水産振興ONLINE
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2019年10月

海洋プラスチックごみ問題について

中里 靖(環境省 水・大気環境局 海洋環境室長)

8. 今後の取組について

世界的な重要課題となった海洋ごみ、とりわけプラスチックごみについては、現時点で年間800万トン超が新たに海洋に流入しているとされ、現状を放置すれば、プラスチック消費の増大とともに海洋中への蓄積が加速度的に増えると予想されている。

こうしたプラスチックごみが海洋生物の誤食等を招いているほか、生活環境の悪化や海辺のリゾートなど観光業への影響、ごみの入網による漁業操業への支障など様々な悪影響が指摘されている。

一方、微細なプラスチックであるマイクロプラスチックについては、海水中や海底、海岸、北極の海氷などのほか、魚介類の体内からも発見されており、生物への物理的、もしくは化学的な影響が危惧されている。しかしながら、自然環境下での影響についてはまだ確認されていない。

また、海洋に流入したプラスチックごみの量も、現在は推計したものしかなく、またその精度については議論のあるところである。さらに、流入した後のプラスチックごみの多くが海洋のどこにあるのかも不明な状況にある。

このように、大変関心を集めている海洋プラスチックごみであるが、不明な点が多く、調査・研究を加速し、一刻も早い実態究明が求められている状況にある。他方、海洋プラスチックごみの現状を正確に把握することは困難であるにせよ、我が国の海岸を見ても明らかなように、大量のプラスチックごみが海洋に存在することは事実である。

こうした状況を踏まえ、現在進めるべき海洋プラスチックごみ対策としては、可能な限り海洋へのプラスチックごみの流出を抑制する取組を世界的に加速させていくとともに、プラスチックごみの発生状況、海洋への流出経路、海洋での動向・将来予測、生物等への影響などに関する調査・研究を推進し、そこで得られた科学的知見をプラスチック対策に生かしていくことが重要であろう。