座談会 平成の漁業制度改革(1日目) つづき
「水産政策の改革について」とりまとめまで
長谷:水産庁というより農林水産省としての方針を決めるために、次官との擦り合わせをまずしていったわけですけれども、先ほども話したように最初はクロマグロは今回廃止されたTAC法の中で大作戦をやっていたということであるし、新規参入については横山さんも話してくれましたけれども、私は料金徴収の適正化とマッチングで進めていくのが現実的と考えていました。
漁業法を改正しようとする場合に、震災時の特区法の、あれは水産庁主導の話ではまったくありませんが、いろいろなことがあったわけです。森さんも一緒にやりましたけれども、あの騒動といいますか、漁業権関係というのはセンシティブなところがあって、関係者の理解を得ることには多大な労力が必要なことは明らかでした。周辺国・地域との漁業交渉が難しい局面になっていることや、それから長官就任の直前なのですが、大和堆をはじめ漁業取り締まりの緊迫の度合いが増した状況でもありました。繰り返しになりますけれども、小さな所帯の水産庁で、法改正が大改正ということになると労力を割く余裕、組織としての体力があるのかという思いは強かったです。そういうことは率直にといいますか、そういうことも含めて、皆さんもその場で聞いていたような話ですが、次官と話したわけですけれども、一方で一番思い出すのは、従来の規定でも企業は参入しているという話をしたときに、定置漁業と区画漁業の優先順位規定は難解過ぎると次官が話していましたが、その部分については同感するところがありました。地方分権一括法のときに、自分は沿岸課の調整第1班班長ということで、今で言うと中村さんの沿岸調整班長なのですが、そのときの改正で漁業権関係が機関委任事務から自治事務になったわけです。移動回遊する水産資源の管理の観点からすれば、自治事務になじむのはせいぜい採貝・採藻の第1種共同漁業権と、養殖の区画漁業権止まりでしょうと当時思いましたし、地方分権を進めるというならむしろ誰に免許するかというようなことこそ地域の特性、創意工夫が生かされるべきだと思い、当時主張もしました。班長でしたけれども、地方分権推進委員会の委員さんにもそういう話をしたりしました。でもそれは入れられなかったですけれども。一方、その後この優先順位規定を捉えて、漁協の漁場独占というような、私から言うと不正確な議論を主張する一部の論者があり、それは問題だなと思っていたことなどを踏まえまして、改正するのであれば、それも大改正に値するものをやるということであれば、この点であると考えたわけです。
一方、共同漁業権については、その内容となる漁業は定置や養殖とは違って必ずしも漁業権に基づかなくて営めるわけで、それでそういう漁業面の話だけではなくて、公有水面埋立法での同意制度など、その海面利用の根本問題に関わることなので、軽々に手を付けるべき問題ではないというのはすごく思っていました。そういった話をしたところ了解が得られて、そういったことならば自分でも何とかやれるのではないか、やってみようという心境になったということです。
せっかくなので少し話したいのですけれども、洋上風力発電を進めていこうという動きも盛んなのですが、元々業種等によってばらばらになりがちな沿岸漁業者の合意形成を図る上で、個々の漁業者の理解を事業者が直接得るのではなく、漁協というものが窓口になり漁業者の合意形成を図るということを、そういう上で、共同漁業権の制度というのが基盤として意味を持っているのです。そういうことは実際にそういう交渉に当たってみないとなかなか実感できないことなのでしょうけれども、大事な話なのでこういう機会に言っておきたいと思います。
あと、水産の関係法律はたくさんありまして、漁業者から見てももちろん、役人から見てもどこに何が書いてあってどの制度が使えるのかがとても分かりにくいという認識はありましたので、できるだけこの機会に束ねたり整理したいという議論を当時はしていました。時間の制約でその後、水産資源保護法も統合は一部だけになりましたし、海洋水産資源開発促進法なども束ね切れませんでした。本当はもっと整理したかったという思いは残っているということです。
矢花:ありがとうございます。少しこの辺りで何名かご発言などあればお伺いしたいのですけれども。
森:私も平成29年の7月に漁政部長として異動してきたときの思い出話になるのですけれども、7月10日付で異動してきたときに、少なくとも何か引き継ぎの段階で、具体的な制度見直しの方向性などがあまり明確には決まっていなかったというような記憶があります。例えば法律の見直しという話については、前任の大杉部長からは、浜プランを法律に盛り込むといったような議論をしているという話を聞いた記憶があります。
個人的には、自分が水産庁企画課長だった時代は、今の積立ぷらすの検討、震災後に特区の問題等の議論、あるいは規制改革のほうでも漁業権の議論をしていた記憶があります。そうした中で、平成22年の漁業白書では、ちょうど資源管理をテーマとして、日本型の自主管理と制度、公的管理を組み合わせてやっていく共同管理というのが必要なのだということを書きました。その後も資源管理がどうなっていくのか、あるいは漁業権などがどうなっていくのかというのは、水産庁を出てからも関心を持って見ていました。
そういった流れの中では、例えば平成27年の資源管理のあり方検討会の中で、そこに多様な意見の委員も入れながら検討した結果として、TACも増やしていくしIQもやっていくのだという方向性は水産庁としても出していました。私が水産庁に来る前にできていた基本計画の中でも資源管理を充実させていくのだと、その中でTACも拡大するしIQも増やしていくのだという方向性は既に出来上がっていたと思いますし、漁業の成長産業化をするのだということも基本計画に書かれています。資源管理と成長産業化を進めていくのだという基本的な方向性については、ある意味綿々と、先ほど規制改革の話等もありましたけれども、特に資源管理をしっかりやるのだという方向性は綿々と続いてきた一定の方向性であり、水産改革議論もその中で進んできたのだというイメージを持って水産庁にやって来た記憶があります。そういった意味では、自分としては、検討がある意味自由にできるのだろうという感じを持ちながら漁政部長になる一方で、特に資源管理をしっかりやるということと、浜の資源・海の資源をフル活用すること、その実現のために、制度なども見直していくのだという意識で議論に加わったということです。
平成29年の7月から9月にかけては、現状分析、それもどういう改革をするか、どういう具体的な方向を目指すのかというのがにじみ出る資料をまず作成し、党とも議論するし、団体とも議論し、9月20日の規制改革会議の水産ワーキング・グループで示していくのだというやり方を始めたと記憶しています。
7月の末ぐらいまでの庁内での議論を踏まえ、このような方向性なのではないかと個人的に整理をした記憶があるのですが、やはり1つは資源管理を充実・拡大するのだと。資源評価の対象を拡大して、それから資源評価手法も精度向上をしていく、それから数量管理・TAC・IQの導入を拡大していく、更に資源管理への公的関与の拡大をしていくのだというようなことであるとか、沖合遠洋漁業の漁船の大型化をするのだということなどを議論していたのだと思います。
それから沿岸養殖業の活性化については、先ほど長谷前長官からもあったとおり、浜と企業のマッチング・連携促進、行使料等の透明化、養殖の特定区画漁業権の制度や経営者への直接免許というのをどう考えるかというような議論をしていたようです。ですので、ある意味大体今出来上がっているものの方向性と、当時7月から具体的な議論を始めた当時やろうとしていたことの方向性というのは、ほぼスイングしていると言えると考えています。役所として、あるいは水産庁として元々やりたいと考えていた方向の中で、具体的な論点整理や現状分析も行われ、それが制度の具体的な改正にもつながっている訳で、まず出発点の方向性や、全体の流れとしては、外から言われてやったということではなく、やはりある意味内発的なこれまでの議論の積み重ねの延長線上にあるような形が、最初のこの時期、平成29年の夏から秋にかけては出来上がってきたのかなというような気がしています。
矢花:ありがとうございます、山口長官のお手が挙がっています。お願いします。
山口:この方向性の検討の中で、もう少し他の人にも話をしてもらいたいと思い、論点を振る意味で発言しますが、(規制改革推進会議の)水産ワーキング・グループの資料を作るに当たって、いろいろと次官室で議論しましたよね。今までの水産庁の見解というか方針をかなり超えた、大胆な方向性を出そうということで、背景なり、エビデンスとなる資料を作るために、特に若い人たちにはご苦労いただいたのではないかと思います。
その中で、水協法の話は後で行うので、漁業法の話をすると、資源管理については、今よりもTACを増やそうとかIQも導入をしようという、水産基本計画に書いてあるレベルのところをわれわれ事務方も想定していました。
ですが、だんだんと数値目標が入ってきて、例えばTACを8割にするということを打ち出しましたよね。この8割という数字がどこから出てきたのか、これも技官の皆さんであったと思いますけれども、なぜ8割なのだと今でもよく聞かれるので、その経緯について紹介してもらえればと思います。
それとIQについても、最初はもう相当先だというような感覚で皆さんもいたのだと思いますが、それを意欲的かもしれないけれども書こうということになった。少し脱線しますが、IQに関連して、ノルウェーの漁業やアイスランドの漁業がいいのだ、模範にすべきだという話が、当時、いろいろな方面から出ていました。齋藤大臣もノルウェー漁業の話を聞いて、すごく勉強されて、自分でノルウェーまで行かれました。資源管理の背景については、先ほど森さんから説明があったように、例えば白書に書いた、資源のあり方検討会でやった、基本計画でやったという内なる流れがあるのですが、一方で外からの働きかけというか、期待といいますか、これがあったということも記述が進んだ要因であったと思います。
そのノルウェーの関係で言うと大規模化です。ノルウェーでは10人ぐらいの乗組員で全てが操業できる1,000トン、2,000トンのまき網漁船があるのですが、日本でもこのような漁船を造るべきだという議論が外からも中からも出たと思います。それに対して、最終的にはIQ化をした船については大規模化も可能とするという結論になりました。
あと、私が当時の議論を聞いていて、へえと思ったのが、許可漁業の一斉更新の問題です。漁船漁業に関する許可漁業の改革として、新規参入導入のために許可の一斉更新をやめようという話もありましたので、これもどういった経緯で議論したのか、説明してもらえればと思います。
水産改革に関する検討事項については長官室に集まって議論していましたが、私たちのところに来る案というのは、いろいろな論点がある程度まとまっていて、それに対して、長谷長官は自分がお持ちの改革の考えに沿って意見をおっしゃっていましたが、次長の私としては皆さんが持ってきたものを見てからああだこうだと、特に文章のスタイルについては水産以外の人たちが読んで分かるものになっているかをチェックしていましたけれども。そういうディテールの話をもう少ししてもらいたいと思い、若い人にも発言してもらいたいと思います。以上です。
矢花:ありがとうございます。「改革の方向性」が先ほど言った第2ステージ、12月までにまとめた部分で、それを具体化したのが30年の6月の「水産政策の改革について」(巻末参考資料1)です。
今お話が出ていましたように、この資源管理のIQ方式の活用、アウトプットコントロール中心でやっていくというのは12月の時点で出ていて、先ほどのTAC8割のような話は6月の取りまとめに登場しています。
許可のところでもIQが割り当てられたら、この数量制限を見直すというのは12月の時点でこのように打ち出して、それを具体化して書いて6月までにやってきました。それから沿岸漁場のところも、この水域を適切・有効に利用しているものは継続できることを基本ということで、ここはもう明らかに漁業権を見直しますというのが出ています。
いわゆる共同漁業権の部分は、共同漁業権はそのままというのはこちらで明確になるのですが、その意識がこの沿岸漁場管理のところで、12月の時点でもう既に出ています。
今、山口長官から指摘のあったIQ、TAC8割の話やIQを導入したところについての数量管理の見直し、あるいは許可のところでしたら一斉更新、これもやめるのだという話など、この辺りについてどなたかご発言ある方はいらっしゃいますか。お手を挙げていただければと思います。アメリカからどうぞ、赤塚さんお願いします。
赤塚:赤塚です。皆さま、お久しぶりです。最初ですので、水産改革の議論と自分との関わり合いのことから話したいと思います。私は平成29年の6月まで国際課でクロマグロが中心でしたけれども国際交渉の担当をしていました。7月に国際課から今度は国内のことをしっかり勉強するようにということだと思うのですけれどで管理課のTAC班へ異動となりました。ただ前任から引き継ぎを受けた時には水産改革の話はほとんど出てこなかったので、自分がこんなに関わるとは想定していませんでした。あと、心の支えだった当時の藤田管理課長が異動の翌週に企画課長に代わってしまい、非常に心細い思いをしたことを覚えています。資源管理については水産基本計画を土台にして議論が行われている印象が強かったです。例えばTAC魚種の拡大については従前から水産基本計画に検討する旨が書かれていましたし、管理目標を入れてしっかり管理していくという考え方も平成29年の計画に入っていたものです。
山口長官から指摘のあったTAC8割の話については、何時登場したかというのはあまり記憶が、少なくとも私が「水産政策の改革について」の該当箇所のドラフトをした記憶はないのですが、ある時の会議で、「水産政策の改革の方向性」にあったアウトプット・コントロールを資源管理の基本とするというところについて具体的な数値目標が必要だろうという議論があって、その結果として漁獲量ベースで8割という記述が「水産政策の改革について」に入ったのではないかと思います。
先ほど矢花さんから言及がありました「水産政策の改革について」にある原則10年以内に目標管理基準値まで資源量を回復させるための資源再建計画を立てて実行するという部分、これは水産基本計画の中にはなく、省内での議論を経て作られたものです。アメリカに来てこちらの資源制度のことを勉強していますが、同じような規定が法律の中にあります。また、太平洋クロマグロの資源再建計画、国際的に決定された再建計画も、親魚資源量を10年で暫定目標まで回復させる、暫定目標達成後の次の目標は漁獲がないと仮定した場合の資源量の20パーセント、すなわち、現時点でのMSYを実現する資源量の代替値まで回復させるということになっており、これは資源管理基本方針で定める資源再建計画の考え方と同じものです。会議において資源再建計画の考え方が出てきた背景にはそういった国際的な事例の存在があっただろうと思います。
矢花:ありがとうございます。この辺りで他にどなたかありますか。萱嶋さんなど、何かありますか。
萱嶋:どうも皆さん、大変お久しぶりです。こういう形でドイツからも皆さんとお話ができるということで、大変うれしく思っています。さて、本当にこのような貴重な機会に私も参加させていただいて、大変ありがとうございます。
私は、この水産政策の改革については8月10日付で環境省から水産庁に異動になりまして、約8年ぶりで水産庁で仕事をさせていただくということになったというわけです。当時、まさにこの水産政策の改革の最初のところが滑り出しをしていた段階で、企画課の中ですと藤田課長の席があり、横に矢花参事官の席があり、それから布施企画官の席があり、その前に横山君がいて、そのまた前の所に私がいるという形になっていて、そういう所で水産政策を、改革をやっていくのだということで資料作り等をやらせていただいたという立場でした。
あの頃を思い返すと、1週間ないし2週間に1回、みんなでいろいろとこう煮詰めていくという作業がまず設定されて、まず企画課の中でいろいろと資料を整理して、他の課にも見せながら長官室に行ってみんなで議論して、それでまた直したやつを、場合によってはそれを何度か繰り返したものを次官室に持っていって、みんなで次官と話して、それでまた議論して、というのを戻していくというプロセスがあったというところは、この過程においては極めて大事で、その中でいろいろな要素というのがだんだん、水産政策の改革の方向性という文章に12月にまとまっていったという形であったと認識しています。
私は元々、役所に入った最初の2年間は水産庁で過ごしていたということもあり、それも企画課だったということもあり、特に漁業権制度についてはいろいろと勉強させていただく機会がありました。その中では、昭和の漁業法ができたときの漁業制度の改革というのが極めて重要なものであり、それはまさに『漁業制度の改革』ということで立派な本にもなっていて、そういったものを何度も読む機会があり、この漁業法という法律は大変すごくみんなの思いが入っているとても大事な法律だと思っていました。
ですので、正直これに手を触れるということはもうとんでもない大事業だというか、生半可な気持ちでこのようなものに触ったらやけどするぞというのが正直思うところでしたが、気が付いたらまさにその改革を担当しろと言われたので、そうなる以上はしっかりと根本的なところから考えなければいけないのだという思いを、まさにその8月の異動のときに思ったということを今でも思い出します。
今言った話もあり、私の場合どうしても頭の中で漁業法の特に漁業権の話が中心になってしまうので、先ほどの山口長官の話にあまり応えられないかもしれないのですが、こうなった以上はしっかりと理屈にのっとって考えると、つまり一方には極論があり、とにかく現状は駄目なのだと。それこそノルウェーやアイスランドなどそういったところがいいから、もうとにかくそういうことをやれという話も、もちろん全く意味のないことを言っているわけではない部分もあるのですが、話としては極端過ぎると思いました。
一方では、もう漁業権というのはすごく神聖不可侵のものであり、これはもうとにかく今こういう制度になっているのだからこれを変えてはいけないのだという声も一方にはあり、それももちろんゆえんがあって作られたものなのだからある程度は分かるのですけれども極端過ぎる、つまり何かとにかく変えてはいけないのだと言っているのも極端だなということを思いましたので、原則的なところをしっかり考えて、みんなが納得できるような形で話を進めないといけないというのは私も思ったところでした。ですので、そういう意味においてかなりその根本までさかのぼって、漁業法というものがどれだけの歴史を持っているかということを考えながらも、むしろ昭和の漁業制度改革はこういう意思で行われたものであるからして、今回は法律をこういう方向で見直さなければいけないのだという理屈でやるべきだということで、いろいろと皆さまと議論させていただいたということを今思い返す次第です。
そういった中では、私も本当にそういったときに長谷長官が、複数の法律を束ねることを考えてみたらどうかとか、いろいろとおっしゃっていただいたということにもかなり勇気をいただきまして、今でも思い出すのですが、漁業法の他にも水産資源保護法などいろいろな法律を全部書いていって、それを全部整理して形を作ってやっていこうというような意気込みが持てるようになったのは、あのときの皆さまのいろいろと前向きなご意見をいただきながらこそできたことだなと思っています。ですからそういった意味では、みんながそれぞれやりたかったことなどを考えていたことというのが、先ほど申し上げた企画課内の議論、あるいは長官室での議論、あるいは次官室での議論で出てきたということが、とにかく今回のこの改革の中でも、特に12月の水産政策の改革の方向性ができるに至った中で重要なものだったのではないかと私は考えています。
矢花:ありがとうございます。
先ほどの山口長官のお話でいきますと、大型化の話や許可の一斉更新、あるいはTAC8割の話も、水産庁内の議論の中で資源管理の対象魚種の数量がこのぐらいでなどという一覧表などを見せてもらいやったような記憶がありますし、許可制度の一斉更新のところは水産庁の幹部が結構前々から考えていたようなお話もあったりしました。結構そういう意味では、具体的な弾込めというのは、それぞれご担当サイドから、こういう改革のタイミングで従来から問題意識を持っていたこの辺を直せばどうかというような提案があったように思うのですが、いかがでしょうか。永田さん、お願いします。
永田:結果的に私は最後の一斉更新があったときの企画課制度担当の補佐でした。29年の一斉更新ですが、そのときにいろいろと当時の長谷次長とお話ししたときも言われたことなのですが、漁業調整の関係から、一斉更新があるたびに沖合漁業の規制を厳しくとか、操業区域を制限しろというような話が、5年に一度あたかも恒例行事のように、実態としては問題は沈静化しているにもかかわらず前回も要望したのだから要望として今回も出しておこうという調子のものまで沿岸サイドから出てくるというので、必要な見直しは何も5年に一度ではなく常時行うという前提で、結果的に怨念を再生産するだけで両者の協力関係構築を築いていかなければならない時に逆に水を差すだけの結果になりがちなその5年に一度の「恒例行事」を何とかしたいという思いが、本音の話としてありました。
あとは、5年に一度しか許可隻数の見直しをしないというような中で、しかもだんだん枠が減ってくるような流れで一斉更新をしてきているというところから、もう少しその状況を見て隻数を増やすなどというのも、元々の制度でもできてはいたのですが、随時できるというようなところを見せていくということがあるかと思っていました。
一方で、実績者は継続許可でやってきているので、先を見た投資などもできるような形にするという、その両方の形で一斉更新をなくすということになってきたのかなと、私なりには理解していました。
矢花:ありがとうございます。藤田さん、お願いします。
藤田(仁):元々われわれが指定漁業制度を運用してきた中では、昭和37年の指定漁業制度の導入そのものが、少し何というか、漁業の実態に合っていないという実感を持っていました。それは漁業がどんどんと外延的に拡大していくときには、枠を広げていくときに機会を均等に設けるというのはいい考え方なのですが、もうそのときには既にあまり外延的拡大の余地はなくて、要するにほとんど、いかに数を減らしていくかという世界になっていて、5年に1回やるときに、では許可の数を減らせるのかというと、実際にはそうではなくて、その5年に1回の間にどうやって減船をかませるかというようなことをずっとやってきました。ですから、そういう意味ではあまり指定漁業制度、一斉更新制度というものを作ったときのその前提条件というのが、満たしているとはとても思えない状態であったというのがあり、それで少しどこかで見直さないと現実的ではないなというのがわれわれにはありまして、それで今回の見直しのときに、漁業法改正をするのであればより現実にあった許可制度にということで、その延長線上で継続許可の話が出てきて、それで継続許可になると自動的に一斉更新の話が消えるということに理屈上なったのではないかと思います。
矢花:長谷さん、お願いします。
長谷:規制についての調整なり見直しというのは必要ならいつでもやりますという考え方とセットで一斉更新はやめようという話であったと理解しています。
矢花:長谷さん、さらに何かありますか。
長谷:改革の方向性をまとめる前の段階で、並行して行われた規制改革推進会議との関係です。12月8日に総理大臣を本部長とする農林水産業・地域の活力創造本部において、「水産政策の改革の方向性」が取りまとめられたわけですけれども、並行して規制改革推進会議において水産ワーキング・グループが立ち上がって、水産政策がまさにテーマに取り上げられて、漁業者や団体とともに水産庁もヒアリングを受けたわけです。
今から話す話は、水協法とも密接な話ですし、規制改革推進会議の議事録として公開されていることばかりなのですけれども。9月20日の第1回のワーキング・グループでのヒアリングでは、有路専門委員から、漁場を使う以上は購買と販売に関しては実際に使っていなくても手数料、口銭を払わないといけないというルールが実際に存在しているというところをどう管理するか、公平性と合理性があるのであれば、漁協でそれが管理されていくということはいいとは思うのですけれども、という発言があり、泉澤専門委員は欠席していたのですが事前に文書か何か出されていたようで、漁協の漁場行使料の設定とその使途について透明性を確保することが必要という意見が出ていました。問題意識としては同じであるなとこの時点で思いましたし、本当はもうとっとと進めていきたいのにというふうにも、そのときに思いました。
その後、11月24日の第7回ワーキング・グループでのヒアリングでは、農林水産業における検討状況についてヒアリングを受けたわけですけれども、私から、輻輳(ふくそう)した権利を調整していく上で今の漁場計画制度というのはわれわれは評価しているとした上で、必要な新規参入を進めていきたいと説明したのに対して、本間専門委員からは、「上手くいっていないところは開放するけれども、その他のところは従来の漁業者を守るのだというようなニュアンスに聞こえてきてしまう」とか「協同組合というのは法律に定められていますけれども任意団体ですよね。私的な団体ですよね、そういう私的な団体にいわば公的な役割を資源管理という形で負わせる、あるいは漁業権の配分を含めて役割を担わせるということに関して、やはり再考する必要があるのではないか。最終的にはそれを漁協に委ねるという形になっても構わないと思うのですが、そのプロセスを明確にして公的な資源管理のあり方、あるいは漁業権の決定機関というものをもう一度整理する必要があるのではないかと思っている。」という発言がありました。
私からは、「適切に適法にしっかりされているという部分について、それは逆にきちんと継続してやれるということを示すことが重要だという認識でおります。そういう方たちと、さらに外部の資本なり、人材なり、技術なり、そういうものが必要という部分をうまくマッチングしていくことが、結果的にスムーズに必要な地域に必要な新規参入が進んでいくと考えている。」とお答えしました。
大田議長からは、「これで本当に漁業が成長産業になるかというと、いささか心もとない感じがします。」という発言がありましたし、「農協と漁協が違うのはもう十分に分かっていますが、漁協が資源管理や漁業権の配分という非常に公的性格の強いものを担い得る組織として位置付ける根拠は何か、そしてそれを位置付ける場合はよほどのガバナンスがなければいけないわけで、そのためのガバナンスをどうしていくのかというところまで含めて具体的な方策をお出しいただければと思います。」との発言がありました。
このやりとりは現行制度への評価で、ニュアンスの違いは当時かなり感じたのですが、一方で大筋のというか文面上の問題意識に違いはないとも思われたのを記憶しています。
矢花:ありがとうございます。今のも関連してとなりますが、清水さんのほうでご発言をお願いします。
清水:私も少し経緯から申しますと、山口長官や当時の森部長と一緒に、7月10日に水産経営課長に矢花さんの後任としてまいりました。私は前任は経営局の協同組織課で室長をやっていまして、まさに農協改革をやっていて、それでちょうどこれから水産改革というところで水産経営課ということで、水協法の改正なのかなということで来ました。先ほどの「水産政策の改革について」の文言でも、漁協については「農協とは法制上もかなり異なっていることを踏まえつつ」という文言が入っています。これはやはり農協改革、農協法改正の直後であったので、何かと比べられるということでした。
農協改革では中央会制度が廃止、全中も解散し、一般社団法人に組織変更されました。さらに、農協の監査を公認会計士監査にするということ。そしてあとは准組合員制度です。農協の場合は地域住民なら誰でも准組合員になって組合事業を利用できるということになっており、准組合員数が正組合員数を上回る状況になっており農協は農業者のほうを向いていないのではないか、という批判があったということなのですけれども、ここで「法制上もかなり異なっていることを踏まえつつ」というフレーズが入ったのは、漁協には中央会制度はないということが一番大きいのではないかと思います。
全漁連が経済事業もやりながら漁協の指導をやっているということ、そして准組合員制度については農協と違って、組合員の家族や水産関係者に限られています。そういうことも踏まえて、「法制上もかなり異なっていること」というのが入ったのかなと思っています。
一方で、これまでの議論があったとおり、漁協のほうはやはり農協と違って漁業者中心の本来的な漁業者の組合、漁民の組合であり、協同組合組織として典型的なものとなっている一方で、組織も脆弱(ぜいじゃく)ですし、村のしきたりというか、今の時代から見ると前近代的な部分もあり、それがまさに先ほどから出ている料金徴収や、あるいは漁業権管理組合の問題もそうだと思いますけれども、そうした部分があり、やはり規制改革のほうからもその点を指摘されていたのかなと思います。
そういう中で、「水産政策の改革について」でも、料金徴収の適正化について、いわゆる全漁連の適正化事業、この5の(1)⑤の、全漁連は漁協における団体漁業権や漁場の管理に係る業務の適正化を図るための事業を行うということが盛り込まれました。
もう一つ、監査の部分については、これは農協で公認会計士監査がスタートするということで、もう既成事実的な感じでは皆さんは受け止めていたとは思いますが、全漁連と相当いろいろな議論もしました。
その際、(全漁連の)総合政策部会でしたか、当時の山口次長にお越しいただいて説明するときに、最初はイコールフッティングだけで説明をしていたのですが、少しそれだけでは足りないということを山口次長からも言われて、超低金利状態で金融情勢は極めて厳しいので、健全性をしっかり確保していくためにも公認会計士監査が必要なのだということを付け加えてご説明をして、その後もずっと説明会でもそういう説明をして、そういう形で系統のほうには納得いただいたということで、系統のほうもしっかり理解はしていただいた上で監査が入ったのかなと思っています。取りあえず、以上です。
矢花:では加悦さん、お願いします。
加悦:経緯等については今清水課長からお話がありましたので、私は漁協による不透明な料金徴収と規制改革との関係について、前提も含めて少しお話をさせていただきたいと思います。
私がこの問題に対応したのは平成27年、2015年のときに水産経営課の指導第1班長になってからです。その当時は農協改革が進められていて、それに応じて漁協改革はどうするのかということを議論していたのですが、その一方で当時の増殖推進部長であった長谷さんから、漁業権を守るという観点だけではなく、漁業権について議論する上では不透明な料金徴収というものをきちんとしていかないと、漁業権の正当性が主張できなくなる、というようなことを直接呼ばれて、その中でいろいろやってくれという話を受けました。その結果、それと同時並行で、まさに規制改革からも同様の話が来た上で進められていたと思います。
ですから、規制改革に言われたから料金徴収の透明化をしていこうというよりは、私自身は長谷さんから、沿岸漁業の基本となる漁業権をしっかり守る、それを管理する漁協をしっかりしていくのだということでスタートしたと思っています。
規制改革での議論もありましたし、自民党の規制改革委員会での議論もあり、料金徴収がひどいという一部の漁協の内容を全ての漁協にあてはめるような、議論がなされていたときに、しっかりとした透明性を持った、行使料も含めた料金徴収を行っていくこと。このような流れの中で、水協法も漁業法と併せて改正するというところになり、結果としては漁協の役割として漁業権管理の公的役割というものが資源管理をしっかり行うという意味でも位置付けられていったのだと思います。そういう面では漁協が浜において漁業者のための組織であるということを明確に、法律上というか制度上明確にした改正になったのだと思います。
あと現実的には、その役割を担えるような漁協の力量がかなり低下していると、自分が水産経営課を離れてからも非常に思います。漁業法でも沿岸漁場管理制度が位置付けられましたけれども、そういった本質的な意味をしっかりと系統が考えて実践していくということが大事かと思っていました。
矢花:ありがとうございます。今少し漁協絡みの話中心になっていますけれども、この関係でどなたか他にご発言ありますか。長谷理事、お願いします。
長谷:全漁連の話が結構出たので、このことだけは少し言っておきたいのですけれども、「浜も変わらなければならん」というのが以前からの岸全漁連会長の口癖でした。農業改革なども見てきて、抵抗勢力の烙印(らくいん)を押されることなく、そうではなくて自らこの機会を改革のチャンスにしようという、改革のイメージが微妙にこう、それは当然人それぞれで違うかもしれないけれども、チャンスにしようという根本のところでの思いは共有できたというのが、今回はとても大きかったということは言い残しておきたいと思いました。
矢花:ありがとうございます。この辺で山口長官お願いします。
山口:全漁連の改革というか、漁協の改革については、農協改革とは異なる側面があると思っています。農協改革がなぜあのような形になったかというと、組合員たる農業者が、その中でも専業的に農業を営んでいる担い手や農業法人が、農協に対して強い不満を持っていたことに原因の一端があると思っています。自分たちの営農のために農協が働くというよりも、信用事業や共済事業といった営農と直接関係しない事業がメインになってきて、要は真の農業者の声に応えていないということが改革を求める内なる声になっていたのです。
一方で漁協の場合には、漁業者のほとんどが漁協の存在というのを肯定的に考えています。多かれ少なかれ文句を言っている人はいるかもしれませんが、漁協がない状態を想定したり、漁協なしで自分たちの事業ができると思っている方のほうが圧倒的に少なくて、やはり漁協にしっかりしてもらわなければいけないと、また漁協が言うことであればわれわれも信じるという方が多かったと感じます。そういったことで、農協とは改革の方向性が異なりましたし、また改革の原動力も違ったと思います。
矢花:では森さん、ご発言をお願いします。
森:全漁連と水産庁で連携して取り組んだというところはやはり欠かせないところであったと思います。
他方で、彼らなりにやはり現場あるいは各県連、あるいは各単協との関係で、守るべき部分というのは守らなければいけないという意識が非常にありました。例えばこれは後の話かもしれませんけれども、漁業法の「漁場の適切かつ有効な活用」という考え方については、やはりそれをどう現場に下ろしていくかという点を、かなり彼らとしても、中でも議論したのでしょうし、それを水産庁に投げ掛けて、水産庁側もその考え方をある意味きちんと改めて整理をして、われわれ自身の資料なり考え方もブラッシュアップしたというところもありました。そこはある意味よく議論ができたおかげで、われわれも自身の議論をブラッシュアップできたし、対外的に説得的な説明ができる理屈というのを作り上げることができたというのは大きかったのではないかとは思います。
矢花:ありがとうございます。この関係で何かご発言はありますか。長谷さん、お願いします。
長谷:もう経緯ではそんなに話しませんけれども最後に、6月1日に活力創造本部で「水産政策の改革について」が取りまとめられたわけですけれども、その直前というか5月15日には、規制改革推進会議の第15回のワーキング・グループが開かれています。委員間の自由討議ということで、私は出席していなくて山口さんや森さんがオブザーバーとして出席した回です。
このとき本間専門委員から、「漁業権と漁協に手を突っ込めば変わる、あるいは改革できるという話でもないと思うので、そこは漁協と組合員の意識改革をどう促すか、そのためにどういう制度改革が必要なのかという議論が必要」という発言がありました。今改めて議事録を読み返して、そのとおりだと思います。
法律を変えれば意識が簡単に変わるほど世の中は甘くありませんけれども、法改正があって予算の増額があって、それと相まって現実に骨身にしみる話として、資源の変動や来遊変化、それに今回コロナ禍というものまで加わり、社会が変わらざるを得ないという思いが今本当に広がっていると思いますから、この機会に意識を変えなければいけないということについて、それなりに浸透してきているのではないかと思いたいですね。
それで5月31日、本当に(活力創造本部の)直前ですけれども、第17回ワーキング・グループで改革案を説明しましたけれども、座長代理の原委員から締めの発言として、「専門委員が求めてきた改革の方向性に基本的に即したものだ」という発言も得られて、やっとかなり擦り合わせが進んだという印象をその時点で持ちました。
矢花:ありがとうございます。藤田さんなど何かありますか。
藤田(仁):印象としてあるのは、異動してから半年ぐらいでもう12月に改革の方向性を出したわけですよね。それが水産の技術屋的には、農林水産業の創造本部だったわけです。創造本部そのものがあまり水産的には身近なものではなくて、農業の世界のものだという感覚が何となくあり、基本計画が終わった後にまさしくそこに何かを方向性というか政策的なものを何か位置付けて出していくのだというのが、最初はぴんときていませんでした。
そういう中で、かなり水産庁内でどんどんもんだやつを形にして出していったので、その中で団体あるいは都道府県との関係で、どういう形でその問題意識を持ってもらうかとか理解を求めるかというところで、すごく難しさを感じたというのが印象に残っています。
矢花:ありがとうございます。森さん、どうぞ。
森:6月までの議論の整理という中で言うと、資源管理のことをしっかりやるのだというのは、それは1つの大きな柱ですけれども、やはりもう一つは海面利用調整について、いわば水域を適切かつ有効に活用している者がその漁場利用を継続できるのだと、それは許可権者である都道府県が判断することであって、優先順位という固定的なものではなく、適切かつ有効利用という1つのメルクマールで考えていくのだという考え方ができたことと、更に特定区画漁業権で言えば、共同漁業権はともかく団体漁業権という概念が維持された、守られたこと、その意義が制度的にも改めて認められたというところは、非常に大きなことだと思います。
前段のほうの水域の「適切かつ有効な利用」で、優先順位というものを見直していくという考え方は、私の記憶ではかなりこれは長谷前長官の従前からの思いが、かなり最終的に制度に反映されたものであろうと記憶していますし、あと団体漁業権の必要性・重要性というものを議論する上ではいろいろな対外的に説明する理屈というのを事務方、若い人たちも含めてきちんと整理してくれました。
この資料(巻末参考資料2)については覚えておられると思いますけれども、例えば養殖については、区画をいろいろと毎年調整をしなければいけないのだと、そのためにはやはり団体に付与するということが必要なのだというようなことを、説得的に説明する資料としてこれはかなり活用できたと思っています。こういう団体漁業権の維持などの必要な理屈も含めて、12月から最終的には6月の方向性の中にも、しっかりと改革の中にも盛り込まれたことには、非常に大きな意義があったのではないかと思いますので、その辺りに少し関わられた方の経験・思い出のようなものを聞いてみたいという気はします。
矢花:ありがとうございます。中村さん、どうぞ。
中村:今森部長が言っていただいた団体漁業権が残ったというところは、改革の説明で実際に浜回りなどをしたときも、そこら辺は助けになったところかと思います。特に魚類養殖で改革にいくまでに、一行使者問題というのはありまして、またその特定区画漁業権で一行使者しかいないのに漁協に免許しているという、制度的な建前からすると批判を受けてきていた部分ではないかと思います。ではこの団体漁業権になってどうしていくかというところも完全に詰め切れていない部分かもしれませんけれども、そこら辺の使い方としては将来の幅という意味ではまだあるのではないかと思っています。
適切かつ有効もできて、これまでも実際どうするのだというようなことはいろいろなところでも言われてきましたし、国会の中でも多々出てきて、その都度長官の答弁なり大臣の答弁なりで積み上げていくとともに、ガイドラインという形で最終的に出来上がりました。技術的助言という形のガイドラインというところでまとまっているものを、少し先の話になってしまい申し訳ないですけれども、では実際にどうそれはチェックされて次の令和5年の切り替えに生かされていくのかというところが、今考えているところです。
そういう意味でも、適切かつ有効というのが優先順位の1つではあると思いますが、初めに長谷さんから話がありましたけれども、その法定の事細かにあった優先順位がその地域に応じて判断できるものといったところにどうつなげていくのかというのが、まだ運用のところで検討、しっかり詰めていかなければいけないところなのではないかと思っています。
矢花:ありがとうございます。
山口:すいません、勝手に差配しますけれども、漁船漁業の生産性向上という話も、これは「改革について」の中から出てきて、ここは木村さんがやっているから少し木村さんにも発言してもらいたいし、塩見君も発言していないので、あっ冨澤さんもいる、その2人も「改革について」までの話で、1人ずつ思っているところを言ってもらうといいのではないかと思いますけれども。
矢花:ありがとうございます。そうしたら、たこ部屋チームの皆さんはまだ発言をしていないので、ご指名のあった木村さんからいってみますか。お願いします。
木村:自分は平成30年4月に水産庁に戻ってきて、それまでは宮崎県で3年ほど働いていました。この流れを意識したのは、平成29年12月の方向性が世に出たときでした。宮崎県でも漁業の現状はいろいろとありますし、漁業権もそうですし、漁業許可でいっても特に最近カツオも採れないから減っていますけれども、私が宮崎県にいたときからカツオ船の後継問題というのはあったので、そうした問題意識を持って入れたので、ありがたかったというところです。宮崎県では資源評価を毎年一生懸命やっていて、結構県レベルでもこういう意識があるのだと思っていたので、改革の流れ、資源管理目標を作っていくというのはいいなと思いました。
生産性については結構ふんわりした概念ではあるのですが、漁業者が減少していったり、いろいろと状況が厳しい中で、どうにかして経営を維持するという手段の1つが生産性の向上だと思います。そういう意味では漁業許可だけではなく養殖についても、極論では団体の漁協もそうかもしれませんが、生産性を上げていくという概念は重要なのだろうと思います。
そういうことで、示されていた水産改革の方向性というところを、きちんと法律の中で現場に合う形で仕上げていくというのが自分のやることなのだなと思いながら、着任して議論をやらせていただいたというところです。
矢花:ありがとうございます。ではちょっと、発言されていない藤田さんいきますか、藤田晋吾さん。
藤田(晋):今回の水産改革に携わったこと、また、このような振り返りの場に参加させていただいたことを本当にありがたくうれしく思っています。最初の発言ですので、当時、私が参加させていただくことになった辺りの話を、個人的な話になりますが少しいたします。
私が水産庁企画課に配属となる直前は、大臣官房政策課にいまして、省内全体の政策改革の進捗(しんちょく)管理をする仕事をしていました。水産改革は平成30年ですが、平成28年から農業資材や農産物の加工・流通改革、29年は市場改革や林野改革があり、続けて水産改革という形になっていったと記憶しています。そういう立場にいましたので、まさに今、経緯の話がありましたけれども、大臣官房という逆の立場から、議論を聞いておりました。
水産改革の議論について、私は「水産政策の改革の考え方」を取りまとめるため資源管理、免許、許可等、どれを取っても根底からしっかり議論していると思っていました。他方、これを一つ一つ法改正に結び付けていくとなると、とてつもない大改正になるのだろうとも思っていました。多分一つだけでも大改正に相当するものだけれども、それを3つも4つも同時にやってしまうということになると、これはすごいことになると思っていまして、当時、水産庁には横山君、萱嶋君、今日は不参加ですけれども布施君がいて、彼らがこれからしっかり頑張るのだろう、などと思っていたのを記憶しています。そうしましたらあるとき声が掛かり「水産庁に行くんだぞ」という話になりまして、身の引き締まる思いをしたのを今でも覚えています。
水産庁に配属の後、皆さん方と議論をさせていただくと、やはり大臣官房で聞いていたのはあくまで断片的な話で、その根っこの部分で非常に深い議論の積み重ねがあったことがよく分かりました。それで、私として何が貢献できるのかといろいろ考えましたが、中身はこれまでの検討の積み重ねに委ねることとして、自分としては、ちょうど2年前に農政改革関連の法改正を担当した経験がありましたので、これから先「水産政策の改革の考え方」がどのように条文に進化し、それで、時に内閣法制局等との間で挟まることもあるだろうと、そういった様々なことが起きることはある程度予測が付きました。したがって、そういう経験を共有していく、それで山登りで言えば道先案内人のようなことをするのが自分の役目と思って法制局参事官や水産庁幹部の皆さまとうまく議論させていただくなど、それが自分の仕事だと思っていたということです。
矢花:ありがとうございます。あと発言していないのは塩見さん。
塩見:私も藤田企画官や木村さんたちと同様平成30年の4月ですか、呼んでいただきました。前職で農村振興局にいまして、諫早湾干拓の訴訟をやっておりました。ある程度訴訟が大きな転換点を迎えたところで、では次は漁業をやるのだと言われて、たこ部屋に入れと言われて、大変緊張した記憶はあります。また特に着任した当初は法案はいつ出すのだ、というところはまだ全然定まってもいませんでした。ただ、長谷理事がおっしゃっていたとおり、いろいろな法律をこの機会に統合するにはどうしたらいいのだとか、萱嶋さんもおっしゃっていましたけれども、4月の当初というのは結構そういう大きな話がまずメインであったなという記憶があるところです。
一方で、国会(質問)も頻繁に当たっているところもあったので、検討と国会などの目の前の仕事をどうやって両立させていくのか、なかなかどこまで法案そのものの検討が進むのだろうかとか進められるのだろうかなど、力点の置き方が少し難しいようなことを言いながらやっていた記憶があります。
6月まではひとまず改革の内容を政府として決定するその取りまとめのロジをどのようにして完結させるかというところでした。ふと気付いたら6月になっていて、臨時国会に向けた法案提出もありうる中でさあ具体的に法案をどうするかというふうになっていたかなというのが、その横紙(「水産政策の改革の考え方」)の取りまとめられるまでの動きの記憶です。
矢花:ありがとうございます。あと冨澤さん、いけますか。
冨澤:今回来られている皆さまの中では私が最後に法改正に参加させていただいたかと思います。いつこのたこ部屋に入らせていただいたかというと平成30年の6月、先ほどから少しお話に出ている横紙が決定された後に、このたこ部屋に入らせていただきました。それまではどこにいたかというと、元々平成29年の1月まで企画課にいまして、当時は担い手も担当していて、この水産基本計画の議論が始まったぐらいでした。当時、水産基本政策小委員会から水産基本政策委員会という形に変わって、担い手のほうの議論が一通り終わったくらいで瀬戸内海漁業調整事務所に行って、そこからは、出先ということもあって外から水産庁(本庁)の動きを見させていただいたところです。
基本計画が成立したのが、29年の4月、さらに瀬戸内海漁業調整事務所で12月ぐらいに改革の方向性などを見て、水産庁はこんなにすごいことをやっていくのだな、というのを外から見させていただいたところでした。
年度が変わったぐらいで、では次はたこ部屋に異動、というお話をいただいて、6月にたこ部屋に入らせていただいたところです。当時よく覚えているのは藤田企画官、塩見さん、萱嶋さんのほうで検討されていた漁業権のお話と、あと布施企画官、木村さん、あとちょっと今日来られていない牧野さん、この3人で検討されていた資源管理の2つの体制でやられていて、まずどちらに入るかというお話になりました。
私は法律は全く、議員立法や閣法などすら知らないような、そのようなところから始まっていたのと、やはり瀬戸内海漁業調整事務所でも現場の皆さんから資源管理は重要というお話があったので、まだいくらか知見が生かせる資源管理のほうに入らせていただいて、主に庁内の調整などをやらせていただいた次第です。なかなか法令に関しては全く知識がない中なので、ロジ関係が主でしたけれども、大変貴重な経験をさせていただいたと思っている次第です。