水産振興ONLINE
619
2019年12月

太平洋島嶼国における日本漁業の将来 —ミクロネシアでの素晴らしき日々—

坂井 眞樹((公財) 水産物安定供給推進機構 専務理事)

2. 日本との強い絆を持つミクロネシア

まず日本と深い歴史的関係を有する国ミクロネシア連邦を紹介したい。ミクロネシアは、現在のミクロネシア連邦だけでなく、マーシャル諸島、パラオ、サイパン等のマリアナ諸島を含む北太平洋の広大な地域を指す言葉である(厳密には南緯0度のナウルや南緯4度のキリバスも含まれる。)。ミクロネシアでは、第二次世界大戦終結までの30年間、日本による委任統治が行われていた。パラオに南洋庁が、各地域に支庁が置かれ、公学校で現地住民に対して日本語による教育が行われていた。その名残りで、現在でも現地語の中で先生、運動会、自動車等数多くの日本語が使われている(図1)。

図1 ミクロネシア地域図
図1 ミクロネシア地域図

昭和初期の人気漫画「冒険ダン吉」のモデルとも言われる森小弁が、南洋諸島への進出を勧める南進論に共鳴して、日本からの初めての移民としてトラック諸島(現在のチューク州)に渡航したのが明治25年である。その後多くの日本人が移住し、南洋諸島ではサトウキビの栽培・精製、鰹節の製造等が展開されていく。現在でもミクロネシア連邦の人口の約2割が日本人の血を引くと言われており、森小弁の子孫モリ一族は3千人を超えると言われている。これまで、初代ナカヤマ、第7代モリと二代の日系人大統領を輩出しているが、第7代のマニー・モリはモリ一族の一員である。