水産振興ONLINE
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2019年9月

中・小型漁船市場をめぐる産業構造の変遷—船価高騰にどう影響したか—

濱田 武士(北海学園大学経済学部 教授)

第一章 漁船の登録・建造動向を統計でみる

漁船用機関の出荷量

これまでの統計は、漁船の船体に関する趨勢、動向でしたが、次に漁船用機関の出荷量についてみます(図1-4参照)。

図1-4は、国内の大手4社の中・小型漁船(ただし、0〜20トン未満船)用に出荷された漁船用機関(ディーゼルエンジン)の出荷数量の推移を示しています。大手4社とは、ヤンマー、三菱、いすゞ、コマツです。後に述べますが、ヤマハ発動機は漁船用ディーゼルエンジンの販売を2009年で終了しているため、数値から省かれています。その他に、ボルボ、キャタピラー、新潟なども市場に供給されていますが、それらの台数は全体からすれば割合は小さいです。ここでは4社の動向が漁船用機関の市場の動きとしてみます。

漁船用機関は発注生産されています。発注を受けるケースは、漁業者が代船取得(新船、中古船)するとき、もしくは機関換装をするときです。そのことから、必ずしも代船建造との動きと一致しません。

しかし、図1-4を見る限り、出荷数は2010年まで落ち込み、その後最近まで上昇しています。表1-1で見た5トン以上20トン未満の動向と同じですが、数は代船建造数よりも機関出荷量の方が多いです。東日本大震災後、漁船用機関の市場が活発化して、直近も市場が冷え込んでいないといえます。

図1-4 大手4社(三菱、ヤンマー、いすゞ、コマツ)の漁船用機関の出荷量の推移/資料:海洋水産システム協会
図1-4 大手4社(三菱、ヤンマー、いすゞ、コマツ)の漁船用機関の出荷量の推移
資料:海洋水産システム協会