癒しの島、奄美大島で出会った「いしょむん」
海遊館を辞め、フリーで活動をしていたころ先輩からのお声がけで、夏休み期間に地方都市のデパートの催事場などで行う移動水族館の現場管理を数シーズン任されたことがある。それが毎回心身ともに疲れはててしまうのだ。毎回、開催中にいくつかの水槽が、魚病によって魚が全滅という悲惨な状態になってしまうこともあるのだ。そんな悲惨なことにならないように毎日毎日水槽の管理に気を使いすぎ、移動水族館の最終日が近づくころには心身共にくたくたになる。
そんな疲れた体を癒すため、9月の初めに僕の中の癒しの島奄美大島に向かった。
奄美大島は、九州と沖縄県の中間に位置して気候は温暖で、海に潜ればサンゴ礁が発達し陸上には亜熱帯の原生林が広がっている。その原生林は、アマミノクロウサギやアマミタカチホヘビなど奄美を冠とした固有種をはじめ、ルリカケス、リュウキュウアユなど貴重な生物たちの宝庫である。
その奄美大島への訪問はもう15年以上も前、海遊館に勤めていた時代に自宅で飼育する魚を採集に行ったのが最初だ。それ以来、年に数回は採集のため奄美大島に通い続けた。早朝から日の暮れるまで、
どういうわけか僕が南の島への旅を計画すると、狙ったように台風が発生し邪魔をされることが多い。案の定、出発日の数日前に台風17号が北上し、ハラハラさせられたのだが、ギリギリのところで通り過ぎ出発当日は晴天となった!
伊丹空港から約1時間半のフライトで、飛行機は奄美空港へ着陸した。ちょうど12時。空港を出て、暖かく少し湿度の高いムッとした空気の中レンタカーを借り、いつも採集に通っている島の南部へと向かった。いつもなら、南部へ向かう道の途中にある、
鶏飯を腹いっぱい食べて、一路南部の瀬戸内町へ。途中、素晴らしい晴天のおかげでエメラルドグリーンからブルーへと変わるグラデーションの見事な海岸の風景や巨大なシダ「ヒカゲヘゴ」を撮影し、リュウキュウアユの生息する綺麗な川のある
民宿に入る前に、少し気になり
17時を過ぎた頃港に漁船が一艘入ってきた。カツオ船らしい。早速瀬戸内漁協の方々が集まり、手際よく水揚げが始まった。ちょっと小ぶりだが、カツオとキハダだ。次から次へと手際よく、魚たちが氷水の入ったコンテナに入れられていった。途中近所のおばちゃんが顔をだし、両手にキハダをもって帰って行った。のどかだなぁ。
着いて早々、2艘の漁船の水揚げに出会い、幸先のいい旅の始まりである。その晩の民宿の料理が、また良かった。キハダとソデイカの刺身にアイゴの煮つけ、イカの入ったかき揚げにモズク、それだけでもお腹がいっぱいになりそうなのに、大きな夜光貝の刺身までが並んでいる。お酒を飲む暇と全部の料理の置き場が無くなるほどの量なのだ。さらに追い打ちをかけるように、大きなお椀には「アバス」ことイシガキフグの粗汁が!僕のお椀には大きな上顎がデンと入っていた。その締まった淡白な身の美味しいこと。至極の夕食をとらせてもらった。
いいことだらけで、明日の朝の市場でもどんな驚きに出会えるのかが楽しみだ!その話は長くなるので、次の機会に紹介させていただきたい。
最後になってしまったが、表題の「いしょむん」とは鹿児島テレビのHPによると「奄美地方で「いそもの」つまり「水産物」を意味する言葉」ということである。
(連載 第19回 へ続く)