第三章 縮小再編下の大手メーカーと造船所の展開
建造対応できる造船所数
かつて漁村ごとに船大工が存在していました。各浜には造船所が欠かせなかったのです。漁業センサス統計をみますと、1963年には造船所が3,602カ所あったとされています。漁村集落は約6,300ありますから、2つの集落に1つ以上の造船所があったことになります。つまり、造船所は漁業者にとってかなり身近なものでした。造船所で働く従業者数は多く、全国に45,457人いました。
漁業センサス統計が造船所の調査を実施していたのは1998年までです。その当時の数値をみると、造船所は1,798カ所、従業者数は16,345人になっています。35年間で造船所数は約半分、従業者数は約1/3となりました。
それから、約20年が経っています。漁船を取り扱う造船所の数はカウントされていませんが、2018年、水産庁が公表した資料ⅴ)によりますと、漁船を建造できる能力をもつ造船所は、168カ所としています。そのうち、10カ所は100トン以上の漁船を建造できる造船所としています。
また、2017年10月現在で、漁船リース事業(浜の担い手漁船リース事業)において新船建造の発注先となったのは112カ所とされています。漁船リース事業は主として沿岸漁船が対象としています。
実態としては、112カ所以上が確実に沿岸漁船(中型の沖合漁船も含む)を建造できる能力を有しているといえ、最大でも158カ所はあるといえます。
造船所の数は、漁業センサス統計が捉えていた1998年からみると、1/10程度になっている可能性があります。約20年で9割減少したということになります。漁業集落の数は大きく変わっていませんので、単純に造船所の数は40集落に一つとなっています。
漁船リース事業に関わった造船所の立地状況をみると、北海道21カ所、東北15カ所、関東・中部24カ所、関西・中国19カ所、四国11カ所、九州22カ所でした。単純には比較できませんが、造船所は地域ごとに分散しています。ただし、データでは示されていませんが、筆者が訪問した各県域の状況を見ると、残っている造船所は活力ある漁村近くに残っているケースが多いです。
- ⅴ 「水産業の現状と課題」(P25):水産庁HP内URL:http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/kaikaku/attach/pdf/suisankaikaku-5.pdf