豊洲市場の歴史的な移転事業の最後を飾る施設として、6街区の場外に待望の賑わい施設「豊洲 千客万来」が2月1日に開業した。開場から丸5年遅れ、客入りを懸念する声もあったものの、オープン1か月以上を経ても平日を含め大勢の人が押し寄せている。場外市場に期待された活気や賑わいづくりの役割をここまでは十二分に果たしている。
本連載の番外編に登場するのは、事業者の万葉倶楽部(株) で新規開発事業を担当する高橋眞己副社長 (62)。
場内と連携イベントを
卸売市場のようなプロ向けの業務用市場に、一般人向けの賑わいが必要かどうかという議論があるのは承知している。しかし今回、賑わい施設を名乗って出店させていただいたからには、市場の存在を世間に知らしめるのがわれわれの役目だ。
その際も、本業である市場流通を妨げることのないようにせねばならない。豊洲市場があっての「豊洲 千客万来」。温浴棟「東京豊洲 万葉倶楽部」の地下専用駐車場へは、市場関係者と同じ豊洲大橋門を使うので、万が一にも渋滞などを発生させることのないよう警備員を配置している。
1月29日のメディア内覧会には想定以上の申し込みがあり、その後もありがたいことにメディアには注目し続けていただいている。報道番組だけでなくバラエティーにも取り上げられていることも大きい。それでもここまでお客さまが来てくれるとは思ってもいなかった。今は来場いただいたお客さまにどうやったらご迷惑かけず楽しんでいただけるか、日々試行錯誤しているところだ。
開業当時に来場いただいたお客さまからは「やっとできた」「ずうっと待っていた」「お宅ができるからマンションを買った」などといった声を掛けていただいた。期待に応える存在でありたい。
5月連休全店舗揃う
工事の遅れや新型コロナウイルスの影響がある中での店舗誘致などの活動は厳しかった。場外エリアの集客力には懐疑的な見方もあったし、場内の飲食店との競合を気にされたり、人手が集まらなかったりして出店を断念した先もあった。食楽棟内に用意した124区画は、複数区画の利用者がいて67店舗で埋まる予定としていたのが「空き区画が出る」という誤解した報道をされ、3店舗が辞退する事件もあった。
周辺の大型商業施設との競合がないようにするために大手ブランドはごくわずかで、市場関係者や地元区の商店街などを中心にした声掛けしたため、新型コロナ後で銀行融資が受けられず断念といった話もあった。しかし、フタを開ければ今日の賑わいで苦労が報われた。開業時点で10店舗がさまざまな事情でオープンできていないが、今年5月の大型連休までには出揃うのではないか。
常に新しいもの創出
開業間もなくて、まだまだ課題は多い。食楽棟の2階「目利き横丁」「豊洲目抜き大通り」や3階「よりどり町屋」の店舗には、対外的アピールできる「とがった」メニューを1、2品入れてほしいとこちらからお願いはしたが、その割合がかなり多い店舗もある。1階の市場関係者や近隣住民向けの価格で、とお願いした「豊洲江戸前通り」もやや高めの値段設定が目立つ店舗が散見される。それぞれの店舗の運営方針はあるが、少し方向性を修正できたらと思う。
今は “オープン景気” 真っただ中にあると思うので油断はできない。常に新しい施設ができる都内で陳腐化することのないよう、常に新しい何かを開発していきたい。「うまさの聖地」を食楽棟全体のコンセプトに掲げているところだが、国の内外から東京へといらした方が必ず立ち寄る場所にしたい。テナントの皆さまと協力し、おいしいものを提供し続けていくことが大事になると思う。
混雑対応で手いっぱいの状況なため何もできず恐縮だが、今後は場内と協議して営業ピーク時間帯のズレ問題や連携イベントに取り組んでいけたらと考えている。