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水産振興コラム
20262
豊洲市場DEお魚対談
八田 大輔
(株)水産経済新聞社
第6回 活魚編(下) 天然扱いは全国で突出

東京・豊洲市場仲卸の特種物業会活魚取引委員長の宇田川勝久さん((株) 川鉄社長)と、豊洲卸の大都魚類 (株) 特種部活魚課長の河野智和さんの対談の(下)では、活魚の魅力をさらに掘り下げた。

画像2 魚種拡大の可能性などでも意見を交わす2人

天然扱いは全国で突出
人気、カキ棚下のカワハギ

——— 取り扱われる活魚の種類は今後、増えていく可能性はありますか。

河野さん 鮮魚でしか流通していない魚はまだあるし、活魚文化が盛んでない北海道の方面から増えてくるのでは。ここ数年は暮れから年明けにかけて、北海道産のマツカワガレイが安定して入るようになりましたし。

宇田川さん 大都魚類が呼んでいる広島産カワハギがここのところ、ものすごい値段で取引されているな。

河野さん 広島で盛んな養殖カキのカキ棚を定期的に持ち上げ、洗浄する際に出たゴミが落ちた海底は餌だらけ。そこにものすごく太ったカワハギがいる。カキ生産者から許しを得た漁師が、カキ棚の上に乗り、棚の合間から獲って送ってくるんだけど、浜ではキロ3,000円だった魚が今は10倍以上で評価されている。

宇田川さん ま、あの値段が付いちゃうと、ほとんど海外出荷だけどね。

——— 魚の〆方はどうしているのでしょうか。

宇田川さん 箱に入れる時に神経を抜いていないと暴れ始めて身を傷めてしまうので、極力すべての魚を神経〆している。

河野さん 指定された先以外はすべてですね。

宇田川さん 神経〆の方法論がさまざま広がったようだけど、おろした時に分かる違いはないと思う。豊洲のやり方はここ30年変わらないし。

河野さん どちらかといえば鮮度の維持に必要なのは、いかに丁寧に血抜きをするかで、神経〆は身がかっている(=軟らかい)状態を長持ちさせるためにする。

画像1 場内の活魚はすべて血抜き、神経〆される

——— 活魚を楽しむのに最良なのは生食ですか。

宇田川さん うま味が最大になるまで熟成させる店でも、結局は刺身や寿司で食うわけだしね。

河野さん どんな調理をするにしても活魚でしっかり手当てをしたものはすべて使えると思いますよ。ただ、活魚の単価に見合った提供先となると、寿司屋さんか和食屋さんになるというだけ。

宇田川さん 〆たての活魚を焼くと身が縮まるのも大きいかな。やはりある程度、〆て1、2日間は魚を寝かさないと加熱用には使えない。

卸と仲卸一体で集荷

——— 値段を考えると天然活魚は幅広く楽しめる商材じゃないですかね。

宇田川さん 豊洲に出回る活魚は高い値段が付くことが多いが、市場にあふれるくらい一度に送られてくると、下手すると箱代より魚が安くなる時もある。そうした時にうまく使えば、さまざまな人が楽しめる余地があるのでは。全国を見渡しても豊洲ほどの活魚向けの設備がある市場はないし、決めつけはもったいない。

河野さん 大阪は1社に限れば豊洲の個社より設備は大きいかもですが豊洲は5社ですからね。

宇田川さん 天然に限ればこれだけの規模の取引があるのは豊洲だけ。

河野さん 卸と仲卸が二人三脚で集荷で協力しているのが豊洲市場のよいところですね。仲卸の皆さんは「よいものがあったら呼んでくれ、しっかり値段を出してやる」と言ってくれる。だから卸が安心して呼べます。

宇田川さん 個人的な思いとしてはできるだけ安くてよいものを仕入れたいというのはあるが、漁師の皆さんは値段が付けば喜んでくれるしな。

河野さん セリ残含め買い支えてくれる仲卸さんや、全体を考えて行動してくれる仲卸さんが多いのが豊洲のよさです。

宇田川さん 活魚は人一倍、手間を食う。何をやるにもお金がかかって、人も必要でへい死のリスクもある。それだけに当たれば大きいんだよ。

画像3 対談した仲卸の宇田川さん(右)と卸の河野さん

第7回へつづく

プロフィール

八田 大輔(はった だいすけ)

1976年静岡生まれ、名古屋大学文学部日本史学科卒業。上京して富士通系列のシステム会社でシステムエンジニアとして3年勤務した。退社後は日本ジャーナリスト専門学校スポーツマスコミ科に学び、卒業間近の2006年1月に(株)水産経済新聞社の編集記者に転じた。16年4月から報道部部長代理、23年10月から編集局長。中心的な取材分野は、政治・行政、卸売市場を中心とした流通全般、中食産業全般、JF共済など。専門商材はウナギ、干物類。そのほかの担当エリアとして福島県、千葉・勝浦、静岡県東部/西部。