水産振興ONLINE
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2019年12月

太平洋島嶼国における日本漁業の将来 —ミクロネシアでの素晴らしき日々—

坂井 眞樹((公財) 水産物安定供給推進機構 専務理事)

11. 日本が目指すべき援助とは

(1) 日本との絆を大切にウインウインの関係を築くための援助を

日本と深い絆を持つミクロネシア連邦の対日感情は良好である。大使館が開設される以前から海外漁業協力財団が事務所を開設し専門家を配置して、全4州で製氷機のメインテナンスなどの技術指導や機器の整備を実施しており(沿岸漁業には氷が不可欠。)、長年にわたる地道な活動が現地で確固たる評価を得ている。

私が離任した2016年5月時点でクリスチャン大統領をはじめ多くの人々が一日も早い実現を望んでいたプロジェクトがある。ポンペイ港の改修である。首都を控える港として、貨客船、漁船など多くの船が寄港するが、岸壁が短く収容できる隻数が限られている。混雑時は岸壁と平行に三層、四層と船が並ぶ。岸壁を延長して後背地を整備し漁具の修理など漁業に関連する経済活動を営むことができるようになれば、地元にも日本漁船を始めとする外国漁船にも大きなメリットがある。狭い島国での事業では、土地をめぐる複雑な権利関係をめぐって関係者との困難な調整が必要となるケースが多いが、援助する側にも現地とともに汗をかくことが求められている。わが国が培ってきた信頼関係をベースに効果的な援助を実施して、現地での雇用の創出と我が国巻き網漁業の振興を同時に進めるウインウインの関係を築いていくことが必要である。

(2) 現地の悩みに向き合うことが必要

隻日数の導入による入漁料の引き上げ、操業規制の強化と我が国巻き網漁業をめぐる環境は年々厳しさを増しているが、その背景には外貨収入に乏しい島嶼国政府の悩みがある。米国からの協定援助の終期が近づいているミクロネシア連邦では、その悩みはさらに深い。今後この水域で長期的に操業を続けていくためには、こうした彼らの悩みに向き合っていく必要がある。中国系企業の取り組みの例を見るまでもなく、これまでより一歩踏み込んだ対応、官民一体となった取り組みが求められている。