第一章 漁船の登録・建造動向を統計でみる
どこを議論のターゲットにするか
以上、『漁船統計』から漁船登録数の推移、漁船保険契約数から建造漁船数の推移、大手4社の漁船用機関の出荷量の推移を見てきました。まとめると、以下のようになります。
今日、1984年まで漁船登録数も登録漁船の総トン数合計も増加しましたが、その後は減少し続けています。特に漁船総トン数の合計の減少が激しいです。漁業の全面縮小の状況が反映されていました。
船質別に見ると、1995年まで総数を伸ばしたFRP漁船の登録数が全体の97.5%を占めており、圧倒的に多いです。総トン数の合計で見ても、大型船が多い鋼船、1970年代から減少著しい木造船を上回っています。ただし、FRP漁船の隻数、総トン数合計ともに下がり続け、それが国内の漁船趨勢となっています。
2000年代はまだ木造漁船の建造需要は少なからずありましたが、直近になってほとんどなくなりました。またFRP漁船の建造動向は、船外機船や無動力/5トン未満船は直近では急激に減少しているものの、5〜20トン未満の減少傾向は船外機や無動力/5トン未満ほど強くなく、2018年度は震災前の水準をまだ下回っていない状況でした。鋼船においては50トン未満全階層の建造需要がかなり小さくなっているといえ、鋼船類でもアルミ漁船においては5〜20トン未満の建造需要が核となっています。ただし、アルミ漁船の建造需要は、震災の有無にかかわらず、縮小傾向が続いています。
次の章からは漁船建造に関わる内容を記していきます。その射程範囲ですが、本論では「中・小型漁船」としました。ただ、この規模階層は、一般的には船外機船から20トン未満あるいは50トン未満だといえますが、ここでは、漁船規模の階層で規定せず、20トン未満階層の漁船を建造する造船所を対象とします。これは、20トン以上の漁船を建造する造船所を除外するという意味ではなく、50トン以上の漁船を建造する会社であっても、20トンの漁船(付属船を除く)を建造していれば、その会社は対象とするということです。