水産振興ONLINE
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2021年9月

内水面漁協による環境保全活動について

玉置泰司(国立研究開発法人 水産研究・教育機構元中央水産研究所経営経済研究センター長)
坪井潤一(水産技術研究所 環境・応用部門 沿岸生態システム部 内水面グループ主任研究員)
阿久津正浩/高木優也/久保田仁志/吉田 豊/小原明香/山口光太郎/関森清己/星河廣樹/澤本良宏/傳田郁夫(主担当者)

第1部 中央水産研究所経営経済研究センター調査

国立研究開発法人 水産研究・教育機構
元 中央水産研究所経営経済研究センター長

玉置泰司

結果及び考察

3. 内水面漁協への聞き取り調査の結果
B. その他の環境保全活動の実施状況について(つづき)
(16) 山形県:最上漁協
ア.河川清掃

漁協内の4つの地域毎に日を決めて実施する。アユの解禁が7/1なので、どの地域も解禁前には終えている。真室川地域では2019年6月16日に予定しており、組合員総出で2時間ほど実施する。ボランティア活動である。ゴミ袋とゴミの処理は行政が負担する。ゴミの運搬は自前で実施している。ゴミ袋数十袋位集まる。5年ほど前から、新庄市にある大和工営という河川測量会社からも社員が20~30名手伝いに来ている。

イ.外来魚駆除

国交省がゴミを取るために設置したヤナがあり、管理の委託は町を通して漁協がおこなっている。8月から10月一杯に20~30尾のブラックバスが捕れるので廃棄処分にしている。

ウ.産卵床造成

アユの産卵床は2018年度までは人力で石おこしをおこなった。2019年度は重機で50m2ほどを3カ所バケットで掘って実施した。1カ所当たり2時間位の作業で、1日で3カ所実施した。県の漁業振興資金で15万円まで半額補助が出る。地区が自己負担をおこなう。

ウグイの産卵床は瀬付漁という伝統漁法のために産卵床を手作りし、投網で取る。

エ.カワウ調査・駆除

県内漁連の指示で定点調査をおこなっている。県内漁連はドローンを購入してドライアイスによる駆除をおこなっている。

オ.子供体験放流

サケの里親放流を真室川、鮭川、戸沢の各小学校で地区ごとに実施している。また、鮭川村が仲立ちとなり、荒川区の2小学校も一緒に実施している。発眼卵を500粒ずつ各小学校で育て、大きくなると餌をやり、3月末に持ち寄って地元小学校と一緒に放流する。

カ.草刈

6、7、9月に1回15人ほどが出て朝に実施している。町から1回10万円が出る。真室川と鮭川の2地区で実施している。

(17) 秋田県:鷹巣漁協
ア.河川清掃

「米代川の環境を守る会」と一緒に流域一斉清掃を行う。2019年は9回目で8月第1週を予定している。守る会のメンバーは、川沿いの自治会が多い。他はカヌーのクラブが2団体、カヌー製造会社、ラブリバーネット北秋田など。
他に水産多面的事業によるゴミ拾いを11月に1回実施。ボランティアを入れて8~9人で3~4時間実施。

イ.草刈

水産多面的事業により、7~9月に4回実施。1回10人で3~4時間実施。

ウ.河川浄化等の啓蒙・宣伝活動

水産多面的事業により米代川の一斉清掃の宣伝を実施。

エ.水質汚染・不法投棄の監視

監視員から漁協に情報を提供し、漁協から県に連絡する。農業用のビニール袋が大量に廃棄されていた時は、国交省から警察に被害届を出した。

オ・河川管理者・事業者との協議

国交省との意見交換の実施や建設業者が工事をする際には漁協に説明に呼んでいる。

カ.外来魚駆除

沼にいるブラックバスが川に流れ出すため、沼のブラックバスの駆除を過去に実施したが、ヘラブナ釣り人から、ヘラブナが網にかかり傷が付くのでやめて欲しいとの要望が出たため、最近はやっていない。

キ.カワウ駆除

エアライフルによる駆除について、県から2017年捕獲許可が出たので、専門家を呼び勉強会を行ってから、駆除を行った。2018年は200羽、2017年は100羽駆除した。外部のハンターと組合員のハンター各1名で実施し、2人で駆除料は折半している。

ク.環境学習ふれあい体験活動

水産多面的事業で実施。伝統漁法としてアユやな体験を行う。養殖したアユを流してつかませる形。その日は友釣りも橋の上から見せる。特採許可を取って刺し網、ふくべ、小型定置などの仕掛けを入れてそれも見せる。アユを食べさせ、川ガニ汁もふるまう。9月の中頃に行うが、子供を集めるのが大変である。スポーツクラブに入っている子供が多く、9月は大会が多いため、そちらに人が取られる。

(18) 兵庫県:加古川漁協
ア.河川清掃

水産多面的事業により10月~12月中旬にかけて、8市1町の12カ所で地域毎に別の日で実施する。土日中心に3時間程度実施。

イ.河畔林手入

渓流魚が3月1日に解禁なので、2月末に実施する。組合役員を中心に7~8人で3時間位の作業。漁協独自の作業で、1時間当たり1千円の手当を支払う。

ウ.水質汚染・不法投棄の監視

監視員2名がパトロールして、遊漁券の現場売りを行っている。その際に気がつけば連絡する。

エ.河川管理者・事業者との協議

河川管理者は年度計画を説明しに来る。河川工事の際は、業者に工事時の環境保全対策を確認している。

オ.カワウの防除・駆除・調査

繁殖地の竹藪4~5カ所で漁協役員・代議員中心にテープを張る。下流域は銃器を使用できないので11/15~2/15の狩猟期間に70羽前後駆除する。丹波市の猟友会と協定を結び、1羽5千円を支払う。左右の足を切って県内漁連に提出する。

カ.子供体験放流

アユの放流体験を実施している。

キ.環境学習・ふれあい体験活動

水産多面的事業で実施。河川清掃と投網講習、川の環境や生き物についての講話、アユのつかみどり・塩焼きを実施。

(19) 和歌山県:有田川漁協
ア.河川清掃

年に1回地区ごとに実施する。各区長が主体となり実施。漁協がある当地区では、組合員やそれ以外の住民が100人くらい集まり、半日がかりで実施する。ゴミ袋の提供や処理は町が担当する。大きなゴミは重機でダンプカーに乗せて回収。30年位の歴史がある。元々は「道そうじ」という行事で、盆休みと年末12月中旬の2回実施していた。

イ.河川浄化等の啓蒙・宣伝及び水質汚染・不法投棄の監視

監視員が釣果を見ながら河川を回る際に、釣り人に弁当がら等を捨てないように呼びかけている。監視員自身が常にゴミ袋を持参しており、1週間で3袋分位は集めている。

ウ.外来魚駆除

2月から3月にかけてブラックバスとブルーギルの駆除を、網丈2m位で長さ30m位の刺し網で行う。10人位で半日の作業。2019年は神戸大学の学生も応援に来た。

エ.魚道の整備管理

宮原頭首工の左岸側の魚道が壊れていたので県に要望を出して改修をしてもらった。

オ.カワウ防除・駆除・調査

鉄橋から下は鉄砲禁止のため、爆竹で追い払っている。カワウの飛来調査は5月から開始した。10名の監視員を任命して月に1回同時に観察する.区間を分けて夜明けから2時間の間実施。数を数えたらあとは銃器駆除しても良い。組合員4人と猟友会6人が散弾銃で駆除。撃ち落としたカワウからくちばしを切り取り、カワウは5千円(アオサギ3千円)。2018年の駆除数はカワウ159羽、アオサギ20羽で、2017年はカワウ428羽、アオサギ220羽であった(図20)。

図20 駆除したカワウのくちばし
カ.子供体験放流

2019年は保育所の園児とアユの放流を実施した。

キ.環境学習ふれあい体験活動

2018年8月に実施。関東の建設会社が従業員家族とバスツアーで、小学生40名に簡易プールでアユ800尾のつかみどり、氷を提供して持ち帰らせた。別にアユ100尾を焼いて提供した。旅行会社とタイアップして実施した。

(20) 和歌山県:玉川漁協
ア.河畔林手入れ

2019年3月下旬に倒木が2~3本川をまたいでいたので、県に依頼して撤去をお願いした。漁協も撤去作業に立ち会った。また同年5月25日には、6月2日の解禁前の入川路の整備で、草刈り機やチェーンソーにより実施。はしごの設置も行った。役員16人中10人程度が参加した。半日仕事で無報酬。草の処分は町が協力。

イ.河川清掃

アマゴの入川路の整備を含めて年間最低8回程度行う。内訳は市町村や地区の清掃活動への協力の他8月20日前後に漁協独自でも実施。10人近くが参加し半日仕事。

ウ.水質汚染・不法投棄の監視

監視員は朝8時から15:30位までアユの釣れた数をカウントしながら歩いて行くが、8月10日前後はキャンプ利用者で混雑するため、ゴミの持ち帰りの声かけを実施する。

エ.カワウ防除

銃器駆除はやっておらず、爆竹による追い払いと、2~3人一組となりリール竿でテグス張りを行う。1,000m巻きのテグスを6個位使用する(図21)。

図21 カワウ防除用の爆竹とテグス
オ.子供体験放流

2019年4月に小中学校生徒10人前後と保護者とともにアユ稚魚の放流を実施した。

(21) 新潟県:魚沼漁協
ア.河川清掃

毎年10月第1日曜日に地区ごとに一斉に河川清掃を実施している。実施日は各支部の自主性に任せているので、それよりも早く実施する地区もある。多い地区では組合員の半数近くが参加する。粗大ゴミは河川管理者に処分費をお願いする。地区によっては日当を支払う所もある。地域住民や業者等の協力はない。

イ.外来魚駆除

県内漁連の補助事業によりコクチバスの産卵床による駆除を実施。ため池の中にいるものは、工事で業者が水を抜く際に組合が立ち会い、業者が処分する。

ウ.水産資源調査

アユの試し釣りの実施。

エ.産卵床造成

アユの産卵床を毎年4カ所位造成する。2週間位掛けて2人位ずつ作業する。1カ所5万円の手当を漁協から支払う。

オ.魚道の整備・管理

県が造り、農業用水を取水する土地改良区に管理委託している。漁協は異常があれば改善を求めているが、出水で詰まってもなかなか直してもらえない。

カ.カワウ防除・駆除

銃器駆除は猟友会に漁協から依頼して、案内人及び確認者として漁協からも同行する。脚やくちばしは取らず、猟友会には出動日数に応じて支払う。2018年は88羽、2017年は137羽駆除。延べ人数は猟友会と組合員合わせて2,000人日。ロケット花火は漁連の助成金が5~10万円花火代として出る。各支部・分会やオトリ販売所にも配付する。カワウは5月末にアユを放流すると集まってくる。ロケット花火の打ち上げはボランティアによる。

キ.子供体験放流

いくつかの小学校とサケの稚魚放流を実施している。

(22) 新潟県:糸魚川内水面漁協
ア.植樹

海面漁協(糸魚川支所)と共に民有地にブナの植林を行う。ブナの苗は市が斡旋。10人位の半日作業。2018年からは実施していない。

イ.河畔林手入れ

6月(アユのシーズン)と10月(サケのシーズン)に入川路の整備で実施する。河川敷の樹木は県が何百トンと伐採工事を行う。除根も行い、水の中で洗うので濁りが出る。

ウ.河川清掃

市役所が主体の清掃活動が4月に実施される。漁協からは4~5人がボランティアで出る。半日仕事。

エ.河川浄化等の啓蒙・宣伝活動

組合の独自予算で30カ所ほど看板を立てた。国交省や県の許可を得ないと立てられず、釣りの解禁中だけに設置して12月には回収するように指示される。

オ.産卵床造成

イワナは2018年の12月に初めて1カ所(180m2)造成した。工事業者の協力を得て重機を用いた。ウグイについては手作業で各河川3カ所に造成した。毎年同じ場所に造成する。作業は2時間ほど。ウグイは漁業権対象だが食べる文化はこの辺ではない。

カ.魚道の整備管理

河床が下がって機能していないなど、ひどい所が多く、写真集を造り県や国に要望を出したが、予算がない等直してくれない。

キ.カワウ防除

カワウはほとんどいない。見つけた時に爆竹を鳴らす程度。

ク.子供体験放流

毎年小学生と実施している。

(23) 高知県:仁淀川漁協
ア.植樹

越知町の黒森山という町有林は町が伐採した後裸山になっていた。漁協として植樹をしたいと依頼した。2009年に緑と水の森林基金の支援を用いて、組合員、県・市町村職員、一般公募のボランティアにより、1haに広葉樹1,600本を植樹した。その後7市町村から成る仁淀川流域交流会議から補助金をもらって実施した。漁協からは役員が19人出て、地域の人が20人位、合計100人位で半日くらいボランティア活動する。2016年に、19団体による「仁淀川流域山林保全育成の会」ができ、そちらの活動となった。交流会議で全額補助する。なお、2019年から山を変える。民有地で保安林の指定をしていた所が伐採して3年が経ち、県が植樹を催促しても所有者ができないとのことで、2019年10月末から11月初めに広葉樹を1,000本植える予定。

イ.河畔林手入れ

各地区で入川路の確保のため地域の河川の中の樹木を草刈り機で伐採する。漁協単独のボランティア活動だが、県への申請が必要。

ウ.河川清掃

国交省との間で2004年から「ラブリバー仁淀川パートナーシップ」の合意書を結び、定まった区域の河川清掃を行う契約を結び実施している。これ以外に漁協独自に7地区で河川清掃を実施している。

エ.水質浄化活動

製紙工場の排水について、漁協で働きかけた結果、2010年には沈殿方式の浄化施設が完成した。2010年から鉄団子の投入なども実施した(図22)。

図22 浄化施設
オ.河川浄化等の啓蒙・宣伝活動

看板を設置している(図23)。

図23 設置された看板
カ.ヨシの保全・管理活動

ヨシ原が多く、刈り取ったものは乾燥させてから、消防署に野焼きの許可をもらい、焼却している。

キ.水草・水生植物除去

オオフサモ(特定外来生物)が支川の加茂川に繁殖したため、地区の組合役員が国交省や地域行政、地域住民と共に駆除している。下流にネットを張り、重機で取り上げてトラックで処理場に運んで焼却処分をしている。漁業権はあるが、遊漁を行う場所ではない。

ク.外来魚駆除

秋口前後に刺し網でブラックバスの駆除を行う。各地区と漁協管理部が実施する。県に特別採捕の許可を得て実施している。2017年までは支川毎に期間を指定して許可を得ていたが、2018年からは1年間全河川に許可が変わった。

ケ.水産資源調査

西日本科学技術研究所に委託してアユの遡上量を調査している。また、2018年から10月末から毎週水曜日に県の内水面研究センターと協力してアユ仔魚の流下調査を実施している。

コ.産卵床造成

10月中旬にアユ産卵床を1カ所、2kmの範囲でじょれんや鍬を用いて手作業で造る。漁協理事16人と、地域の組合員、友釣り連盟等25人くらいで造成する。

サ.魚道の整備・管理

魚道は四国電力の管理区域であり、魚道が機能していない場合は改修の要望を行う。

シ.カワウ防除駆除

ロケット花火による追い払いと、猟友会による駆除を行っている。年間400羽近くを駆除する。また、産卵場造成の際には糸張りも行っている。

ス.子供体験放流・環境学習ふれあい体験活動

小学生の親子ふれあいバスツアーを実施し、親子120人位が参加する。アユの放流体験、アマゴ釣り堀、アマゴつかみ取り、森林組合の方から講義を実施し、焼き鮎を提供した。流域交流会議からの援助もある。

(24) 高知県:奈半利川淡水漁協
ア.植樹・森林保全

北川村・高知県と漁協が契約書を交わし、「共同の森」に植樹を行った、最初は宗ノ上地域で5年間、その次は島地域で3年間実施。間伐は漁協が森林組合に経費を支払い、作業をお願いした。これまで同様の試みをビール会社やJTなどが行っていたが、漁協としては当漁協が初めてであった。

イ.河畔林手入れ

6月1日のアユ解禁前に入川路を造るために草刈りや木の伐採を建設業者に依頼した。漁協が指示し、支部の役員が立ち会いを行い実施。

ウ.水質汚染・不法投棄の監視

役員がパトロールを行い、濁りを見に行ったり不法投棄がないかチェックする。漁期前から漁期中、漁期終了後まで。ボランティアもあるが、手当を出す。

エ.水産資源調査

アユの流下調査を漁協と高橋勇夫先生で週に1回ずつ実施。遡上調査は高橋先生に依頼している。電源開発の被害補償の予算で実施。

オ.産卵床造成

10月末から11月9日、アユ産卵床を高橋先生の指導で造成している。重機を入れて掘削し、河床を洗って、栗石を10cm位敷いて、水路を造る。漁協役員13人、高橋先生が15人前後連れてきて、徳島の大学の学生や電源開発の社員も集まり、人力で床ならしを行う。造成後はカワウよけのテープを張る。

カ.在来個体群保存

県の内水面研究センターによる調査で、アマゴの在来種がいるとのことで、そこには放流を行わない。

キ.魚道の整備・管理

田野井堰は田野町の管理なので、町の了解を得て漁協役員で何日もかかって丸太で簡易魚道を造った。漁協が費用を負担した。

ク.カワウ防除・駆除

組合員に猟友会員がたくさんいる。駆除の申請は最初は漁協で行っていたが、地区によって異なるので、その後各地区で行うようになった。駆除した場合、漁協がくちばしを買い取り、県内漁連に提出する。年間平均100羽位駆除している。カワウが5千円でアオサギが3千円である。カワウの5千円のうち補助が3千円で、漁協が2千円支出している。銃器を撃てない地区は地区役員にロケット花火を配付して追い払いを行う。テープ張りは上記オ.の産卵床造成の時だけ。

(25) 高知県:芸陽漁協
ア.植樹

2002年に漁協単独で「千年の森保水事業」として安芸市内に山を購入した。私有林623.47m2で、安芸川、伊尾木川の上流。保守管理が大変である。

イ.河畔林手入れ

入川路の整備。障害者用のトイレの周辺で草刈り・除草を実施。車いすでも川まで行って釣れるようにしたのだが、2018年7月の豪雨で道が壊れ、行けなくなってしまった。助成金をもらって障害者用のトイレを造った。

ウ.魚道の整備・管理

新井堰が崩壊寸前で復旧工事の予定である。魚道が機能していないが、復旧なので改造はできないとのことである。

エ.河川清掃

7月末に漁協主催の友釣り大会を実施する際、参加者(30~50人)にゴミを拾ってもらうようにビニール袋を配付している。処分は市役所が処分場へ移動し、処理する。参加者以外に役員もゴミを拾う。
友釣り大会には組合員も参加する。参加費は無料で入漁券は必要である。

オ.水産資源調査

県の内水面研究センター、県内漁連と協力してアユ流下仔魚の調査を11月末から1月中旬まで毎週1回理事全員が当番を決めて実施している。1m位の網で3分間採取して獲れたものを瓶に入れて固定する。漁連が集めに来る。

カ.産卵床造成

11月初旬にアユの産卵床を各河川で1カ所造成する。業者に依頼して重機を入れる。手作業はない。造成後カワウ対策で鉄棒を打ってテグスを張る。2mおきに両岸に打ち込んでクロスさせて糸を張る。産卵が終わる1月末に撤去する。設置は役員全員で3時間位。鉄棒をまっすぐ打ち込む道具を考案し鉄工所で手作りした。撤去時間は1時間ほど。

キ.カワウ防除・駆除

猟友会にも頼んでいるが、イノシシ・シカの仕事が多くほとんど獲れない。ロケット花火は遊漁者や組合員にも配付する。糸張りは魚道でやろうという話も出ているが、今のところ産卵床だけ(前述)。

ク.子供体験放流・ふれあい体験活動

5月の連休明けに近在の小学生20人位が先生2名も参加して、四国電力と共催でダムの見学会とセットでアユの放流を実施している。漁協から繁殖部会の部会長がアユの講義も行う。

2017年には夏に川の生物の学習の支援を行った。理事2名ほどが参加して生物の生態を話した。

ケ.外来魚駆除

江ノ川が高知県によりコイの禁漁区となっており、本流に出てきて弱ったアユを、増えたコイが捕食してしまう食害が発生している。遊漁する人もいないので駆除を考えている。

(26) 群馬県:上州漁協
ア.河畔林手入れ

5月末から6月に2日間の作業で入川路の草刈りを草刈り機を用いて実施する。支部毎に理事・総代・監視員が中心となり、4人1組で何十カ所も実施する。

イ.河川清掃

3月のサケ放流イベント前に会場付近で組合役員・総代・監視員の他、高崎市商工会、高崎市役所が実施。また、4月にアユの子供体験放流の前に会場付近で役員・総代・監視員が中心に20人ほどで実施。

ウ.水質汚染・不法投棄の監視

監視員の日常業務である。監視員は3支部で全部で150人いる。この高崎支部には22人いる。熱心な人はアユの漁期は毎日出る。平均で年間30日位。

エ.河川管理者・事業者との協議

国交省が工事の前に生物調査を行うこともあり、漁協に連絡がある。調査の時は漁協も役員や地元の総代が立ち会う。

オ.外来魚駆除

コクチバスが多く、春は4月半ばから5月いっぱいにかけて、秋にも1ヶ月位餌釣りで駆除する。2018年は春に456尾駆除。秋は小さいのが多く、2018年は1,200尾前後駆除。県が県内漁連に委託しており、駆除釣りに行った人には日当5千円程度が出る。10人が各7日程度実施。2018年度は160人日実施。

カ.水産資源調査

アユの遡上調査を実施する。

キ.産卵床造成

ウグイ・オイカワのための産卵床を、烏川で2カ所造成している。漁協役員や総代が手作業により半日がかりで実施している。水試の指導も受けている。

ク.魚道の整備・管理

管理は県の事業である。壊れていたら県に連絡する。台風や大水の後で石が詰まっているのに気づいた時は撤去している。

ケ.カワウ防除・駆除・調査

飛来調査は県漁連の委託事業で、年に4回実施。磯部地区では組合員で猟友会の会員がいる。漁協が県に駆除申請を行う。1羽5千円で買い取る。脚を県漁連に提出する。2017年度は75羽駆除。銃器を使える場所が少ない。コロニーができた時は鳥獣害センターに相談する。アユ解禁1ヶ月前から解禁までに15羽前後駆除した。

竹伏以外に糸張りも行う。糸張りは支部毎に実施。糸は漁協で提供し、各支部では糸張りの日当を出す。ロケット花火は監視員が1箱ずつ持ち歩き、カワウを見かけたら撃つ。

コ.子供体験放流

2018年と2019年は4月にアユを対象に幼稚園と実施した。組合員5~6人が手伝う。3月に商工会が主体でサケの放流を実施。発眼卵を配って子供が育てたサケを放流する。

サ.環境学習ふれあい体験活動

アユ放流の際にアユの生態や川を汚さない話を行う。

(27) 愛知県:豊川上漁協
ア.河畔林手入れ(雑木伐採・草刈)及び河川清掃

2019年から水産多面的事業で実施している。釣り場及び河床耕耘場所への進入路7か所について面積を決めて実施している。河床耕耘の前に何日かかけて実施している。役員の8名程度で実施している。ボランティアを呼ぶときは土日に実施している。

イ.水草除去

以前はオオカナダモの除去を実施していたが、大野頭首工の砂利が満杯になり、大水で流れるようになってからは、砂利で削れて繁茂が無くなった。

ウ.水質汚染・不法投棄の監視

役員が土日に交代で実施している。

エ.河川管理者・事業者との協議

毎年2月と7月に河川事務所が各漁協を回って説明している。

オ.外来魚駆除

2018年と2019年に役員が試行したが数尾程度しか取れなかった。組合員がアユの刺し網に混獲したものは駆除している。

カ.漁道の整備・管理

水資源機構が頭首工の魚道を管理している。漁協は時々様子を見ている。下りアユの時期は迷入を防ぐように水の放流の仕方を工夫してもらっている。

キ.カワウ防除・駆除・調査

内水面漁連の補助事業で駆除をやっている。地元の猟友会に出動してもらう。駆除実績は少ない。漁協としては花火・爆竹で追い払う。

ク.水産資源調査

2018年は内水面漁連の1/2補助で実施し、2019年は水産多面的機能の補助で実施。豊川を守る住民連絡会議と一緒に8月末に実施。川に入り魚類や水生生物を捕まえた。

2018年は50~60人、2019年は30人ほどが参加した。内訳は環境団体と一般市民が10人ほど、漁協役員及び組合員が10名ほど、河川事務所・水試の職員、博物館の生物の専門家等が10名ほど。前日は捨て針のセット等の準備、当日は9時から昼過ぎまで実施した。組合員は8時から準備を行った。

(28) 愛知県:下豊川漁協
ア.河川清掃

豊橋市が毎年5月30日に近い日曜日にゴミゼロ運動を実施している。漁協からは役員主体で9人が参加した。2016年までは市が日当の支給やごみ袋、軍手・タオルの支給があったが、その後漁協は自前で準備することとなった。ただし、以前は集めたごみを処分場まで運んでいたが、現場に置いておけば市が回収するシステムとなった。

イ.水草除去

オオカナダモがアユごろびきの針にかかって邪魔なので、役員主体に7名ほどが漁期前の午前中2~3時間かけて実施している。ごろ引きの漁場3か所のうち穴が瀬漁場を主体に実施している。取り上げた水草は河川敷で腐らせる。

ウ.水質汚染・不法投棄の監視

監視員が2人いたが高齢でやめたため役員7人が交代で2人ずつ実施している。現場売りの方が遊漁代が高いので、無券者には販売所を紹介して購入を指導している。

エ.産卵床造成

備中ぐわを用いて100mくらいを2~3時間人力で耕耘して実施している。コイ・フナ用にはササを河畔の木に縛り付けて設置している(図24、25)。

図24 アユ産卵床造成(下豊川漁協提供)

図25 コイ・フナ産卵床造成(下豊川漁協提供)
オ.カワウ防除・駆除・調査

駆除は豊川の猟友会に頼んで実施している。あまりとれない。爆竹の追い払いは役員が毎日1回は2人で回って実施しているが、水に潜ってしまい、追い払う効果がない。糸張りは以前実施したが、すぐ慣れて効果がないので近年はやっていない。内水面漁連からの補助事業で飛来調査を6月から9月まで毎月2回、朝6時から1~2時間実施している。

カ.子供体験放流

2017年と2019年に、幼稚園の児童に5月のアユ放流を体験させている。役員が7人ほど出て手伝う(図26)。

図26 子供体験放流(下豊川漁協提供)

まとめ

内水面漁業協同組合による環境保全活動は、その多くが漁協自らの仕事であるという強い使命感に基づいて実施されてきた。内水面漁協組合員の減少・高齢化の中で、活動実施が着実に行われるためには、水産多面的機能発揮対策交付金のような仕組みで、金銭的にも人員的にも援助が行われることは必要である。ただ本交付金を用いる場合、手当の支払いの関係から、事前に登録された人にしか支払いできないので、広く一般市民を募集しても手当の支払いは困難であるというデメリットもある。一般市民の募集については、漁協のホームページへの掲載や、地元市町村と連携して広報誌に掲載してもらうやり方、タウン情報誌などに掲載してもらうやり方も検討すべきである。また、年券購入者にはがきやメールでお知らせする方法も考えられる。環境保全活動は一般国民にも支持を受けており、一部の国民は活動へのボランティア参加、活動を応援する基金への支援や、活動する漁協の魚を高くても選んで買いたいという意思も確認できた。これらの人々の協力も仰ぎながら進めていくためには、漁協単独での実施は困難かもしれないが、県内漁連などが中心となって、クラウドファンディングをインターネットで募集する等の対策も考えられよう。内水面漁業が重要な市町村では、ふるさと納税の返礼品として内水面魚介類をメニューに入れたり、納税者が選択する税金の使い道として、内水面の環境保全活動を加えてもらうよう働きかけることも考えられる。

表51 環境保全活動実施方法毎の長所と短所

カワウの繁殖・食害により、内水面漁協の環境保全活動の多くの予算・人員がカワウ対策に振り向けられていることは残念なことである。また、一般国民はカワウの被害についてほとんど理解していない様子もうかがえた。外来魚については特定外来生物法施行の効果もあり、かなりの理解が進んでいるが、カワウは日本在来の鳥類ということもあり、なかなか理解が進んでいない。野生動物の駆除については、かつてイルカ問題で見られたように、一部の人間による感情的な反発が起きる可能性もある。慎重に、着実に対策を進める必要がある。

漁協がやりたいと考えている環境保全活動のうち、石倉・投石等の隠れ家造りと河川環境改善については、大がかりな土木作業を伴うこともあり、漁協単独での実施は経費的にも困難だが、各地の事例を調査すると、地方自治体と協力関係を構築して、河川工事の際に漁協の要望を取り入れてもらう形で環境改善を進めている事例が多く見られた。日頃から地方自治体との連携を深めることで、これらの活動を効果的に実施することが可能である。

2019年には台風や集中豪雨により、多くの河川において氾濫等の被害が生じた。これらの水害により、これまで実施してきた環境保全活動の成果が無に帰した河川も多くあると思われる。災害支援の中で、甚大な災害後の内水面水産資源の復旧が、浜の活力再生・成長促進交付金でも手当てされることとなった。事業実施主体は地方公共団体、漁協、漁連で、補助率は1/2である。産卵場造成なども本交付金での手当が可能であるが、都道府県等の公的機関による被害証明が必要であるので、都道府県の水産部局や水産試験場等と相談しての復旧が望まれる。

今回のアンケート調査の中で、「釣り教室」単独の開催は、環境保全活動には含まれないものと整理した。例えば水産庁の水産多面的機能発揮対策交付金では、2014年の行政改革推進会議による秋のレビューの結果を受けて見直しが行われ、従来行われていた釣り教室への交付ができなくなったことにもよる。ただし、釣り場でのゴミ回収などの清掃活動や、河川環境の実態についての説明などと組み合わせたものは、環境学習ふれあい活動に含まれると考えられる。これらは子供たちなどに河川環境保全の重要性を学習させるよい機会である。地元の釣り人が増えれば、組合員に加入することも考えられる。子供たちは就職等で地元を離れても、釣りの趣味があれば遊漁者としてふるさとに頻繁に帰ってくるだろうし、定年後に地元に戻れば組合に加入することも十分考えられる。一般国民の中でも、内水面遊漁に親しんでいる人達、淡水魚介類を食することを好む人達は、それ以外の人達と比べて内水面の環境保全活動への理解が進んでいた。内水面遊漁の振興、淡水魚介類の魚食普及を図ることも、並行して進める必要がある。

第1部 引用文献

  • 銚子川環境保全会(2016):銚子川環境保全会~清流 日本一をめざして!~、「2015年度水産多面的機能発揮対策報告会テキスト」、全国漁業協同組合連合会、全国内水面漁業協同組合連合会、pp.135-138
  • 国土交通省(2014):自動車燃費一覧(2014年3月)による2012年ガソリン乗用車のJC08モード燃費平均値19.4km/リットル
    http://www.mlit.go.jp/common/001031307.pdf(2017年3月6日アクセス)
  • 農林水産省(2011)「2010年度 農林水産情報交流ネットワーク事業 全国調査 食料・農業・農村及び水産資源の持続的利用に関する意識・意向調査」pp.26-27
    http://www.maff.go.jp/j/finding/mind/pdf/m230519.pdf(2018年1月18日アクセス)
  • 滋賀県HP内 マザーレイク滋賀応援サイト
    http://www.pref.shiga.lg.jp/ouen/thanks/index.html
    (2018年1月18日アクセス/2021年8月30日リンク切れ)
    http://www.pref.shiga.lg.jp/ouen/katsuyou/index.html
    (2019年4月9日アクセス/2021年8月30日リンク切れ)
  • 資源エネルギー庁(2017):石油製品小売市況調査(2017年3月1日公表)による、レギュラーガソリン店頭価格全国平均単価130.8円/リットル
    http://www.enecho.meti.go.jp/statistics/petroleum_and_lpgas/pl007/results.html#headline1(2017年3月6日アクセス)
  • 玉置泰司(2007):我が国の内水面漁業・漁村が有する多面的機能の事例評価.北日本漁業,35,215-226.
  • 玉置泰司(2009):我が国の内水面漁業・漁村が有する多面的機能について.機関誌ぜんない,12,18-19.
  • 玉置泰司(2010a):アユの持つ保養・交流・学習機能の経済評価.機関誌ぜんない,18,18-19.
  • 玉置泰司(2010b):内水面漁業の多面的機能の評価.『アユを育てる川仕事』,築地書館,pp.27-33
  • 全内漁連(2007):多面的機能関係に係るアンケート調査結果.機関誌ぜんない、4,p.8.