船を横からつけて刈り取るという方法ではなく、単位時間あたりの量を増やせるようなダブル方式を採用しました。ダブル方式は右の写真のように養殖ロープを船の上にのせて、くぐらせながらワカメを刈り取るという方法です。

図4-17

その結果として、マルカツ水産さんの大変なご努力により、順調に量が増えています。多くの問題や越えなければいけない課題も多いなと感じていますが、現状の枠組みにおいてどうやって養殖数量を増やしていこうかと考えたときに、漁船漁業の会社が生産に取り組む今回の方法が1つの重要な解決策かと思います。今後もこういった取り組みをしっかりサポートしていきたいと考えています。 次のフェーズは機械化、自動化、集約化かと思います。今年の3月に韓国にあるワカメ養殖を視察しました。三陸ですと一経営体でワンシーズン10~15tぐらいが平均的な数量ですが、韓国では一日100t以上は採れているそうです。韓国の方が遥かに進んでいる機械化や自動化の手法をうまく取り入れるような養殖技術の改良に貢献していければと思います。

図4-18

海藻類は食料資源に限らず、バイオマス資源としての期待値が高い状況です。どうやったらたくさん海藻を養殖生産できるか?これには、福島国際研究教育機構(F-REI)からの委託事業でとりくんでいます。先ほど申し上げたような優良系統の開発や、単位面積あたりの量が増やせる養殖生産方法に関して研究しています。

図4-19

通常のワカメもコンブも水平延縄式養殖が一般的です。水面付近にロープを張って、種苗を設置しています。鹿児島大の先生方の研究成果およびご指導いただいた研究成果として、特にコンブ類の光合成特性を測定してみると、意外と暗い光でも十分光合成できる能力を持っていることが分かっています。そこで、海水中の垂直方向の空間がもったいないということで、海の中を三次元的に使えないかと考えまして、水平延縄式の施設に全長10mのロープを垂直に設置し、単位面積あたりの数量を上げるための技術開発を行っています。

3~4年繰り返していますが、結論としてはうまくいきつつあります。従来の水平延縄式1台ですと、100mの水平延縄式ロープで大体1~1.5tぐらいの生産量でしたが、垂直方向のロープの手法を使うと、約10tまで増えました。目標としていた約10倍の単位面積あたりの生産量になりつつあります。

こちらは、岩手県大船渡市の養殖試験の様子です。8月の原料ですのでかなり老化はすすんでいます。これでだいたい水深7~8mぐらいです。今年も5月から収穫試験を開始しており、表面に近いところの方が各種有用成分の量が多く、下になればなるほど減ることがわかってきました。こうした品質面での違いを活かして、カスケード利用としての多面的な活用ができそうだと考えています。

図4-20

最後に本日CCSというお題もいただきましたので、海藻のブルーカーボンに関してもお話しします。

図4-21

CO2の固定能力が大変注目されていますので、研究開発の実情をご紹介します。長崎大学のグレゴリー・ニシハラ先生を代表とした国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)による戦略的創造研究推進事業(CREST)で採択された海洋カーボンの課題に我々も参画しています。目的は海藻養殖場において、CO2固定能力がどのぐらいあるのか、それをきちんと正確に定量できないかという技術開発です。特に我々が注目しているのは、海底の底質にどのぐらい長期貯留されるのか、ブルーカーボンの定義で言うところの百年単位で、どういう形で炭素が貯留されているのか、きちんと測ってみようというプロジェクトです。

図4-22

その発端となったのがこちらの2024年の論文です。ヨーロッパのバルト海で、コンブの天然群落が生育する海域において海底のコアを取った際のデータです。取ってきたコアを5cm毎に切って年代測定をしたら、一番下に相当する約66cmの部分が1800年代に相当しました。つまり60cm遡れば200年前の状態を知ることができます。5cm毎に切ったコアのピースの中から、抗原抗体反応を使ってどのような物質が含まれているかを調べました。抗原抗体反応なので定量性が低いのですが、こういった色がたくさんついてきた物質、これはフコイダンです。天然物において、褐藻類はフコイダンを作る主要な生物種です。フコイダンは難分解性多糖類なので、溶けにくい炭素の塊です。ということは、ここではコンブ群落が200年前から維持されていて、コンブ群落の海底にしっかり貯留されているのではないかということが分かりつつあります。

図4-23

我々も今、各地で試しています。松島湾で、ワカメ養殖漁場がずっと行われていた試験区域と、歴史的にワカメの養殖場として使われてこなかった対照区域の2か所を設定して、先ほどの論文と同じようにコアを取ってきて物質を調べてみました。有機炭素の含有量を調べてみると、養殖漁場から取ったコアの方が炭素の量は多いことがわかりました。ただ、これだけだと本当にワカメ由来かどうかわからないので、環境DNAを使って調査してみました。やはりこの炭素のほとんどはワカメ由来で、試験区域の方が多いと分かりました。対照区域の方がワカメ由来の炭素が少ないということです。もっと詳細な多糖類の定量や年代測定も行っているところで、こういった形の分析を通して、ワカメなりコンブなり、海藻の養殖漁場が、その底質への貯留交換も含めて炭素のプールになっていますので、その定量性をきちんと上げていこうという取り組みをこれからもやっていきたいと考えています。

そういった実験をする上で、半閉鎖系できちんとエビデンスを取りたいと思いまして、仙台うみの杜水族館さんにご協力いただいています。こちらがワカメやコンブが維持されている水槽で、そちらに堆積物の回収器具や各種センサーを設置して、どのぐらい昆布が枯れて、それが長期貯留に寄与するのかというデータを今まさに取っているところです。

図4-24

炭素の固定能力だけに着目して、それをクレジット化しても経済性は合いません。そこで我々としては、先ほどお示ししたような3D養殖の技術開発も含め、たくさん作った海藻のバイオマスを余すところなく使って経済性を上げていきたいと考えています。もちろん食料だけではなくて、食料改良剤であったり、化成品だったり、餌だったり、肥料だったり、最終的にはアメリカが今挑戦しているようなバイオ燃料かもしれませんが、カスケード利用でどう経済性を上げていくかが、今後の利活用の面での大きな課題だと考えています。

図4-25

そのような目的意識を持って、F-REIで藻類応用生態学・ブルーイノベーション研究ユニットを立ち上げました。今、我々が委託研究で取り組んでいる内容は本日ご紹介したような内容です。研究ユニットとしてしっかり取り組んで産業実装を進めていきたいと思っています。

図4-26

今日の内容をまとめます。国内では海藻の生産量が著しく減っています。このままだと食資源、あるいは食文化の維持すらままならないような現状を大変憂いています。今後を考えると、品種や種苗生産はとても大切です。育種を推進し、種苗を産業実装レベルで安定供給することが必要です。F-REIでは大量養殖技術開発のひとつとして3D養殖に挑戦していますが、今後は韓国のような自動化や機械化が必要になってくるでしょう。

海藻類によるCO2の固定能力を明らかにするうえでキーになるのは難分解性多糖類です。特にワカメやコンブのような褐藻類はフコイダンという難分解性多糖類が含まれているので、そちらに注目した研究をさらに進めなければいけません。海藻の多面的価値に着目して経済性を上げていく。最近ブルーカーボンやCCSが大変注目されていますが、やはり食料生産との両立が必要ですので、こういった取り組みを我々企業の立場としても推進していきたいと考えています。以上になります。ありがとうございました。

図4-27

和田:どうもありがとうございました。いくつかご質問をいただきたいと思います。

笠原:(一社) 全国水産技術協会の笠原です。中国で2,000万tの海藻が養殖されているということですが、日本の漁獲量が400万tで、海藻だけで5倍ということで、中国で海藻を食べているという話を聞いたことがなく、何に利用されているのか、どうやって食べているのでしょうか?もう一点、南の方だとコンブができないという感覚があります。水温の高いところで、どうやって養殖しているのか、教えていただけますか?

佐藤:中国ではコンブが多く食されています。食料としても盛んに消費されていて、炒め物などによく出てきます。あとはウニの餌とアルギン酸の原料です。そういった利活用が随分進んでいます。高水温耐性に関してはいくつか論文も出ていて、あくまで論文ベースですが、海南島の近くでも養殖できるぐらいの育種をされていて、7~8世代、交雑育種を繰り返して高温耐性を付与したという研究成果もあります。そういった育種は、ぜひ我々としても取り入れていかなければいけないと感じています。

笠原:日本でもそういった改良をしていかないといけないですね。

佐藤:そうですね。ここまで天然資源が減っていると、そういうフェーズに入っていると思います。北海道大学のコンブの生物学をご専門とされている先生方も育種に取り組んでいらっしゃって、そういった取り組みは本当に大事です。また、南の方でも養殖そのものはできます。いろいろな養殖関係の協会や生産者の方が取り組んでいまして、鹿児島の錦江湾でも養殖実績があります。ただ、養殖期間が短い、大きくならないという問題があります。養殖そのものはできますので、そういったことも育種のヒントになると思います。

和田:はい、他にもございませんでしょうか?

平石:(一社) 海洋水産システム協会の平石です。先ほどの韓国のような、2列で上げるような養殖を初めて見ました。そういったハード面で、今後の高齢化社会に向けて省人省力化を進める必要があると感じています。この韓国のやり方だと、労力も少なくて済みそうで、どういう船なのでしょうか?

佐藤:船の進行方向からロープを引っ張って、それを上の方にこう上げて、ここの部分で刈り取っています。最後は根っこの部分を全部削ぎ落とします。2〜3人で作業できるようです。海藻養殖は、こういったハード面の協業やコラボが少ない業界だと感じていて、だからせめてノリ養殖のような、船がくぐってほぼ同時で刈り取るようなシステムとか、そういったことをもっと取り入れていく方が、漁業者の方ももっと楽になると思います。

平石:昔、水産工学研究所で見たときは、岩手県でワカメ養殖をする方たちは機械化も進んでおらず大変な重労働をしていて、今後はそういう時代になっていってほしいと思います。

杉山:(公財) 海外漁業協力財団の杉山と申します。今、世界的な海藻の需要について、食資源としてだけでなく、キリンサイのような需要もあるかと思うのですが、今後のトレンドを伺えますか?自分たちでは食べる文化がない国が日本など食べる文化の国への海藻生産や輸出を始めたり、工学的な利用ができるキリンサイのようなものについて、今後アメリカや中国のような大国ではなく、途上国が進出してくる可能性やその傾向をご存知でしたら教えていただきたいです。

佐藤:日本に限って言うと、ベトナムやマレーシア、インドネシアのように、キリンサイのような大量養殖は環境的に厳しいので、そういった原料がもっとこれからも入ってくることはあるでしょう。利活用という点では、改良剤分野の用途が伸びています。食生活のアップデートなどとリンクしているデータもありますので、これからもどんどん利用が進んでくると思います。あとフードテックの分野でも、ツナのお話をしましたように、海外の方が上手です。直接海藻を食べないので、いろいろな工夫をして利活用を進めようとしています。

和田:ありがとうございました。