水産振興ONLINE
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2026年2月
シンポジウム「ALPS処理水の海洋放出と水産物輸出を巡る現状と課題」
濱田 武士(北海学園大学経済学部) 坂井 眞樹(公益財団法人水産物安定供給推進機構) 加藤 聡一郎(つかさ綜合法律事務所)

講演 
水産加工業者等のALPS損害賠償請求の動向と課題

加藤 聡一郎

加藤 「水産加工業者等のALPS損害賠償請求の動向と課題」というテーマで報告をさせていただきます弁護士の加藤聡一郎と申します。よろしくお願いします。

まず、こちらのスライドで私の自己紹介をさせていただきます(図51)。

図51
図51

私は弁護士として漁協・漁連関係のお仕事から水産業に関わり始めたという経歴があり、そのご縁で全国漁業協同組合学校の講師も務めております。そうしたなかで、2023年にALPS処理水の海洋放出が行われたのですが、私としても放出問題は以前から関心を持っていましたので、直後に浜の皆さまのお話を聞く機会を得て、2023年の10月ごろからはほぼ毎月1~2回程度、北海道や青森などALPS処理水の影響が出ている地域を訪問し、弁護士としてお困りの業者の方々のご相談に乗るなどの対応をさせていただいています。そして、後ほど詳しくお話しますが、実際に海洋放出による損害を受け、困っている業者さんが大勢いらっしゃるので、業者さんの相談に乗りつつ、代理人として東京電力に対して直接損害賠償請求を行ったり、原子力損害賠償紛争解決センターという機関に損害賠償請求の仲介申し立てをしたり、という活動を続けています。

なお、このALPS処理水に関する損害賠償請求などについては、表に出しづらい情報もあるのですが、やはり困っている業者さんをはじめ、多くの方々にALPS処理水問題について知ってほしい論点や情報がありますので、2024年から「水産北海道」という月刊の水産業界誌で連載をさせていただいています。また、放流から1年後の2024年8月には毎日新聞のインタビュー記事でお話をさせていただいたり、先日は水産経済新聞でADRセンターでの仲介事例について紹介をさせていただくなど、情報発信も積極的に行っています。

弁護士として守秘義務があり、お話しできないことももちろんあるのですが、可能な範囲で損害賠償請求を中心としてお話をさせていただきます。

まず、ALPS処理水の海洋放出が各地の事業者の方々にどのような影響や損害をもたらしたのかという点について少し詳細にお話しします。

海洋放出により水産加工業者等が受けた被害には4つのパターンがあります。

1つ目は輸出被害で、先ほど坂井参与が詳しく解説されました両貝冷凍ホタテなど、中国に輸出していた水産物が禁輸措置により全て輸出できなくなり、輸出業者あるいは輸出業者と取引していた水産加工業者の利益が大幅に下落したという損害です。これはホタテだけではなく、ナマコ、サケ、ブリ、タラなどの輸出も影響を受けています(図52)。

図52
図52

2つ目は風評による損害です。問題の無いレベルまで希釈してから放出するとはいえ、ALPS処理水には放射性物質のトリチウムが含まれていますので、放射能というイメージから、水産物は避けたい、買わないという心情が働き、結果として買い控え等で水産物の価格や売上高が下がるといった状況が風評被害というわけです(図53)。

図53
図53

しかし、先ほど濱田先生のお話にもありましたとおり、海洋放出後は少なくとも国内ではそうした風評被害のような動きはほとんど見られませんでした。他方で、やはり中国をはじめとした中華圏などでは過剰な反応があり、日本産水産物は危険だとの意見が強く表れ、結果として禁輸措置という行動に至らしめました。

3つ目ですが、国内では風評被害はほとんど無く、一見すると禁輸措置で損害があったのは輸出や加工の事業者だけと思われがちですが、そうではありませんでした。つまり、中国などの禁輸措置により本来海外に輸出されるはずであった大量の水産物の行き先が無くなり、それらが国内のマーケットに向けられた結果、供給過剰となり、産地価格などが暴落する事態となりました。これを還流被害と呼び、さまざまな水産関係者に損害を与えました(図54)。

図54
図54

実際に、先ほど坂井参与もお話されましたが、特にホタテでは還流被害が顕著に発生し、大量に在庫を抱えた業者が安値で投げ売りせざるを得ない状況になったりするなど、さまざまな事業者に大きな被害がありました。この還流被害については後ほど詳しくお話します。

4つ目は「その他」ですが、禁輸措置により輸出や加工、物流などの経済活動が停滞しますと、それに関連したさまざまな業種、例えば加工機械のレンタル業者や、冷蔵倉庫業者などにも売上減などの損害が生じるケースがありました。あまり多くの事例があるわけではなく、その立証もなかなか難しいのですが、一部にはそうした被害もあるということです(図55)。

図55
図55

ALPS処理水の放出により、こうした4つのパターンでさまざまな被害が生じているのですが、それらに対する東京電力側の損害賠償はどの程度まで行われているのかをスライドにまとめました(図56)。これは東京電力が毎月定期的に提供する情報を福島県のテレビ局がHPで公開しているのですが、2025年10月29日時点での損害賠償の状況は、支払済が920件、支払総額が830億円です。

図56
図56

総数では相当な規模で賠償が行われてきたようにも見えますが、これらの数字は漁業関係者と水産加工業者等の合算であり、その内訳について東京電力は公表していません。先ほどの濱田先生のお話にもありましたが、漁業関係者については漁連が窓口になり団体としてしっかり東電と交渉を行ってきましたので、この損害賠償の大半は漁業関係者が対象のものだと推察されます。他方で、水産加工業者の方は個別対応せざるを得ず、皆様お忙しい中で個別に東京電力と交渉されていますので、なかなか大変な状況です。

こうした状況について、私が主に担当をさせていただいている範囲での北海道での賠償進捗状況をスライドにまとめました(図57)。

図57
図57

漁業の方は北海道漁連による集団賠償により2024年6月頃から賠償金の支払いが始まりました。また、輸出関連の事業者については、一部賠償が拒否された事例もありますが、噴火湾のホタテ関係を中心にある程度は進捗しています。

これらに比べて深刻なのは、輸出ではなく、国内の商社や卸向けにホタテ製品などを販売していた業者への賠償です。こうした業者への賠償は、2024年の前半くらいまでは拒否事例が結構ありましたが、東京電力の基準が緩和したためか、この年の後半からは処理水放出前の在庫に限って賠償に応じる事例が出てきました。一方で、厳しい賠償状況のため、輸出関係しか賠償の対象にならない、といった誤解も生じています。

国内販売のホタテなどへの損害賠償がなかなか進まない理由の1つとして、国内では風評被害は発生していない、という東京電力側の認識があります。つまり、処理水の海洋放出による不買運動や買い控えは国内では発生しておらず、また放出後の価格下落も起きていないではないかという理由です(図58)。

図58
図58

しかしながら、実際には還流被害によってホタテ価格が下落していますので、風評被害とは全く別の切り口で、必要な資料も揃えた上で東京電力と交渉をする必要があります。

ここであらためて還流被害について説明しますが、これらのスライドのとおり中国の禁輸措置によって大量にだぶついたホタテが国内マーケットに流れたことで価格が暴落し、ホタテの在庫を抱えていた水産業者の売り上げが減るなどの損害が生じました(図59、図60)。

図59
図59
図60
図60

地域的には、やはり北海道での損害が大きく、オホーツクや噴火湾といったホタテ産地の「玉冷」の加工業者さんや、札幌や旭川など都市圏の卸業者さんなどホタテの在庫を抱えていた業者が還流被害による売り上げ減などの損害を受けました。北海道以外でも、ホタテ産地である青森県や宮城県の「玉冷」などの加工業者さんなども同様の被害がありました。

ところが、先ほども申しましたが、輸出関係以外は損害賠償の対象とならないという誤解が業者の間で生じていました(図61)。

図61
図61

なぜそのような誤解が生じたのか、業者さんからいろいろとお聞きして私なりに推測したところでは、2024年の前半までは業者への賠償がほとんどなされず、東京電力から拒否された業者も少なからずいました。当時賠償を拒否された業者の中には、中小業者のみならず、地域を代表するような大手の加工企業も含まれていましたため、中小業者が多い加工産地の空気感としては、風評被害は無いという東京電力のスタンスのもとで、あの大手企業ですら拒否されるのでは、われわれが何をやっても無駄であろう、そうであるならば賠償請求などは止めて本業に集中しよう、という諦めムードがあったという点があります(図62)。

図62
図62

しかしながら、還流被害により損害が生じている以上は損害賠償の対象となる得るわけです。ところが、多くの加工業者さんにとっては賠償を受けるための交渉に際して、さまざまなハードルがありました。

1つ目は情報不足です(図63)これは損害賠償などに関する正確な情報発信が少ないためで、もちろん情報収集に努めている業者さんもいますし、私からも積極的に発信をしていますが、やはり多くの業者さんにはなかなか情報が行き渡っていないのが現状です。その背景の1つとして、もともと加工業者さんなどは企業秘密としてあまり業者間で経営に関する情報を共有し合わないという風潮も一部あるのですが、情報発信や情報共有のハブとなる業者団体が減っているという事情があります。まだ北海道では、業者間での情報共有を大事にされ、水産加工協や加工連さん、荷主協会さんといった団体が発信や共有に努めていらっしゃいますが、他の県ではなかなかそこまで行かず、情報不足となっているのではないかと思います。

図63
図63

次に相談窓口の少なさです(図64)。北海道の場合、東京電力の相談窓口はオホーツク海側の紋別と噴火湾側の長万部(おしゃまんべ)の2か所しかありません。北海道はとても広大で、例えば最北の稚内にもホタテの加工業者がいらっしゃいますが紋別まで200㎞以上の距離がありますから簡単に出向くことができる場所ではありません。また、北海道以外の県には相談窓口がありません(臨時の開設はあります)。

図64
図64

3つ目として、営業損害に関する賠償請求はとても専門的で難易度が高いという理由があります(図65)。例えば、加工業者の多くは帳簿などを手書きで記帳していますが、賠償請求の際には電子化データの提示が求められるので、非常に手間暇がかかるわけです。またそうした手間暇をかけても、先ほど申しましたとおり、請求が拒否されるケースが結構ありますので、結局、損害が生じても賠償請求をあきらめて本業に専念するという業者さんが出てくるわけです。

図65
図65

ALPS処理水に関する東京電力の賠償基準は基本的に厳密というか硬直的で、その基準に合わないと賠償が拒否されたり、全額補償されなかったりするケースがあります。また、環流被害についてホタテなどでは処理水放出時の在庫分に限って補償に応じるというスタンスをとっています。ですので、たまたまそのタイミングで在庫がほとんど無かった業者への補償額はとても減ってしまうことになります(図66)。そうした段階になれば、ご紹介を受けるなどして、私の方で業者さんのご相談に乗っているということです。

図66
図66

直接的な損害賠償請求を東京電力が拒否する理由についてあらためて整理したのがこのスライドです(図67)。

図67
図67

1つ目は会社全体では前年度からの利益減少が認められないという点、2つ目は先ほどもお話しました、風評被害が認められないという点です。3つ目は輸出に関する証憑、すなわち輸出を証明する書類が確認できないという点ですが、加工業者の多くは自ら輸出していないことからそうした書類を揃えて証明するのが難しいのです。4つ目は、輸出に関する損害と国内向け販売に関する損害の両方がある場合は切り分けが求められるのですが、対応が難しい場合は賠償が拒否される場合があります。やはり損害を立証するようなさまざまなものが求められますので、その対応が困難な場面が多くあります。

東京電力の対応については、さらに表面化しない問題として門前払い的なパターンも見受けられます。これは電話相談窓口や2か所設けられた相談窓口において、その請求内容では東京電力の基準からみて賠償は難しいですよ、などと担当者から言われてしまい、そこで心折れて請求をやめてしまう業者も結構いらっしゃいます。そのため、統計上や記録上では表に出てこない、隠れた賠償拒否のケースもあるのです(図68)。

図68
図68

以上のとおり直接的な損害賠償請求にはさまざまなハードルがあり、賠償が得られないケースも多くあるのですが、では賠償を拒否されたら東京電力に対して訴訟を起こすのかというとさらに困難となります。訴訟では、原告側に「立証責任」という負担が課されていて、十分な証拠がそろわなければ、原告は負けてしまうのです。証拠を準備する負担や負けたときに手間暇が無駄になるということで、原告側が追うべき、リスクや負担は計り知れません。水産事業者側からみればALPS処理水は、反対しているのに一方的に放出されたのであり、一方的に被害を与えられたのに、大きな負担を負わされるという不条理な状況をもたらすものです。

しかし、原子力に関する損害を受けた人に対してはしっかりと救済しなければいけないというのが東日本大震災の教訓です。国としても、一方的に被害を受けた事業者を置き去りにしたいわけではないのです。

そこで救済の手だてとしてこれからお話するのが、冒頭でも紹介しましたADRという国が整備した仕組みです。正式名称は原子力損害賠償紛争解決センターという文部科学省所管の国の機関で、ここが和解仲介案を出して解決を促してくれるという、非常に素晴らしい仕組みです(以下、ADRセンター)。これまで福島原発事故関連の賠償問題で膨大な件数の仲介に当たってきた実績があり、もちろんALPS関係でも利用できます(図69)。

図69
図69

ADRセンターはこの写真のとおり新橋駅至近のオフィスビルに事務所があり、国の予算措置のもと優秀なスタッフにより運営されています(図70)。

図70
図70

ADRセンターによる仲裁の仕組みですが、弁護士などから選任される仲裁委員などの立ち合いのもと双方の主張を確認した上で、裁判での判決の替わりに、和解仲介案を提示してくれます。その仲介案を双方が了承することにより、問題の解決に至ります。また、申し立て自体には費用はかかりません。さらに、直接請求によりすでに賠償金をもらっていたとしても、新しい基準でセンターに申し立てをして損害が認められれば別途賠償を得ることができますので、直接請求よりも不利にならない仕組みです(図71)。

図71
図71

また、和解仲介にかかる期間は概ね10か月が目標とされていますので、通常の裁判よりは短い期間で済みます。その期間中で、3人の委員が各案件について協議を取り持つなかで東京電力側にも弁護士が付いて、お互い、ほとんど裁判のような形で書類のやりとりをし、最後にセンターのほうで和解仲介案が提示されます。なお、東京電力はこの和解仲介案を尊重することをHPで表明しています(図72)。

図72
図72

ADRセンターの特徴として「割合的賠償」という仕組みを採用する場合があります。一般的な裁判では、ほぼ100%賠償に値すると判断され得る完璧に近い証拠が無いと賠償は認められません。しかし、原子力損害というのは一方的に起こるものであり、予防や備えなどはできませんから、それで裁判と同じ基準を求めるのは良くないだろうということで「割合的賠償」という仕組みがあります。それは、100%の証拠が無くても一応確からしいと判断される場合は、損害発生の心証度に応じて、賠償金額の割合を調整することで和解を促すというものです。そのため、決算書などが残っていない場合であっても、こうした方法により賠償が認定されることがあり、裁判とは異なる形での救済の仕組みが担保されているわけです(図73)。

図73
図73

こうした直接請求以外の救済ルートについて図示したのがこのスライドです(図74)。

図74
図74

実際に、ALPS処理水関係の事案についてもADRセンターへの申し立てが進んでいて、解決に至ったケースも複数出てきています。

そして2025年7月末ごろに公表された事例ですが、このスライドのとおり「玉冷」を作っている北海道のホタテ加工業者が、ホタテの国内滞留による価格の値下がりによって生じた損害について賠償を申し立て、それが認められたケースとなりました(図75)。

図75
図75

要するに還流被害による損害への賠償事例ですが、東京電力は放出前の在庫に限り還流被害の賠償を行う場合があるというスタンスを通していました。しかし、このケースでは、処理水放出前の7月末時点で保有していた在庫については、その販売終了までは販売数量に対して前年度からの価格の値下がり分を掛けた金額を算出し、それ以降はこの販売の値下がり分に販売数量を掛けた金額からホタテ原貝の値下がり額を控除した金額を算出して、この2つの金額の合計に原発事故の影響割合8割を掛け合わせて賠償額を認定しました。放出後の還流被害についても損害賠償を認めるという、今後への展開に大きな影響を与え得る事案となりました。

この他にもADRセンターの仲介により賠償が認められた事例が増え、ウェブサイトでも公表されていますので、業者の皆さんの認知度も上がってきており、私のところへのご相談も増えています。

また、ADRセンターへの申し立て手続きについては、決算書や月次試算表、元帳の用意があれば、ある程度は立ち上げが可能ですので、困っている業者さんはぜひ検討していただきたいと思います(図76)。

図76
図76

これは1年以上前の数字ですけれども、ALPS処理水に関するADRセンターの申し立て件数は2024年末の時点で26件でした。私の方でもこれまで何件も申し立てを行ってきましたし、現在申し立て準備中の案件もあり、相談件数も増えています。相談内容で最も多いのはホタテ関係で、やはり還流被害に対する賠償についての理解が進んできて相談が増えています。またホタテ以外でも、中国輸出が多いナマコなど他の品目の相談も受けていますし、北海道だけではなく、東北、関東や西日本など全国各地からのご相談に対応していますので、やはりお困りの業者さんは多いのだなと思います(図77)。

図77
図77

2023年以降の決算を拝見する機会をいただいていますが、本当に水産事業者には大きな悪影響が生じてしまったことが分かりました。

最後にまとめになりますけれども、ALPS処理水の放出に伴うさまざまな被害とそれに対する損害賠償について、今後、水産加工業などをより発展させるために何を教訓にし、課題としていくべきなのか、個人的に考えてみました(図78)。

図78
図78

1つ目として、水産加工事業者への個別賠償が滞ってしまったことについて、東日本大震災からの経験値や知見がうまく活かせなかったのではないかという点です。福島原発事故による損害賠償問題について、これまで東京電力側は賠償知見を多く蓄積してきました。一方で北海道の業者さんなどは、まさか自分たちが原発事故の関係で損害を被るとは予想もしていなかったと思います。そのため双方の知見にギャップがあって賠償交渉がなかなか進まず、もう少しうまく知見の共有化ができなかったのかなと思います。

2つ目は、そうした知見のギャップがあるのなら、東京電力は解決方法としてADRセンターの仕組みを積極的に発信すべきだったのではないかと思います。これが裁判の場合には、不当な判決であれば控訴や不服申し立てという手段があることを伝える法的義務があります。ADRセンターについては東京電力に発信する法的義務は無いですが、知見のギャップが明確なら、道義的にきちんと発信すべきだったと思います。

3つ目は、損害が発生しているのにまだ賠償請求をしていない業者さんがいらっしゃるので、本業に負担がかからない形で、そうした方々への賠償を実現していくことです。私は毎月浜を回っていまして、何件もの地域の加工屋さんの社長さんとお会いしています。社長さん達は本当に職人気質の方が多く、ご自身も現場に出てホタテの殻むきなどの作業も行い、どうしたら良い品質の製品を作れるのか一所懸命考えておられます。ですから、損害賠償の請求手続きなどは本来の生産業務にとって負担になりますので、そうした負担を解消する何らかの手だてを取るべきだと思います。また、賠償によって本来得られるはずの資金が手に入らなければ、運転資金や設備投資にかける費用が減少してしまいます。

私がある社長さんから言われたことで非常に印象に残っているのは、ALPS処理水の影響でかなり売上が減ってしまったので、工場を増設しようかなと思っていたのだけれども今はやめておく、という言葉でした。こうしたことが今後も続くと地域の産業や経済がどんどん疲弊していきます。それを防ぐためにも、損害に対してきちんと賠償されることが非常に大事だと思っています。

4つ目として、情報開示の必要性です。情報がきちんと開示されないと正確な現状把握ができませんから、1つ目と2つ目にも関わりますが、東京電力には誠実な情報開示をしていただきたいと思っています。

5つ目ですが、本件で私は幸運にもいろいろな業者の方のご相談に乗るなかで、間をつないでくださる地域の機関や団体の方々のご支援に恵まれました。例えば、水産加工業組合の方々や地域の金融機関の方々などです。特に金融機関の方々は業者さんの経営状況をよく把握され、また非常に心配もされてもいますので、多くのアドバイスをされています。今後もこうした情報共有に関する地域のインフラを活用することは非常に重要です。もちろん、全国的なレベルでは水産物安定供給推進機構さんや全水加工連さんの補助金や情報を活用できますが、やはり各地域レベルの隅々まで情報などを行き渡らせるためには、地域の情報共有のインフラの維持や活用が重要な課題となると思います。

短い時間でしたけれども、私からの発表は以上です。ありがとうございました。

司会 加藤様、ありがとうございました。