5. 東京湾大感謝祭における魚食普及活動
2019年までの活動
東京湾大感謝祭は、江戸前PTとそのメンバーが東京湾の魚介類の魅力を広く一般市民に伝える最大のイベントである。これまで水産庁や東京水産振興会をはじめ、大日本水産会、全国漁業協同組合連合会、水産資源保護協会など、オールジャパンの体制でのお力添えをいただきながら企画を立案・実施してきた。例えば2019年の感謝祭では、大日本水産会、マリン・エコラベル・ジャパン協議会の協力をいただき、屋外ステージにて江戸前PTによる「家でも簡単に作れる!魚の塩釜焼き」プログラムを開催した。江戸前PTの副PT長を務める早武忠利課長(大日本水産会魚食普及推進センター)が、包丁を使わない簡単な魚のさばき方と塩釜焼の作り方を伝授したほか、早武副PT長の大学院の後輩で東京湾再生アンバサダーを務める桝太一・日本テレビアナウンサー(当時)とのトークや(図11)、水産庁の保科正樹次長から桝氏への「お魚かたりべ」任命式も行われた。
(大日本水産会魚食普及推進センターウェブページより転載 https://osakana.suisankai.or.jp/event/suisankai/368)
広場で開催されたブース展示では、特に江戸前PTの活動と関連が深い団体の出展を一か所に集めた「江戸前の恵みコーナー」を企画した。そこでは東京水産振興会に加えて、水産庁、JF千葉漁連、神奈川県漁業協同組合連合会・横浜市漁協、海藻おしば協会、八景島シーパラダイス、マクセルアクアパーク品川からの出展もいただき、東京湾の生物や水産物の様々な魅力を来場者につたえた。特に東京水産振興会からご提供をいただいた豊海おさかなミュージアム特別展示「東京湾の逆襲!」の解説ノートは、東京湾でとられる魚介類やその漁業、江戸前の食文化や歴史も含め、素晴らしい内容で好評であった。この場をおかりして改めてお礼を申し上げる。
コロナ禍の下でのオンライン料理教室
2020年と2021年はコロナ禍のため、残念ながら横浜での東京湾大感謝祭は開催されなかったが、新たな試みとして、オンラインでの大感謝祭が開催された。江戸前PTは、東京水産振興会および大日本水産会からのご協力をいただき、江戸前水産物をもちいたオンラインでの料理教室を実施した。早武副PT長や魚食普及団体アクアカルチャーのメンバーが作成したYoutube動画をみながら、魚のさばき方や江戸前の恵み、簡単なレシピを学んでいただき、その後美味しくご賞味いただくという企画である(図12)。第一弾となった2020年の東京湾大感謝祭では、インターネットで募集した500世帯(1159名)の自宅に、大田市場の(株)フーディソンのお力をお借りして江戸前の鮮魚をお届けした(図13)。
その他関連動画もふくめ、現在も大日本水産会魚食普及推進センターウェブページにて公開中(https://osakana.suisankai.or.jp/)
((一社)大日本水産会 魚食普及推進センターのウェブサイトより転載)
オンライン料理教室の参加者に対し、事後アンケートを行ったところ、回答者の全員にこの企画を「満足」または「大満足」と評価していただいた。参加者のうち、さかなをさばける人の割合は、実施前には24%であったが、実施後にはアジなどの小魚なら99%、1㎏以上の大型の魚でも94%の方が「さばけるようになった」と回答している。また、「江戸前の恵み」のイメージについても、オンライン教室実施前に「よい」「とてもよい」が72%だったのに対し、実施後には95%にまで向上した。さらに自由回答欄には、「東京湾には価値あるおいしい魚介類が豊富にある。」「長い事東京の胃袋を満たしてきた大切な東京湾だと思います。目の前の魚を新鮮なうちに食す、それはとても価値あることですね。」「昔と違って水質もよくなって魚の味も上がってきている印象」「魚介類、江戸前寿司!昔は汚い海のイメージがありましたが、テレビなどで見ているときれいな海にしかいない魚がたくさんいるとのこと。ぜひ食べてみたいと思いました。」などのコメントが寄せられた。
その一方で、「水質があまりよくない」「泳いでいる魚も汚れているというイメージ」「豊洲に在住ですが、ヘドロ、悪臭のイメージ。」「どうしても海洋汚染のイメージが払しょくできない。」などのコメントもあり、依然として水質への懸念や悪イメージが根強く残っている実態も明らかとなった。これらはおそらく対面では聞くことが難しい意見であり、オンラインだからこそ得られた価値ある生の声ということもできる。東京湾再生推進会議にもしっかりと伝えていきたいとおもっている。なお昨年2021年も残念ながらオンラインでの大感謝祭となったため、江戸前のホンビノスとカンパチに、愛媛産のマダイを加えた、合計3種の魚介類を2000円+送料でお届けし、同様のイベントをおこなったところである。