水産振興ONLINE
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2024年11月

「漁業管理制度問題」懇談会記録
—明治漁業法と戦後の漁業制度改革について—

高橋泰彦 松元威雄 小沼勇 赤井雄次(水産経営技術研究所) 長谷成人(水産庁) 黒萩真悟(水産庁) 梶脇利彦(水産庁) (所属は1998年時)

「漁業管理制度問題」懇談会レポート

平成10年12月 全漁連

はじめに

日韓漁業協定の終了通告(1998.1.23)直後の日曜日、戦後の漁業制度改革からTAC法までの通達類をまとめた「漁業制度例規集」の出版をきっかけに、編集を担当した水産庁の現役行政官が戦後の漁業制度改革に携わった先輩から話を聞く機会があった。
これは、その時の記録である。
漁業制度の抜本的検討が行われている中、関係者の参考にしていただければ幸いである。

全漁連

懇談会発言者

(所属は当時)
  • 高橋 泰彦
  • 松元 威雄
  • 小沼  勇
  • 赤井 雄次(水産経営技術研究所)
  • 長谷 成人(水産庁)
  • 黒萩 真悟( 〃 )
  • 梶脇 利彦( 〃 )

    **
  • 長屋 信博(全漁連)
  • 村上 隆久(漁済連)
  • 桑原  智(水産庁)
  • 高屋 繁樹( 〃 )

(懇談にあたり)

長谷 明治30年の遠洋漁業奨励法、同34年の漁業法からほぼ1世紀たち、日本漁業のわが国周辺海域への回帰が決定的となった中で、わが国は一昨年、国連海洋法条約を批准しました。それを踏まえて、今、一番の問題になっているのは周辺国との関係の整理であり、昨年の秋、日中については新しい協定の署名が行われました。海洋法条約に基づく 200海里を設定して、沿岸国が管理していく形の協定に移行するめどがついたわけです。韓国の方は交渉が遅れていたのですが、ちょうど一昨日の金曜日になり、現行の日韓漁業協定の終了通告が閣議決定され、通告が行われました。協定に基づいて終了通告をしてから1年間有効ということですが、遅くともこれから一年の間には、日韓についても、沿岸国主義に基づいた枠組みに移行するめどがついたという状況にあります。その中で思うのは、従来は沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へということがいわれましたが、そういう形で国内の調整問題や矛盾を外側に発展させることで解消してきたことがあると思います。本当は20年前にソ連やアメリカが200海里を引いたあたりからそういうことはできなくなってきたわけですが、日本周辺水域については特に沖底ですとか、まき網漁業と沿岸との問題があるのですが、一方で韓国船、中国船などの外国船が野放しになっている時に、国内の構造調整になかなか手がつけようがなかったということだと思っています。とにかく関係者で話し合いをして下さいという対応をしてきたのですが、韓国、中国船の問題が整理されれば、その次には本当の意味で国内の調整、国内完結型の漁獲努力量の調整システムが必要になってくると認識しています。

そういった一連の海洋法批准に伴う動きがあるものですから、水産庁では去年の9月に水産基本政策検討会をつくり、2年ほどかけて制度の見直しをすることになっています。漁業管理制度については、国連海洋法条約に基づく TAC制度下における漁業制度を検討するという名目で進めていこうとしています。要するに海洋法批准に伴って外国船との関係が整理されるわけですから、そのあと国内の構造調整、漁業調整にどう取り組むかが課題になっており、そこにどう対応するかが今の制度見直しのポイントであると私は理解しています。我々は今日は水産庁の水産基本政策検討会の直の立場ではなく、個人的立場で参加させていただいているわけですが、そういう機会に百年単位の視野の中で、明治漁業法がどんなものだったのか、その中での調整とはどういうものだったのか、それから戦後の漁業制度改革についてもお話をうかがえたらというのが今日の趣旨です。メモ(別添)を用意してきました。事前に目を通していただけたかと思いますが、何か目安があった方がいいかと思いまして、昔書かれた本の中で高橋さん、松元さんがいわれているようなことをひとつの糸口にしてお話をしていただければと思います。

赤井 それでは皮切りといいますか、話が順不同になってもいいですから、メモの最初の方から話をしていただければと思います。