水産振興ONLINE
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2019年10月

海洋プラスチックごみ問題について

中里 靖(環境省 水・大気環境局 海洋環境室長)

4. 我が国におけるごみ処理、リサイクルの状況

先に述べたとおり日本は土地が限られるため、ごみ処理の最終処分場を長期間活用できるようにする観点から、ごみを焼却して減容化してから埋め立てるが、ごみ自体を減らす努力も続けられてきた。2000年頃のごみの総排出量は、5,500万トン近かったが、その後減少に転じ、最近は4,500万トン前後となっている。一人一日当たりの排出量でみても1.2kg近かったものが950g前後にまで減少している。

こうしたごみ削減の背景には市民レベルの分別収集の取組の拡がりも大きな役割を果たしているものと思われる。プラスチック製品の一部であるペットボトルの分別収集を行っている市町村は2015年で98.6%に達し、これらの市町村の人口カバー率は99.8%であり、ほとんど全ての国民が分別収集に参加していることとなる。また、ペットボトルほどではないが、プラスチック製容器包装の分別収集では、実施市町村は76.3%、人口カバー率は85.5%となっている。一方、プラスチックについて、我が国全体の廃棄から回収、リサイクル・処理の状況をみると、年間のプラスチック廃棄物量は940万トンであり、このうちリサイクルされるものは25%で、廃棄物の熱で発電を行う廃棄物発電に利用されるものが34%、そのほかの熱利用が23%、熱を利用することなく焼却もしくは埋め立てられるものが18%となっている(図9)。廃棄物発電など熱回収に多くが利用される要因として、汚れがひどいまま回収されるものが多いこと、容器としての性能向上のため一つの製品でも複数の異なるプラスチック素材が使用されていることなどリサイクルが容易でないものが多いことが上げられる。なお、リサイクルされるプラスチックも多くは輸出を通じ海外で再生品化されていたが、廃プラスチックをリサイクルする際に環境に悪影響を与えるとして、中国をはじめ東南アジアの国々で廃プラスチックの輸入禁止の動きが拡大している。現在、日本においては、プラスチックリサイクルの国内体制を拡充することが急務となっている。

図9 我が国におけるプラスチックの資源循環(出典:一般社団法人プラスチック循環利用協会)
図9 我が国におけるプラスチックの資源循環
※ 出典一般社団法人プラスチック循環利用協会